(読み)キワ

デジタル大辞泉 「際」の意味・読み・例文・類語

きわ〔きは〕【際】

《「ぎわ」の形で、他の語と複合しても用いる》
あと少しで別のものになろうとするぎりぎりのところ。境目。また、物の端。「がけのから見下ろす」「生え」「波打ち
ある物にきわめて接近した所。すぐそば。「戸口のに置く」「壁」「山」「窓
物事がそうなろうとするまさにそのとき。「今わの」「入り」「死に」「往生
物事の窮まるところ。限界。際限。
「世に悲しきことの―にはおぼえ侍りしを」〈・柏木〉
身分。家柄。分際。
「いとやむごとなき―にはあらぬが」〈・桐壺〉
才能・器量などの程度。
「取る方なく口惜しき―と、優なりとおぼゆばかりすぐれたるとは、数ひとしくこそ侍らめ」〈・帚木〉
物事の程度。ほどあい。
「はしたなき―に熱かりければ」〈大鏡・道長下〉
江戸時代、年末・節季の決算期。
「―の日和ひよりに雪の気づかひ/惟然」〈続猿蓑
[類語](1へり隅っこ端っこそば境界きょうかい境界線区画仕切り境目さかいめ分かれ目分界臨界いきボーダーライン地域/(3矢先折も折折しも折よく折節折から丁度頃しも時しも際してたまたま偶然適時/(4限界限度極限限り最大限手一杯目一杯頭打ち際限上限下限北限ぎりぎりリミット

さい【際】[漢字項目]

[音]サイ(漢) [訓]きわ
学習漢字]5年
〈サイ〉
二つの物が接する所。限りのところ。きわ。はて。「際涯際限分際ぶんざい辺際
出会う。「際会
接してまじわる。「学際交際国際
時。場合。「実際
〈きわ(ぎわ)〉「際物手際間際窓際水際
[難読]今際いまわ

さい【際】

とき。場合。機会。「有事の」「このだから言っておこう」
物と物との接するところ。「天地の
ころ[用法]
[類語]場合ところ

ざい【際】

身のほど。分際。
時宗ときむねやらぬの逃さぬのと、女子の―にあんまりな」〈浄・百日曽我

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精選版 日本国語大辞典 「際」の意味・読み・例文・類語

きわきは【際】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物事の窮まるところ。極限。限界。きわみ。果て。限り。
    1. [初出の実例]「受領の北の方にて国へ下るをこそは、よろしき人の幸のきはと思ひて愛でうらやむめれ」(出典:枕草子(10C終)一八六)
  3. 物と物との接するところ。境目。端。仕切り。また、そのすぐそば。ほとり。
    1. [初出の実例]「紅の腰ひきゆへるきはまで、胸あらはに、ばうぞくなるもてなしなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)空蝉)
  4. 物事の様相が転換するような大切な時期。転機。時。折り。当座。
    1. [初出の実例]「今やうやう忘れゆくきはに、かれはたえしも思ひ離れず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    2. 「年月へても露忘るるにはあらねど、去る者は日々に疎しといへることなれば、さはいへど、其のきはばかりは覚えぬにや」(出典:徒然草(1331頃)三〇)
  5. 年末及び節季の決算期。江戸時代、商家の勘定日。
    1. [初出の実例]「かなしきもの〈略〉きはにかねのなきは、かなしきことのうはもりなるに」(出典:評判記・けしずみ(1677))
  6. 物事の段階。程度。
    1. (イ) 人の所属する家門、階級。分際。身分。家柄。
      1. [初出の実例]「及ぶまじからむきはをだに、めでたしと思はんを、死ぬばかりも思ひかかれかし」(出典:枕草子(10C終)二六八)
    2. (ロ) 才能、器量などの程度。
      1. [初出の実例]「取る方なく口惜しききはと、優なりとおぼゆばかりすぐれたるとは、数ひとしくこそ侍らめ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    3. (ハ) 物事の程度。ほどあい。
      1. [初出の実例]「御ものをいれて、いみじう熱くてまいらせわたしたるを〈略〉さふさふとまいりたるに、はしたなききはにあつかりければ」(出典:大鏡(12C前)六)
  7. 江戸以降、操り芝居などの寄席芸人、魚商、駕籠屋、車夫などが数の九をいう符丁。また、楊弓賭物(かけもの)をするときにも用いられた。
    1. [初出の実例]「肴売どん七が直段(ねだん)のから名に〈略〉きわ 九百文の事」(出典:談義本・教訓不弁舌(1754)五)

さい【際】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物と物とが接するところ。また、あるものと他との境目。
    1. [初出の実例]「御酌の人さいのそとへ銚子を出て、是もさいの外に手を付てくはふべし」(出典:宗五大草紙(1528)公私御かよひの事)
    2. [その他の文献]〔易経‐泰卦〕
  3. ある場所の付近。ほとり。あたり。
  4. ある地点と地点との間。
    1. [初出の実例]「山を越、礒(いそ)を伝ひ、いさごをふみて、其際十里、日影ややかたぶく比」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)象潟)
    2. [その他の文献]〔曹植‐七啓〕
  5. ある事柄が行なわれる、そのとき。時機時節。おり。とき。場合。
    1. [初出の実例]「此之際有蹴鞠事」(出典:古事談(1212‐15頃)一)
    2. [その他の文献]〔魏文帝‐典論〕
  6. ざい(際)
    1. [初出の実例]「女のさいに烏帽子、提燈に太刀を帯し」(出典:歌舞伎・伊勢平氏栄花暦(1782)三立(暫))

ざい【際】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「分際(ぶんざい)」の略。一説に「才(ざえ)」から変化したことばで、才知の意とも。「に」を付けて用いることが多い ) 分際。身のほど。身分。分限。ふつう、身分もわきまえないさしでがましいことを、非難していうのに用いる。
    1. [初出の実例]「その時頼朝、なんぢなわのざいに至て、けなげだてはいらざる事よ」(出典:狂言記・生捕鈴木(1660))

ぎわぎは【際】

  1. 〘 造語要素 〙
  2. 物を表わす名詞に付いて、そのそば、境目、あたりの意を示す。「壁ぎわ」「髪ぎわ」「水ぎわ」「山ぎわ」など。
  3. 動詞の連用形に付いて名詞をつくり、その動作が行なわれはじめる時を表わす。…する時。…しようとする時。ちょうどその時。「入りぎわ」「散りぎわ」「死にぎわ」など。

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普及版 字通 「際」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

[字音] サイ
[字訓] きわ・あいだ

[説文解字]

[字形] 会意
(ふ)+祭(さい)。は神霊の陟降する神梯。そこに祭卓をすえて祭る。神と人との相接するところ、いわゆる神人の際である。〔説文〕十四下に「壁の會なり」と壁間の空隙の意とするが、際は人の至りうる極限のところで、〔淮南子、原道訓〕「高くして際(いた)るべからず」のようにいう。際会・際限のように用いる。金輪際とは、地底の果てをいう。

[訓義]
1. きわ、きわみ、神梯の前で神を祭る。
2. であう、いたる、あいだ。
3. さかい、けじめ、つらなる。
4. あう、まじわる、接する。
5. 接するとき、接するところ、時機、機会。

[古辞書の訓]
名義抄〕際 キハ・マジフ・キハム・カギル・ツラヌ・アヒダ・ホトリ 〔字鏡集〕際 ホトリ・アヒダ・カギル・マジフ・ツラヌ・アフ・キハム・ツク・カナフ・ニハ・オク

[語系]
際・祭tziatは同声。(薦)tzianは声近く、供薦して祭ることをいう。際は祭の声義を受け、その場所と時、機会を限定していう。神と人と相接するところである。

[熟語]
際可・際会・際涯際暁際遇・際限・際次・際天・際畔
[下接語]
雲際・簷際・花際・海際・涯際・学際・岸際・巌際・極際垠際・空際・五際・交際・国際・山際・事際・実際・霄際・津際・真際・窓際・端際・庭際・天際・日際・分際・壁際・辺際・無際・林際

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