手掛・手懸(読み)てかけ

精選版 日本国語大辞典 「手掛・手懸」の意味・読み・例文・類語

て‐かけ【手掛・手懸】

〘名〙 (「てがけ」とも)
① 手をかけておくところ。椅子(いす)などの手をかけるところ。
② 器具などの、持つのに便利なようにとりつけたあなや金物
③ みずから手を下して扱うこと。自分で事に当たること。
毎月抄(1219)「難題などを手がけもせずしては、叶ふべからず」
④ (手にかけて愛する者の意から。「妾」とも書く) めかけ。そばめ。側室。妾(しょう)。てかけもの。てかけおんな。てかけあしかけ。
※玉塵抄(1563)二一「武士が死る時にその手かけの女を人によめらせたぞ」
※仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上「さて秀次の〈略〉、御てかけの上臈を車に乗せ奉り」
正月三方などに米を盛り、干柿、かち栗、蜜柑(みかん)、昆布その他を飾ったもの。年始の回礼者に出し、回礼者はそのうちの一つをつまんで食べる。あるいは食べた心持で三方にちょっと手をかける。食いつみ。おてかけ。てがかり。蓬莱(ほうらい)飾り。〔随筆・貞丈雑記(1784頃)〕
[語誌](④について) 律令時代には「妾」が二親等の親族として認められており、「和名抄」では「乎無奈女(ヲムナメ)」と訓読されている。中世には「おもひもの」の語が妾を指したらしいが、室町以降「てかけ」が一般の語となり、「そばめ」、「めかけ」などの語が使われるようになった。

て‐がかり【手掛・手懸】

〘名〙
① 手を掛ける所。とりつく所。〔文明本節用集(室町中)〕
浄瑠璃・曾我虎が磨(1711頃)上「手がかりもなき野面(づら)の石」
② 手をつけるいとぐち。調べたりするためのいとぐちとなるもの。
浮世草子傾城禁短気(1711)五「おわびこと申さふ手がかりがない」
花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「四人は孰(いづ)れへ潜伏せしにや手掛(テガカ)りとては更に無かりけり」
相場売買を行なう動機。〔最新現代語辞典(1933)〕
※壺の石文(1698)躾形之帖「正月 手掛(テガカリ)の図 蓬莱ともいふ」

て‐が・ける【手掛・手懸】

〘他カ下一〙 てが・く 〘他カ下二〙
① みずから手を下して扱う。自分からそのことにあたる。仕事趣味役目などの内容としてそのことに関わる。体験する。
愚管抄(1220)七「法性寺殿はこながらあまりに器量の、手がくべくもなければにや、わが御身にはあながちの事もなし」
※怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉一八「かふ云ふ病人を二度ほど先生の代脈で手掛けた事があるが」
② 世話をする。面倒をみる。養成する。特に、女性と関係を持ち、世話をすることにもいう。
※史記抄(1477)一三「父の手がけられた者を妻にするぞ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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