(読み)ヒツ

デジタル大辞泉 「櫃」の意味・読み・例文・類語

ひつ【×櫃】

ふたが上方に開く大形の箱。唐櫃からびつ長櫃ながびつなど。
飯を入れる器。→おひつ
[類語]茶碗片口ボウル茶托ソーサーコースター

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精選版 日本国語大辞典 「櫃」の意味・読み・例文・類語

ひつ【櫃】

  1. 〘 名詞 〙 上に向かってふたのあく大形の箱。長櫃(ながびつ)折櫃(おりびつ)唐櫃(からびつ)小櫃(こびつ)など。また、飯を入れる木製の器。飯櫃(めしびつ)。おひつ。
    1. [初出の実例]「鍾(かね)(ヒツ)を朝(みかと)に設けて詔して曰く」(出典日本書紀(720)大化元年八月(北野本訓))

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改訂新版 世界大百科事典 「櫃」の意味・わかりやすい解説

櫃 (ひつ)

蓋のある大型の箱。櫃は中国語の櫃子からきている。脚付きの唐(韓)櫃と脚の付かない和(倭)櫃(やまとびつ)とがある。唐櫃の脚は通常長側面に各2本,短側面に各1本の6本だが,正方形の小櫃などはだいたい4本脚である。漆塗の塗櫃と素木(しらき)の明櫃(あかひつ)とあり,塗櫃には蒔絵などが施されているものもある。櫃は古墳時代ころから使われていたと考えられるが,中世あたりまでは多く唐櫃が使われていた。正倉院には赤漆塗などの唐櫃が62合(ごう)遺る。保存,収納用家具であると同時に,櫃には運搬用具としての役目も大きく,その場合,脚に紐をかけて蓋の上で結び,担い棒を通して前後2人でかついだため,唐櫃のほうが便利であった。中には飲食物から武器,衣類,文書,経巻,貴重品,家具などあらゆるものが入れられた。人に物を贈る場合も櫃に入れて運んで行き,差し出すときは蓋を返してここに載せて出した。これが広蓋(ひろぶた)のもとである。近世になると唐櫃はほとんど使われなくなり,長持に変わった。長持も和櫃の一種であるが,近世以降は櫃というと葛籠(つづら)や行李(こうり)くらいの大きさの木製の物入れを指すようになった。
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西洋では物を収納する蓋付きの大型の箱を〈チェストchest〉とよび,収納家具の原初的な形態を示す。すでに古代エジプトやギリシアには表面を象嵌細工や塗料で装飾した芸術的にも質の高い作品がみられた。中世前期の不安定な社会情勢の中では,移動に便利な持ち運びできるチェストが家具のなかで最も重要な種目であった。とくにロマネスク時代のチェストは一般に小型で,オーク板張りに鉄帯をまいたものが多い。中世後期になると,社会制度が固まり,人々の生活が落ち着くにつれて,チェストはしだいに大型化し,豪華なトレーサリー(はざま飾り)や襞(ひだ)模様の彫刻で飾られた。さらに上流貴族の生活様式が多様化するに従い,目的に応じて〈チェスト・オブ・ドロワーズchest of drawers〉とよぶ引出し付きの簞笥や高価な食器を収納する〈クレデンツァcredenza〉とよぶ戸棚サイドボードなどに発展した。また,中世の城館では家臣たちが寝台の代りに長いチェストの上に寝る習慣であったので,長い箱型寝台はチェストから発展したものとみられる。中世期の椅子の多くが座部に蓋付きの箱型をとりいれていることも,チェストが中世の椅子の出発点であることを示している。ルネサンス時代のイタリアでは豪華な彫刻に金鍍金(めつき)を施した〈カッソーネcassone〉とよぶ装飾用の櫃が作られたが,これはとくに婚礼用調度として重要なものであった。アメリカでもチェストは家庭で最も重要な家具であった。17世紀末にコネティカット州で作られた下部に引出しを備え,表面にヒマワリチューリップ浮彫りにした素朴な櫃は〈コネティカット・チェスト〉,18世紀のペンシルベニア地方で作られたダーク・グリーンの地に花文様と果物や鳥などを組み合わせたペイント塗りの素朴な櫃は〈ペンシルベニア・チェスト〉とよばれ,ともに婚礼調度として愛用された。
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普及版 字通 「櫃」の読み・字形・画数・意味


18画

(異体字)匱
14画

[字音]
[字訓] ひつ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は匱(き)。櫃は匱の繁文。古くは匱を用いた。櫃は〔山海経、大荒北経〕に「北極天櫃」という山名がある。

[訓義]
1. ひつ、はこ。
2. 山の名。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕櫃 比豆(ひつ)、俗に長櫃・韓櫃・櫃・折櫃・小櫃等の名り 〔名義抄〕櫃 ヒツ〔字鏡集〕櫃 キノハ(コ)・ヒツ・マセ*語彙は匱字条参照。

[熟語]
櫃田・櫃坊・櫃房

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【室内装飾】より

… 作りつけの家具というものは,東西ともにほとんどなかったらしい。西洋の室内でのもっとも重要な家具は,戸棚と櫃(ひつ)と寝台とであった。戸棚はブルジョアジーの家庭でも農家でも,もっとも自慢のたねとしてすえつけた家具で,衣類,銀器,書類,貯金などを入れておいた。…

※「櫃」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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