新小説(朝鮮文学)(読み)しんしょうせつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「新小説(朝鮮文学)」の意味・わかりやすい解説

新小説(朝鮮文学)
しんしょうせつ

1906年から10年ほどの間、朝鮮の開化期に現れた啓蒙(けいもう)的文学の一種。自主独立、民主主義、新教育、科学知識、迷信打破、婦権拡張といった近代思想や新文明の普及がテーマとなっているものが多い。文学史的には、李光洙(りこうしゅ/イグァンス)、崔南善(さいなんぜん/チェナムソン)による本格的近代文学を準備したものといえる。日本の政治小説や中国の晩清(しん)小説の影響も受けている。代表的な作家、作品として、李人稙(りじんちょく/イインジク)『血の涙』(1906)、『雉岳山(ちがくさん)』『鬼の声』『銀世界』、李海朝『自由の鐘』『鬢上雪(ひんじょうせつ)』、崔瓚植(さんはく)『秋月色』、安国善『禽獣(きんじゅう)会議録』、具然学『雪中梅』などがあげられる。このうち終わりの2編は日本の政治小説、田島象二『人類攻撃禽獣国会』、末広鉄腸『雪中梅』の翻案に近い。

[大村益夫]

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