木賊(読み)トクサ

デジタル大辞泉 「木賊」の意味・読み・例文・類語

と‐くさ【木賊/×砥草】

トクサ科の常緑多年生シダ山間川辺などに生え、高さ0.6~1メートル。地下茎は横にはう。地上茎は直立し、枝分かれせず、節部に黒いさや状の葉をもつ。夏、茎の頂に短い楕円状の胞子嚢ほうしのうの穂をつける。茎に多量の珪酸けいさんを含むので硬くざらついており、物を磨くのに使用。観賞用にもする。 秋》谷水を踏まへて刈りし―かな/虚子

とくさ【木賊】[謡曲]

謡曲四番目物世阿弥作と伝える。都の僧が、父を尋ねたいという少年松若を連れてその故郷信濃へ下り、木賊を刈っている老いた父を見つける。

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精選版 日本国語大辞典 「木賊」の意味・読み・例文・類語

と‐くさ【木賊・砥草】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. シダ類トクサ科の常緑多年草。北海道、本州中部以北の渓流沿いの林下などに生え、また観賞用に庭園などで栽培される。地中を横に走る根茎から高さ五〇~一〇〇センチメートルの多数の地上茎を叢生する。地上茎は深緑色を帯び中空で径五ミリメートル内外になる。節間は二〇本程の稜と溝が交互して走る。葉は集まって長さ一センチメートル内外の鞘(さや)となり、黒みを帯びる。胞子嚢穂は長さ一センチメートルほどの楕円体で茎の先端に単生する。珪酸(けいさん)塩を多量に含み、著しく硬くざらつくので、木地、骨、爪などをみがくのに用いる。和名砥草は砥(と)の役をする草の意。あおとくさ。漢名、木賊。《 季語・秋 》
      1. [初出の実例]「播磨よねはとくさか、むくの葉か、人のきらをみがくは」(出典:平家物語(13C前)一)
    2. とくさいろ(木賊色)」の略。
      1. [初出の実例]「刑部録といふ庁官、びんひげに白髪まじりたるが、とくさの狩衣に青袴きたるが」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一四)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 謡曲。四番目物。観世宝生・金剛・喜多流。作者不詳。都の僧が別れた父に会いたいという松若を連れて松若の故郷信濃国園原を訪れ、木賊を刈っている老人に宿を借りる。老人はかどわかされた子への悲しみを語り、形見衣装をまとって子が好んだ小歌や曲舞(くせまい)をうたう。僧はこれが松若の父と気がついて、父子を再会させる。男物狂物(おとこものぐるいもの)の一つ。
    2. [ 二 ] 狂言。「天正狂言本」所収。善光寺から帰った太郎冠者が主人に旅先での話を聞かれ、園原を通る人が木賊ですり消えたというでたらめの話をする。

もく‐ぞく【木賊】

  1. 〘 名詞 〙 植物「とくさ(木賊)」の漢名。
    1. [初出の実例]「我も又もくぞくの、身を只おもへわが心」(出典:車屋本謡曲・木賊(1541頃))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木賊」の意味・わかりやすい解説

木賊
とくさ

能の曲目。四番目物。五流現行曲。ただし金春(こんぱる)流は昭和の復曲。世阿弥(ぜあみ)作ともいわれる。都の僧(ワキ、ワキツレ)が少年松若(子方)を伴い、木曽路(きそじ)を経て信濃(しなの)国園原(そのはら)山に着く。老翁(シテ)を中心として草刈りの一行(ツレ数人)が登場、木賊を刈る。僧は老翁にことばをかけ、名所の名草として和歌の題材ともなっている木賊について聞き、これも歌道で幻の木とされる箒木(はわきぎ)について説明される。僧たちをわが家へ案内した老翁は、一人の子供の行方不明を嘆き、酒を勧めつつ、わが子の残した舞の衣装を身に着けて、酔い泣きしつつ思い出の舞を舞う。子を思い子を恨む狂乱に、僧は伴った松若を引き合わせ、父子の再会で終わる。ストーリーに無理があるものの、異色の難曲として重く扱われる能である。

[増田正造]

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動植物名よみかた辞典 普及版 「木賊」の解説

木賊 (トクサ)

学名:Equisetum hyemale
植物。トクサ科の多年草,園芸植物,薬用植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の木賊の言及

【舘岩[村]】より

…奥日光の鬼怒川温泉とはバスで結ばれており,会津高原高杖スキー場が大規模リゾートとして開発されるなど,近年観光開発が進められている。湯ノ花温泉,木賊(とくさ)温泉,田代山湿原がある。【佐藤 裕治】。…

※「木賊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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