デジタル大辞泉
「縁」の意味・読み・例文・類語
ゆかり【▽縁/所=縁】
1 なんらかのかかわりあいやつながりのあること。因縁。「縁も―もない」「文豪―の地」「―の者を頼って上京する」
2 血縁関係のある者。親族。縁者。
「おのが―、西東合はせて六百人ばかり」〈宇津保・藤原の君〉
3 《「ゆかりじそ」の略》梅干と一緒に漬け込んだ紫蘇の葉を乾燥させて粉にしたもの。飯にふりかけたりする。
[類語]かかわり・かかりあい・縁・縁・よしみ・絆・関係・つながり・縁故・縁由・つて
ふち【縁】
1 物の端の部分。また、物の周りの、ある幅をもった部分。へり。「がけの縁」「縁が欠ける」「帽子の縁」
2 刀の柄口の金具。
[用法]ふち・へり――「机のふち(へり)に手をつく」「茶碗のふち(へり)」「崖のふち(へり)」のように、物のまわりやまぎわの部分の意では、相通じて用いられる。◇「ふち」には「目のふちを赤くする」とか、「眼鏡のふち」「額ぶち」のような、回りの枠をいう使い方もあり、この場合は「へり」は用いない。◇「へり」は、「船べり」「川べり」のように平らなものの周辺部をいうことが多く、さらに周辺部につける飾り物などの意まで広がる。「リボンでへりをつける」「畳のへりがすり切れる」
[類語](1)隅・角・端・へり・際・隅っこ・端っこ
へり【▽縁】
1 池・穴などに接したすぐそば。そのものに入るすぐ手前をさす。「崖の縁に立つ」「川縁の道」
2 もののはし。ふち。「机の縁で肘をうつ」「船縁」
3 2につけた飾り。特に、畳の長いほうの両端をつつんだ布。
→ふち(縁)[用法]
[類語]隅・角・端・縁・際・隅っこ・端っこ
よす‐が【▽縁/▽因/▽便】
《「寄す処」の意。古くは「よすか」》
1 身や心のよりどころとすること。頼りとすること。また、身寄り。血縁者。よるべ。「知人を―に上京する」「身を寄せる―もない」
2 手がかり。手だて。方法。「今ではもう昔を知る―はない」
[類語]手掛かり・足掛かり
えに【▽縁】
《「えん(縁)」の「ん」を「に」で表記したもの》えん。ゆかり。ちなみ。和歌では「江に」に掛けて用いることが多い。
「みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひける―は深しな」〈源・澪標〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
えん【縁】
- 〘 名詞 〙
- [ 一 ] 二つ以上のものが寄りついてかかわりを持つ作用を表わす。
- ① 仏語。
- (イ) 広義には結果を引き起こす因のこと。狭義には結果を引き起こす直接の内的な原因である因に対し、それを外から助ける間接の原因をいう。
- [初出の実例]「重輅軽走、抑亦油縁」(出典:三教指帰(797頃)上)
- 「縁を待ちて形を顕し給ふ事」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
- (ロ) 心が外の事物に向かって行なうはたらきかけ。攀縁(はんえん)。
- [初出の実例]「縁は物を聞きもし、見もする心也」(出典:袋草紙(1157‐59頃)上)
- ② (①から生じたような)人と人とのめぐり合わせや結びつき。縁故。
- [初出の実例]「つぎつぎえんたづねて、文得んといはすれば」(出典:能因本枕(10C終)八二)
- ③ 親子、夫婦、主従など、人と人との結びつき。つづきあい。あいだがら。
- [初出の実例]「我子の縁にむすぼほれざらむには」(出典:平家物語(13C前)二)
- ④ 関係を持つきっかけ。現在の状況をもたらす過去からの関係。えに。えにし。
- [初出の実例]「さてさて不思議の御ゑんでお心やすくいたした」(出典:黄表紙・敵討義女英(1795)上)
- ⑤ 物事との関係。つながり。
- [初出の実例]「何程えらい学者になっても、頓と実際の仕事に縁(エン)がない。即ち衣食に縁(エン)がない」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉緒方の塾風)
- ⑥ 「えんご(縁語)」の略。
- [初出の実例]「歌をはやく詠まむ故実には、題につきて縁をいそぎ求めて」(出典:和歌肝要(1296頃))
- [ 二 ] ( 「椽」とも書く ) 物事のまわり、周辺を表わす。
- ① 物事のへり。ふち。端。「外縁」「周縁」
- ② 家の外側の板敷きの部分。
- (イ) 寝殿造りで、母屋(もや)の廂(ひさし)の外側や渡殿に張り渡された板敷きの部分。
- [初出の実例]「この皇子(みこ)〈略〉えんにはひ上(のぼ)り給ひぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- (ロ) 座敷の外側に作り付けた細長い板敷き。縁側。
- [初出の実例]「涼しさや椽より足をぶらさげる〈支考〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)夏)
- (ハ) ( 縁側に代用される台の意で ) 縁台。
- [初出の実例]「咲花にかき出す椽のかたぶきて〈芭蕉〉」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)先師評)
縁の語誌
( 1 )[ 一 ]①について。( イ )「縁」は仏教語では四縁〈因縁・等無間縁(次第縁)・所縁縁(縁縁)・増上縁〉のうち増上縁に当たる。( ロ )「日本書紀」「風土記」などでは、縁をコトノモトと読む。これらは因縁由来の意であり、次第に縁は男女(夫婦)、親子、主従など仏教語からは離れた用法に傾いてゆく。→えに・えにし。
( 2 )[ 二 ]②について。( イ )寝殿造りで廂の間をとりまいている部分のうち、板を横に並べた板敷きを「簀子(すのこ)」といい、板を縦に並べたものを「縁(えん)」または「縁側(えんがわ)」と呼ぶとする説がある。おおむね東、南、西側は簀子で、北側に縁を用いていたようである。( ロ )現代の民家では、縁板を奥行き方向に張った縁を切り目縁(きりめえん)あるいは木口縁(こぐちえん)といい、長手方向に張った縁を榑縁(くれえん)という。
よす‐が【縁・因・便】
- 〘 名詞 〙 ( 古くは「よすか」。「寄す処(か)」の意 )
- ① 身や心を寄せて頼りとすること。ゆかりとすること。よりどころとすること。また、そのものや、こと。つて。よるべ。ちなみ。
- [初出の実例]「志賀の山いたくな伐りそ荒雄らが余須可(ヨスカ)の山と見つつ偲(しの)はむ」(出典:万葉集(8C後)一六・三八六二)
- 「御(お)てきといひて、御用の物をして、是をよすがの思ひでとなし」(出典:仮名草子・都風俗鑑(1681)三)
- ② 頼りとする人の意で、特に、夫または妻。また、血縁の者。知己。
- [初出の実例]「もの知り、思ひ知りたる女の、心ありと見ゆるなど語らひて、あまた行くところもあり、もとよりのよすがなどもあれば、しげくも見えぬを」(出典:枕草子(10C終)二九二)
- 「もとより妻子なければ、捨てがたきよすがもなし」(出典:方丈記(1212))
- ③ てがかり。てだて。方法。
- [初出の実例]「人の身は得がたくあればのりのたの与須加(ヨスカ)となれり努め諸々進め諸々」(出典:仏足石歌(753頃))
- 「山林に入ても、餓(うゑ)を助け、嵐を防ぐよすがなくては」(出典:徒然草(1331頃)五八)
えに‐し【縁】
- 〘 名詞 〙 ( 「えに(縁)」に強めの助詞「し」の付いたものから ) =えに(縁)
- (イ) 「し」が助詞としての性質を保っているとみられるもの。
- [初出の実例]「とりて見れば、かち人の渡れど濡れぬえにしあれば、と書きて末はなし」(出典:伊勢物語(10C前)六九)
- (ロ) 熟して一語化したとみられるもの。
- [初出の実例]「またこの川は所から、名に流れたる海人小舟、初瀬の山と詠み置ける、その川のべの縁(えに)しあるに、不審はなさせ給ひそとよ」(出典:謡曲・玉葛(1470頃))
縁の語誌
( 1 )和歌では、「えにし」の「え」に江・枝を掛けることが多い。また、「えに」が単独で用いられることはまれで、ふつう、「えにしあらば」「えにしあれば」などと、強めの助詞「し」を伴う。
( 2 )(イ)の挙例の「伊勢物語‐六九」などがもととなって、「えにし」で特に男女の間柄を意味することが多くなり、一方で俗語としても用いられた「えに(縁)」に対する雅語意識も働いて、一語化したものか。
ゆかり【縁】
- 〘 名詞 〙
- ① なんらかのかかわりあい。多少のつながり。ちなみ。機縁。
- [初出の実例]「大空のゆかりと聞けばまだみねど雲に埋る跡ぞゆゆしき」(出典:安法集(983‐985頃))
- 「大弐の北の方のたてまつり置きし御衣どもをも、心ゆかずおぼされしゆかりに、見入れ給はざりけるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
- ② 血のつながりのある者。血縁。縁者。また、夫から見た妻、または妻から見た夫。親族。一族。
- [初出の実例]「ゆかりとも聞えぬものを山吹の蛙の声に匂ひけるかな」(出典:貫之集(945頃)三)
- 「七条院の御ゆかりの殿原、坊門大納言忠信・尾張中将清経」(出典:増鏡(1368‐76頃)二)
- ③ 「ゆかりじそ(縁紫蘇)」の略。
- [初出の実例]「ハアゆかりか妙だ妙だ。是でやっと目がさめた」(出典:滑稽本・大山道中膝栗毛(1832)初)
ふち【縁】
- 〘 名詞 〙
- ① 物のまわりの部分。へり。めぐり。多く、ふちどりしたりして他と区別できるような、周縁の部分をいう。
- [初出の実例]「的のかたにいろどられたりし車のよこさまのふちをゆみのかたにし」(出典:大鏡(12C前)四)
- ② 刀剣の柄口(つかぐち)、鞘口(さやぐち)の金具。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- [初出の実例]「ふちはなるとにたつ波の、さっと打たる岩崎や」(出典:浄瑠璃・博多露左衛門色伝授(1708)五)
へり【縁】
- 〘 名詞 〙
- ① 物の端。めぐり。まわり。ふち。また、物の端につけた装飾など。
- [初出の実例]「簾もへりは蝙蝠にくはれて」(出典:大和物語(947‐957頃)一七三)
- ② 特に、畳やござのふちにつけた布。
- [初出の実例]「高麗縁(かうらいばし)の、筵青うこまやかに厚きが、へりの紋いとあざやかに」(出典:枕草子(10C終)二七七)
えに【縁】
- 〘 名詞 〙 ( 「えん(縁)」の韻尾の n を「に」で表記したもの ) ゆかり。縁故。ちなみ。
- [初出の実例]「みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐりあひけるえには深しな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)澪標)
縁の語誌
→「えにし(縁)」の語誌
え【縁】
- 〘 名詞 〙 ( 「えん」の「ん」の無表記 ) ゆかり。つながり。えにし。えん。
- [初出の実例]「秋かけていひしながらもあらなくに木の葉ふりしくえにこそありけれ」(出典:伊勢物語(10C前)九六)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「縁」の読み・字形・画数・意味
縁
常用漢字 15画
(旧字)
15画
[字音] エン・タン
[字訓] へりかざり・ふち
[説文解字]
[字形] 形声
旧字はに作り、彖(たん)声。〔説文〕十三上に「衣の純(へり)なり」とあり、衣のへり飾りをいう。彖は篆のように屈曲して連なるものをいう。
[訓義]
1. へりかざり。
2. ふち、ふちに沿うてめぐる、まとう。
3. よる、したがう、経(へ)る。
4. ゆかり、えにし。
5. 夫人の衣、衣(たんい)。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 毛止保利(もとほり)、、衣乃保曾久比(ころものほそくび) 〔名義抄〕 ヘリ・ハタ・メグル・ホトリ・アマリ・ツラナル・ヨシ・ヨル・タグリテ・ツタフ・マサグル・シタガフ・モトホシ・ヌク・イツハル・ユヱナリ・牛ノハナツラ
[語系]
djiuan、純dunは声義近く、純は布の総(ふさ)飾り、縁は衣服のへり飾りをいう。彖thunの音は蠢thjiunと声義近く、獣の屈曲した形。すべて一系の語である。
[熟語]
縁因▶・縁家▶・縁会▶・縁崖▶・縁竿▶・縁隙▶・縁故▶・縁坐▶・縁事▶・縁飾▶・縁尋▶・縁飭▶・縁分▶・縁辺▶・縁由▶・縁領▶・縁累▶・縁類▶・縁例▶・縁衣▶
[下接語]
悪縁・因縁・有縁・縁・外縁・奇縁・機縁・逆縁・契縁・血縁・結縁・周縁・宿縁・順縁・所縁・諸縁・勝縁・塵縁・随縁・絶縁・前縁・善縁・俗縁・内縁・攀縁・万縁・不縁・復縁・仏縁・募縁・法縁・芳縁・無縁・由縁・離縁・良縁・領縁・類縁
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
縁
えん
pratyaya
仏教用語。仏教ではあらゆる存在に固定的実体を認めず,諸条件の寄集ったものと考えるが,その因果関係において,因を助成する間接的原因を縁という。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
縁(えにし)
日本のポピュラー音楽。歌は女性演歌歌手、島津亜矢。2013年発売。作詞:坂口照幸、作曲:水森英夫。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の縁の言及
【因縁】より
…いんえんの音便。仏教では,すべてのものごとが生起したり,消滅したりするには必ず原因があるとし,生滅に直接関係するものを因と言い,因を助けて結果を生じさせる間接的な条件を縁として区別するが,実際に何が因で何が縁であるかをはっきり分かつ基準があるわけではない。因縁は〈因と縁〉と〈因としての縁〉の二通りに解釈されるが,この両者を一括して縁と呼び,因縁によってものごとの生起することを[縁起](えんぎ)とも言い,また,生じた結果を含めて[因果](いんが)とも言う。…
【縁起】より
…仏教における真理を表す一つの言葉で,詳しくは〈因縁生起〉といい,略して縁起という。現象的事物すなわち有為(うい)はすべて因hetu(直接原因)と縁pratyaya(間接原因)との2種の原因が働いて生ずるとみる仏教独自の教説であり,〈縁起をみる者は法=真理をみ,法をみる者は縁起をみる〉といわれる。…
【縁日】より
…そして特別に霊験あらたかな仏菩薩が出現する日に,寺院に詣でて礼拝すれば,かならず功徳を生ずるという信仰が発達した。それが縁日で,縁とは,〈結縁(けちえん)〉または〈有縁(うえん)〉あるいは〈因縁(いんねん)〉のことで,特定の仏菩薩が,特定の日に,特別に霊験あらたかになるように信者の祈願と結びつくのである。たとえば7月10日は観音の[四万六千日](しまんろくせんにち)といって,この日に参詣すれば,その功徳は,4万6000回参詣したのと同じになると説かれたりしている。…
【縁結び】より
…縁とは親子,夫婦,主従など広く人間関係をさし,縁結びとはそれを結ぶことであるが,一般には夫婦,男女の関係を結ぶことをいい,男女の縁を結ぶ呪術的習俗をいうこともある。縁結びには超自然の意志が関係すると考えられており,各地に男女の縁を結ぶとされる神仏があって,良縁祈願がなされている。…
【衣帯】より
…
[袈裟]
袈裟の本旨は,粗末な端裂(はぎれ)をはぎ合わせた僧衣ということなので,その精神を形に示して,数枚の裂をつないで作った一条をさらに数条ならべて縫った形をとる。そのつなぎ目の部分と四周の部分に別の裂を配したものが多く,前者を葉(よう),後者を縁(えん)と称し,縁葉に囲まれた部分を田相(でんそう)また甲(こう)と称する。なお,全部同じ裂で作った無地のものや,つなぎ目に金色,朱色などの線を配しただけのものもあり,禅系諸宗では多くこれらを用いる。…
【社寺建築構造】より
…飛鳥・奈良時代の基壇は一般に高さが高く,なかには法隆寺の金堂,五重塔のように二重に築いたり,夢殿のように壇上に高(勾)欄を巡らしたものもあるが,しだいに低くなり,普通は一重である。平安時代に仏堂内部に床板を張るようになると,周囲に縁(えん)ができて,基壇はその下に隠れ,土を盛って周囲を漆喰(しつくい)などで塗った亀腹(かめばら)が用いられる(図2)。近世にはさらにこの亀腹もなくなり,地表面の高さに礎石をすえるのが一般的になる。…
【日本建築】より
…日本でも唐の様式をそのまま受け入れた奈良時代の建築に対して,平安・鎌倉時代になると軒の出はしだいに深くなる。これは雨から壁や縁をまもるためでもあり,また暑い季節,雨の降っているときでも,戸をあけておくために必要であった。建物の内部には床(ゆか)が張られる。…
※「縁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」