精選版 日本国語大辞典「念」の解説
ねん【念】
〘名〙
① かんがえ。思慮。また、心から離れにくい思い。
※海道記(1223頃)逆川より鎌倉「掌を合せ念を正しくして魂独り去にけり」
※浄瑠璃・心中天の網島(1720)下「ア先心が落付いた。心中の念はない、どこに屈んで此の苦をかける」 〔陳琳‐遊覧詩〕
② 心くばり。注意。また、確認。
※浮世草子・風流曲三味線(1706)五「久三此箱を梅薫方へ持て行き、慥に渡して念(ネン)じゃ程に、請取を取って来いといひつけて遣はし」
③ かねての望み。一念。また、執念。妄念。
※無難禅師仮名法語(1670‐76頃)上「念のふかきはちくしゃう、念のうすきは人、念のなきはほとけ」
④ (「二十(廿)」の合音ネムが「念」の音に通じるところから) 年月日などの二〇の意に用いる。二一を念一日と表わす類。〔焦氏筆乗‐巻六・廿卅
三音〕

⑤ 仏語。きわめて短い時間をいう。刹那。一念。念念。
⑥ 仏語。心所の一つ。かつて経験したことを記憶して忘れないこと。また、単に思いの意にも用いる。
※往生要集(984‐985)大文四「如レ是心想極令二明利一、然後住レ心繋二念一処一」
⑦ 仏語。観想・思念などの意で、対象に向かって想いを集中し、心を動揺させないこと。
※一枚起請文(1212頃)「もろこし我がてうにもろもろの智者達のさたし申さるる観念の念にも非ず」
ねん‐・ずる【念】
〘他サ変〙 ねん・ず 〘他サ変〙
※読本・椿説弓張月(1807‐11)続「咒文を念じ、唵毒変蛇寧吽莎賀と唱れば」
② たえしのぶ。じっとこらえる。我慢する。
※竹取(9C末‐10C初)「心さかしき者、ねんじて射んとすれども」
③ 常に心にとめて思う。強く願って思い続ける。
ねん・じる【念】
〘他ザ上一〙 (サ変動詞「ねんずる(念)」の上一段化したもの) =ねんずる(念)
※歌舞妓年代記(1811‐15)八「団三郎と朝比奈二役男女蔵。箱王丸喜代太郎にて力を念(ネン)じる所」
※帰郷(1948)〈大仏次郎〉霧夜「この外科手術で、日本が健康になってくれればと念じるのみだ」
にょう‐・ず ネウ‥【念】
〘他サ変〙 =ねんず(念)
※小式部内侍本伊勢物語(10C前)O「これをいかで得んと思ふに女もねうじわたるを」
ねん‐・ず【念】
〘他サ変〙 ⇒ねんずる(念)
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