柿右衛門(読み)カキエモン

デジタル大辞泉 「柿右衛門」の意味・読み・例文・類語

かきえもん〔かきヱモン〕【柿右衛門】

酒井田柿右衛門さかいだかきえもん

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精選版 日本国語大辞典 「柿右衛門」の意味・読み・例文・類語

かきえもんかきヱモン【柿右衛門】

  1. 肥前国佐賀県有田陶工。姓は酒井田。初代は筑後の人で、初め喜左右衛門と称し、元和元年(一六一五)ごろ有田に移り、陶器を焼いていたが、寛永(一六二四‐四四)の末、赤絵の技法に成功したという。代々その技法を受けて柿右衛門を名のり、その作品をも柿右衛門と呼ぶが、各代の作品の区別は困難。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「柿右衛門」の意味・わかりやすい解説

柿右衛門
かきえもん

佐賀県有田の伊万里焼(いまりやき)を代表し、江戸初期から現代まで14代続く陶工酒井田柿右衛門家。また、その家系の窯(かま)で焼かれた色絵磁器、およびその様式の作品群。

 酒井田家は室町時代には酒井田(現、福岡県八女(やめ)市)に居住した豪族で、1582年(天正10)には酒井田壱岐守(いきのかみ)統連の世継、酒井田弥次郎が龍造寺(りゅうぞうじ)氏の人質となって竜王(現、佐賀県杵島(きしま)郡白石(しろいし)町深浦)に移り住んだと伝える。この弥次郎は晩年円西と名のったが、その子が初代柿右衛門に改名した喜三衛門と推測されている。初代柿右衛門は進取気風に富んだ才気煥発(かんぱつ)な陶工であり、中国人からの伝授をもとに白磁胎上絵付法(赤絵)を開発し、金銀の上絵付法をもくふうして伊万里焼の進歩に大いに貢献し、長崎に持参してオランダ人や国内の商人にも売りさばくなど目覚ましい活動を行った。赤絵の創始は1647年(正保4)よりすこし前のことであった。その後、家業はかならずしも順風満帆ではなかったらしいが、3代のころは西欧輸出陶磁の生産が始まった1660年代にあたっており、これに参加して隆盛するに至ったようである。赤絵創始の功が認められて、例外的に白磁染付以外にも、赤絵上絵付の焼成を藩より許可され、新藩主着任のときは謁見が許され、作品も献上する習わしであった。それは単に酒井田家が伝統ある名家であったばかりでなく、歴代名工が輩出して、高い陶技の水準を保ち続けたことに由来している。長い柿右衛門家の歴史のなかで江戸後期1771年(明和8)ころは生業がかなり苦境にたたされたこともあった。しかし、明治維新を迎え、1878年(明治11)に黒川真頼(まより)が『工芸史料』を著して柿右衛門を顕彰して以来、その名声は西欧にも及び、1917年(大正6)に没した11代柿右衛門が家運をふたたび盛り上げた。しかし残念ながら10代以前の歴代の生没年は判然とせず、その作品も具体的にはなにも判明していない。

[矢部良明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「柿右衛門」の意味・わかりやすい解説

柿右衛門(1世)
かきえもん[いっせい]

[生]慶長1(1596).肥前
[没]寛文6(1666).6. 肥前
江戸時代初期の有田の陶工。赤絵磁器の創始者といわれる。瓦工酒井田円西の子。名は喜左衛門,赤絵の完成後,柿右衛門と改名。元和1 (1615) 年頃,父とともに有田南川原に移住,古唐津風の陶器を焼く。同3年頃,陶工高原五郎七に会い,その指導を受けて染付磁器の改良に努める。また,伊万里の陶商東島徳左衛門が長崎居留の中国人周辰官から赤絵の方法を学んだと聞き,出向いて徳左衛門と協力して工夫を重ね,寛永末年 (43) 赤絵の焼成に成功したという。作品は鉢,皿,徳利,蓋物,水差し,花瓶,置物などで,光沢ある乳白色の素地に赤,緑,金,黄,青,紫,黒などの彩釉を用い,繊細な筆致で各種の絵文様を上絵付けした濁手 (にごしで) と,半透明な染付磁器の上に上絵を焼付けた染錦手とがある。なお,正保年間 (44~48) から彼の作品はヨーロッパに輸出され,各地でその写し (→柿右衛門様式 ) が作られるなど,世界の陶磁界に大きな影響を与えた。

柿右衛門
かきえもん

江戸時代初期より現代まで続く有田の陶工酒井田柿右衛門の家系。またその窯で作られる色絵磁器をもいう。赤絵磁器の創始者といわれる酒井田柿右衛門 (柿右衛門〈1世〉 ) 以来,柿右衛門の系統は現在 14世まで続いているが,2世から5世までは1世の子といわれ,作品のうえで1世との区別は困難。また5世の弟の酒井田渋右衛門も,この派の名工である。

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改訂新版 世界大百科事典 「柿右衛門」の意味・わかりやすい解説

柿右衛門 (かきえもん)

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百科事典マイペディア 「柿右衛門」の意味・わかりやすい解説

柿右衛門【かきえもん】

酒井田(さかいだ)柿右衛門

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367日誕生日大事典 「柿右衛門」の解説

柿右衛門(7代目) (かきえもん)

生年月日:1711年2月15日
江戸時代中期の赤絵磁器の陶工
1764年没

柿右衛門(9代目) (かきえもん)

生年月日:1776年5月16日
江戸時代後期の赤絵磁器の陶工
1836年没

柿右衛門(8代目) (かきえもん)

生年月日:1734年10月8日
江戸時代中期の赤絵磁器の陶工
1781年没

柿右衛門(2代目) (かきえもん)

生年月日:1620年11月4日
江戸時代前期の赤絵磁器の陶工
1661年没

柿右衛門(4代目) (かきえもん)

生年月日:1641年4月5日
江戸時代前期の赤絵磁器の陶工
1679年没

柿右衛門(10代目) (かきえもん)

生年月日:1805年8月1日
江戸時代末期の赤絵磁器の陶工
1860年没

柿右衛門(5代目) (かきえもん)

生年月日:1660年9月1日
江戸時代中期の赤絵磁器の陶工
1691年没

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「柿右衛門」の解説

柿右衛門 かきえもん

⇒酒井田柿右衛門(さかいだ-かきえもん)

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世界大百科事典(旧版)内の柿右衛門の言及

【酒井田柿右衛門】より

…肥前有田の陶工で,江戸前期から今日まで,14代にわたって独特の色絵磁器を焼く。初代柿右衛門(生没年不詳)は,正保(1644‐48)ころ,明の五彩磁の技法を日本ではじめて完成したといわれている。酒井田家は有田皿山の中心部から離れた南川原(なんがわら)山に窯を築き,伊万里焼とは性質を異にする上質の色絵磁器を焼成した。…

※「柿右衛門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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