(読み)つるばみ

日本大百科全書(ニッポニカ)「橡」の解説


つるばみ

植物染料の一種。またその色名。橡はクヌギ(ブナ科の落葉高木)の古名で、その実(どんぐり)を砕いたものまたは実の殻斗(うけ)(傘形のもの)を煎(せん)じ、灰汁(あく)染して薄茶色、鉄媒染して焦げ茶色黒色に染める。黒に染めたものを黒橡とよび凶服に用いた。そのほか、「橡」を付して、薄茶色みのある色合いをよぶ場合がある。たとえば、白橡はいわゆる白茶色。黄橡は黄赤みの薄茶色で、木蘭(もくらん)色と同じとされる。青白(おおしろ)橡は『延喜式(えんぎしき)』によると刈安(かりやす)と紫根で染め出されるくすんだ黄緑色で青色(あおいろ)ともいわれる。赤白(あかしろ)橡は『延喜式』によると櫨(はぜ)と茜(あかね)で染め出される、赤みのある黄茶色である。養老(ようろう)の衣服令(りょう)に服色を身分の高低順に掲げ、黄橡は紅の次、纁(そい)の上に記され、上級の者が、橡は最後に掲げられ、家人(けにん)・奴婢(ぬひ)が用いるものとした。

[高田倭男]

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精選版 日本国語大辞典「橡」の解説

つるばみ【橡】

〘名〙 (古くは「つるはみ」)
① 団栗(どんぐり)の古称。《季・夏》
※正倉院文書‐天平勝宝二年(750)一〇月一二日・造東大寺司解「橡子弐斗壱升 以一升染紙十五張」
② 団栗の(かさ)を煮た汁で染めた色。媒染液によって色相が異なり、白橡、赤橡、青橡、黒橡などがある。また、その色の衣。
(イ) 古代では、身分の卑しい人の着る衣服の色。
※万葉(8C後)一八・四一〇九「紅はうつろふものそ都流波美(ツルハミ)のなれにし衣(きぬ)になほしかめやも」
(ロ) 平安中期頃から、四位以上の人が着用する(ほう)の色。
※類従本堀河百首(1105‐06頃)夏「つるはみの衣の色はかはらねど一重になればめづらしき哉〈藤原顕仲〉」
(ハ) 藤衣(ふじごろも)の色。喪服の色。染めの色。
※源氏(1001‐14頃)夕霧「衣の色、いと濃くて、つるはみのきぬ一かさね、小袿(こうちき)着たり」

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デジタル大辞泉「橡」の解説

つるばみ【×橡】

クヌギ、またはその実のどんぐりの古名。〈和名抄
1の実またはその梂(かさ)を煮た汁で染めた色。灰汁(あく)媒染して薄茶色、鉄媒染して焦げ茶色や黒色に染める。また、その色の衣服。
㋐奈良時代、家人奴婢(ぬひ)の着る衣服の色。
㋑平安中期ごろから、四位以上の人の袍(ほう)の色。
藤衣(ふじごろも)の色。喪服の色。

とち‐の‐き【×橡/栃】

トチノキ科の落葉高木。山地自生。葉は大きく、倒卵形の5~7枚の小葉からなる手のひら状の複葉。5月ごろ、白色紅斑のある花が円錐状に咲く。実は丸く、熟すと三つに裂け、中にある褐色種子食用近縁種マロニエがある。庭園街路植栽。とち。
[補説]「」は国字

とち【×橡/栃/×杼】

トチノキ別名 花=夏 実=秋》「―咲くやまぬかれ難き女の身/波郷
[補説]「栃」は国字。

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動植物名よみかた辞典 普及版「橡」の解説

橡 (トチノキ・トチ)

学名Aesculus turbinata
植物。トチノキ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物

橡 (クヌギ・ツルハミ;ツルバミ;ドングリ)

学名:Quercus acutissima
植物。ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物

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