県の北西部に位置し、山頂付近は岩手郡
正保国絵図に岩鷲山とみえるが、この名がいつから使用されたかは未詳。むしろ史料上は信仰の対象となった岩鷲山大権現(御殿と称する山頂本社および現在の岩手郡滝沢村巌手山神社など)の名が中世末頃からみえるが、岩手山自体が神体であったのは明らかであろう。岩鷲の由来については、前掲考証書によれば、長治年中(一一〇四―〇六)頃に「山上ノ岩ニ鷲屡現レテ、其レヨリ岩鷲山ト称シ来レリ」とみえる。天明八年(一七八八)には菅江真澄が「嵩に鷲のすがたしたる岩の在れば
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
岩手県西部,盛岡市の西に位置する円錐形の火山。標高2038m。岩手県内の最高峰で南部富士といわれ,東・北・南側のすそ野の発達がよく,その末端はそれぞれ松川,北上川,雫石(しずくいし)川にまで至るが,西側は複雑な山容を示すことから南部の片富士の名もある。山体は噴出時代の異なる東西両岩手山からなり,古い西岩手山の東側を,新しい東岩手山が覆っている。西岩手山は頂上に東西3km,南北2kmの大火口をもち,その外輪山の北壁を屛風岳,南壁を鬼ヶ城と呼び,火口内には御釜,御苗代(みなわしろ)の両湖があり,濃い青藍色の水をたたえている。一方,東岩手山も頂部火口内に中央火口丘の妙高山をもっている。火山体の最高部は東岩手山で,山体は主として複輝石安山岩の溶岩で構成されている。岩手山の頂上付近は新旧火山の相違や高山植物の種類,その発生状態などが区域によって異なることがよく観察され,岩手山高山植物帯として天然記念物に指定されている。
1719年(享保4)には岩手山の北東斜面,標高1200m付近の中腹で噴火が起こり,ここから流出した溶岩流は北東麓の三森山まで約3.5km流下し,現在は焼走(やけばし)り溶岩流として特別天然記念物に指定されている。岩手山は十和田八幡平国立公園の南部を占め,網張,滝ノ上,松川などの温泉に加え,多数の湖沼,湿原,渓谷などがあるため年々観光客が増加している。近年,山麓では東北自動車道(1977)や東北新幹線(1982)の開通に刺激されて,網張温泉の岩手山麓国民休暇村や各種のリゾート施設の建設が進められている。また,北麓の松川地区(松川温泉)や南西麓の葛根田(かつこんだ)(雫石町滝ノ上)地区では地熱開発も行われ,松川地区では1966年,葛根田地区では78年から地熱発電所が操業している。一方,農業では南麓に1891年開設の小岩井農場があり,北・東・南麓では第2次世界大戦後から国営による大規模な開拓が行われ,酪農と開田,開畑が進められた。
執筆者:水野 裕
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岩手県中西部、盛岡市の北部にそびえる山。標高2038メートル。コニーデ式火山で、南部富士、岩手富士ともいう。複合火山のため眺める位置によって形が変わり、南部片富士ともよばれる。山岳信仰の対象であった山で、古くは巌鷲山(がんじゅさん)ともよばれた。山体は二つの火山からなり、古い西火山の火口は東西約3キロメートル、南北約2キロメートルの紡錘形をなし、屏風(びょうぶ)岳、鬼ヶ城の外輪山と中央火口丘がある。東岩手山は西岩手山の東斜面に形成された新しい火山で、噴気孔がみられ活火山の様相を呈している。1719年(享保4)の噴火は特徴的で、北東斜面から多量の「焼走り熔岩流(やけはしりようがんりゅう)」(特別天然記念物)を流出した。新旧火山の相違や高山植物の種類、群落の移り変わりが観察され、「岩手山高山植物帯」として国の天然記念物に指定されている。十和田八幡平(はちまんたい)国立公園の南部を占め、湿原、湖沼、渓谷、温泉など、主として火山性景観が展開。岩手山北西麓(ろく)には松川温泉、松川地熱発電所(2万キロワット)があり、南西麓には網張(あみはり)、滝ノ上(たきのうえ)温泉や葛根田(かっこんだ)地熱発電所(8万キロワット)がある。また、緩やかな山麓斜面は第二次世界大戦後は開拓入植により牧野が広がり、一本木には自衛隊演習地もある。登山口は、信仰登山のため開かれた柳沢口、西岩手山の複雑な景観を展開する網張温泉口などがある。
[川本忠平]
『『岩手山 第一部』(1973・岩手放送)』
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…藤原文化を受けつぐ歴史の町平泉や花巻温泉郷などは,東北観光ルートの基地でもある。(2)奥羽山脈東麓地帯 北部には七時雨(ななしぐれ)山に続く高原があり,八幡平,岩手山,駒ヶ岳など1500m前後の山々が集まって十和田八幡平国立公園の雄大な自然美を作り出している。その中でも岩手山(2041m)は南部富士ともいわれる円錐状火山で,付近に多くの温泉が湧出し,松川地熱発電所(2万kW),葛根田(かつこんだ)地熱発電所(5万kW)などもあり,北東北(きたとうほく)の観光の中心地となっている。…
※「岩手山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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