全北区(読み)ゼンホクク

デジタル大辞泉 「全北区」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐ほくく【全北区】

動物地理区の一。北界に属し、東南アジア以外のユーラシア大陸北アメリカサハラ砂漠以北のアフリカを含む広大な地域。新北亜区カリブ亜区旧北亜区北極亜区に分けられる。動物相は他の区に比べて変化に乏しい。
植物区系の一。北半球温帯冷帯寒帯北アフリカの一部を含む地域。ヤナギ科・クルミ科・キンポウゲ科・バラ科などの植物の分布中心となる地域。北極‐亜北極区系区・日華区系区・東シベリア区系区など11の区系区に分けられる。

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精選版 日本国語大辞典 「全北区」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐ほっく‥ホクク【全北区】

  1. 〘 名詞 〙 世界陸上における動物地理区のうち旧北区と新北区との併称。両者は新生代第三紀には陸続きで、動物が自由に移動できたため、共通種類が多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「全北区」の意味・わかりやすい解説

全北区
ぜんほくく
Holarctic region

動物区のうち,北界(全北区と旧熱帯区)の一部分。インドと東南アジア以外のユーラシア大陸,北アメリカ大陸,サハラ砂漠以北のアフリカ大陸を含む地域。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸は古第三紀始新世までは陸続きで,生物の交流が行なわれ,トナカイヤギュウシカなどの有蹄類,ヤマネコ,オオカミ,キツネ,クマイタチテンなどの食肉類レミング,ネズミ,ビーバー,ウサギなどの齧歯類モグラトガリネズミなどの食虫類,その他多くの共通種や近縁種をもつ。初めアルフレッド・R.ウォレスらは両大陸を旧北区新北区区分したが,のちの研究者らが両区を合わせて全北区とし,両区をその亜区とした。いずれの区分を採用するかは,今日も研究者により異なっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「全北区」の意味・わかりやすい解説

全北区
ぜんほくく
holarctic region

動物地理区の一つ。アジア熱帯地域を除くユーラシア全域、サハラ砂漠以北のアフリカ、北アメリカを含む地域。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸は新生代第三紀始新世のころまでベーリング陸橋でつながっており、相互に生物の交流があった。そのため、両地域の動物相は類似しており、たとえば哺乳(ほにゅう)類では有蹄(ゆうてい)類、食肉類、齧歯(げっし)類、食虫類などに共通種や血縁種が多い。ウォーレスA.P.Wallaceは、ユーラシアを旧北区、北アメリカを新北区としたが、ハイルプリンA. Heilprinはこの両地域をあわせて全北区とした。後の研究者はこのいずれかの見解をとっているが、北半球の動物相に共通性が高いことを認める点では一致している。

[片倉晴雄]


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世界大百科事典(旧版)内の全北区の言及

【アメリカ】より

…第四紀の氷河期には北アメリカでも五大湖南方まで氷域が繰り返し広がり,内陸の大部分が氷河性環境に置かれたことが,モレーンなどの氷河堆積物や地形に残されている。【浜田 隆士】
【生物相】

[北アメリカ]
 北アメリカはほぼ動物地理区上の新北区に相当し,いくつかの固有種がいるが,ユーラシア大陸を中心とする旧北区と多くの点で共通する動物相をもつため,両者を併せて全北区とされることが多く,植物区系上は全北区として扱われている。 北アメリカはアラスカのツンドラからフロリダ半島の亜熱帯性の湿地帯まで,その環境はきわめて多様である。…

【動物地理区】より

…動物の地理分布,すなわち各地の動物相は,大陸,島嶼(とうしよ)配置,気候帯,環境などの地史的要因に規制されるが,そういった動物相の特徴を基にした地理的区分。現在では,ヨーロッパ,アジアとアフリカを含めて旧世界,南北アメリカは新世界と呼び,ユーラシア大陸は旧北区,北アメリカは新北区,両者を合わせて全北区とし,アフリカはエチオピア区,インド,南アジアは東洋区,南アメリカは新熱帯区,オーストラリアは太平洋諸島を含めてオーストラリア区と呼ぶのが一般的である。動物地理区分の提唱はスクレーターP.L.Sclaterの鳥類(1858),哺乳類(1894)についてのものが最初で,A.R.ウォーレス(1876),T.H.ハクスリー(1868)などが続いたが,いずれも鳥獣の分類地理学的な検討に基づくものであった(図1)。…

※「全北区」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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