近世の幕臣に関して言えば、一八世紀半ば頃までは、旗本の妻の呼称は「御新造様」、御家人の妻の呼称は「(お)かみ様」であったが、天明期(一七八一‐八九)頃には、御家人の妻や江戸上層町人の妻の呼称も「御新造様」となっていたようである。
江戸時代、武家あるいは富裕な町家の妻や新妻をよんだ尊敬語。通例「ごしんぞ」と呼び習わされる。江戸時代の風俗事典『守貞(もりさだ)漫稿』(喜田川(きたがわ)守貞著)によれば、旗本や御家人の妻を「奥様」とよぶのに対して、諸大名に仕える家臣の妻を御新造とよび、町家の上流階級の妻や医者の妻も御新造と称した。もとは新婦をいい、「新粧」の転訛(てんか)とされる。これとは別に、家庭の奥深い居間にいるところから、「深窓」の転訛とする説もある。このほかに、「ご」は接頭語で、新しく造ることを意味し、婚礼の前に新婦の居所を新しく造ることから、新婦をよぶようになったとする説や、嫁入りのときに新しく船を造ることから生まれた語とする説など諸説ある。のちには、身分にかかわりなく、一般に他人の妻や若女房をよぶのに用いられるようになった。
[棚橋正博]
…また,〈番頭新造〉は袖留をしたまま姉女郎の身辺を世話する役で〈世話新造〉ともいい,京阪ではこれを〈引舟(ひきふね)〉と称した。なお,江戸時代の武家や町家では妻女を御新造(ごしんぞう)とよぶことがあり,またときには結婚前の少女を新造といった。花魁(おいらん)【原島 陽一】。…
※「御新造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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