精選版 日本国語大辞典 「折」の意味・読み・例文・類語
おり をり【折】
※書紀(720)允恭元年一二月(図書寮本訓)「季冬(しはすふゆ)の節(ヲリ)にして、風亦烈(はげ)しく寒(さむ)し」
② 機会。場合。際。時。
※竹取(9C末‐10C初)「さて七度めぐらむをり引きあげて、其をり子安貝はとらせ給へ」
[二] 物を折ること。また、そのもの。
① 折り目。折れ目。
※右京大夫集(13C前)「着なれける衣の袖のをりまでもただその人を見る心ちして」
② 全紙を横に二つ折りにしたもの。とくに、連歌、連句に用いる折紙の懐紙の一枚をいう。百韻には四折、歌仙(三六句)には二折を用い、第一の折を初折(しょおり)、ついで二の折、三の折、最後の折を名残(なごり)の折と呼ぶ。
※青電車(1950)〈永井龍男〉B「教科書の『折り』がたて込んでくれば徹夜作業が二三日続くかも知れぬ」
※看聞御記‐永享四年(1432)五月一六日「饅頭折一合、茶子折色々六合」
[三] 何回も繰り返すこと。「やしおおり(八塩折)」の形で、酒を何回もかもすこと、また、刀を何回も鍛えること。→八塩折。
※古事記(712)上「船毎に其の八塩折(やしほをり)の酒を盛りて」
[五] 明治時代の商人用語で、元値の倍の利益があること。かくべえ。
[2] 〘接尾〙
① 重ねて折った紙の束などを数える助数詞。
※浮世草子・好色五人女(1686)四「小半紙壱折手にわたしける」
② 折箱に入れたものや、折詰にしたものなどを数える助数詞。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「四棹入の羊羹二折(ヲリ)」
お・る をる【折】
[1] 〘他ラ五(四)〙
[一] 一直線、または一平面のものを、ある点または線で二線分、または二平面のものにする。
① (棒状の物を)二重になるように曲げる。また、手足や指などを関節部分から曲げることにもいう。
※万葉(8C後)二・二二〇「鯨魚(いさな)取り 海をかしこみ 行く船の 楫(かぢ)引き折(をり)て」
※伊勢物語(10C前)一六「手ををりてあひ見し事を数ふればとをといひつつ四つは経にけり」
② 曲げて二つの部分に切り離す。
(イ) 押し曲げて離し取る。手折る。
※古事記(712)上「即ち其の木を折(をり)て取り出で活(い)かして」
(ロ) 骨などに強い外力がかかって、くだけたり、二つの部分に離れたりして損傷する。
※法華義疏長保四年点(1002)一「之を地に擲(な)げて遂に其の指を折(ヲ)れり」
③ (紙や布などについて) 折目をつける。折って形を作る。折りたたむ。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「この右近物をるとて」
④ 折句を作る。
※雑俳・柳多留‐一三(1778)「かきつばたいたまぬやうに公家は折(をり)」
[二] (一)の意を比喩的に用いる。
① 心を曲げる。気持をくじく。
※日葡辞書(1603‐04)「ガヲ voru(ヲル)」
② (「骨を折る」の形で) 尽力する。苦労する。
※大唐西域記長寛元年点(1163)三「此に於て骨を折(ヲリ)て経典を書写したまへり」
③ 動作や物事のつながりを分断して、続かないようにする。「筆を折る」
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春「けれど、是に話の先を折られて了って」
[2] 〘自ラ四〙 (波が)くずれるように寄せては返す。折れ返ってたたまる。
※万葉(8C後)七・一一六八「けふもかも沖つ玉藻は白浪の八重折(をる)が上に乱れてあるらむ」
[3] 〘自ラ下二〙 ⇒おれる(折)
お・れる をれる【折】
〘自ラ下一〙 を・る 〘自ラ下二〙 一直線または一平面のものが、ある点または線で二線分または二平面のものになる。
① 曲がって二重になる。曲がりたわむ。
※竹取(9C末‐10C初)「御腰はをれにけり」
② 曲がって二つの部分に切り離される。
※書紀(720)斉明四年一一月(北野本訓)「楼(たかとの)に登りて謀る。夾膝(おしまづき)自づからに断(ヲレ)ぬ」
③ 向きを変えて進む。また、道などが曲がる。
※源氏(1001‐14頃)行幸「朱雀より五条の大路を西ざまにをれ給ふ」
④ 強い意見や主張をやわらげ、相手に従う。くじける。譲歩する。負ける。
※源氏(1001‐14頃)胡蝶「げに春の色はえおとさせ給まじけり、と花におれつつきこえあへり」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉二「先方から頓(やか)て『堪忍して呉れ玉(たま)へ』と折れて来る」
⑤ (「骨が折れる」の形で) 苦労する。大変である。
※交易問答(1869)〈加藤弘之〉下「百姓といふ者は壱番骨の折(ヲレ)る者に相違ないから」
⑥ 和歌の第三句(腰句)と第四句とがうまく続かない。→腰折(こしおれ)。
[補注]④の「源氏‐胡蝶」の例については、「おる(愚)」とする説もある。
おれ をれ【折】
〘名〙 (動詞「おれる(折)」の連用形の名詞化)
① 折れたもの。きれはし。部分。
※源氏(1001‐14頃)花宴「立ちて、のどかに袖かへす所を、ひとをれ気色ばかり舞ひ給へるに」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「土大根の折(オレ)を買(かっ)て来て」
② 軸物に折れ目のあるもの。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報