(読み)サラ

デジタル大辞泉 「皿」の意味・読み・例文・類語

さら【皿/盤】

[名]
食物を盛る、浅くて平たい容器。陶製・ガラス製・金属製などがある。
供応のぜんなどで、1に盛って出す料理。
1に似た形のもの。「ひざの―」「はかりの―」「灰―」
漢字のあしの一。「盆」「益」「盛」「監」などの「皿」の部分の称。
[接尾]助数詞。皿に盛った食物や料理などの数を数えるのに用いる。「カレーライス二―」「いため物三―」
[下接語]頭の皿ひざの皿(ざら)油皿石皿受け皿絵皿・大皿・かく菊皿木皿口取り皿小皿蒸発皿ちゅう皿・つぼ手塩皿時計皿取り皿灰皿はかりひざ火皿ひら銘銘皿薬味皿
[類語]茶碗ひつ片口ボウル茶托ソーサーコースター

べい【皿】[漢字項目]

[音]ベイ(漢) [訓]さら
学習漢字]3年
〈ベイ〉食器の一。さら。「器皿きべい
〈さら(ざら)〉「小皿灰皿

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精選版 日本国語大辞典 「皿」の意味・読み・例文・類語

さら【皿・盤】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 平たく浅い器。食物を盛るのに用い、陶器、漆器、金属およびガラス製などがある。
    1. [初出の実例]「掌筥陶器皿〈謂。器惣名為皿。其木土器亦皆掌〉事」(出典:令義解(718)職員)
    2. 「沈の懸盤、白銀の御さらなど」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一三日)
  3. に盛って、饗膳(きょうぜん)などに出す肴(さかな)
    1. [初出の実例]「皿 一塩の鯛、玉子付むしぬき」(出典:随筆・槐記‐享保一二年(1727)極月九日)
  4. 仏具の一つ。銅に錫(すず)・鉛を加えた合金で作る。盆のような形で、読経の時に打ち鳴らす。
    1. [初出の実例]「鍾、娑羅(サラ)、宝帳、香炉、幡の等き物を付け賜ふ」(出典:日本書紀(720)持統三年七月)
  5. 秤皿(はかりざら)
  6. 物を盛るもの。
    1. [初出の実例]「でるがさいご、幾世留の皿(サラ)にてひっしゃりとせらるるは、ふくまぬ人なし」(出典:浮世草子・人倫糸屑(1688)佞人)
  7. 人間の骨で、平たくてに似た形のものを俗にいう。
    1. (イ) 膝蓋骨(しつがいこつ)
      1. [初出の実例]「ヒザノ sara(サラ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. (ロ) 頭蓋骨(ずがいこつ)の頂上の部分。
      1. [初出の実例]「頭の顱骨(サラ)を打破った訳でもなければ」(出典:五重塔(1891‐92)〈幸田露伴〉二九)
  8. 処女の女陰。
    1. [初出の実例]「sara(サラ) モ ウチ ワラズ タダ イン ワ ホカ ニ モラシ マラシタ」(出典:懺悔録(1632))
  9. 漢字の脚(あし)の一つ。「盃」「盆」「盛」などの「皿」の部分をいう。この脚をもつ字の大部分は、字典で皿部に属する。〔落葉集(1598)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「皿」の意味・わかりやすい解説


さら

平らに開いた、主として円形の浅い器で、食器や、他の食器の台に使われる。語源は「あさらけ(浅甕)」の略とも、「あさある(浅有)」の転訛(てんか)ともいい、ほかに諸説あるが、さだかでない。ただし、いずれの説も浅いという形状に注目する点で共通する。またサンスクリット語や朝鮮語から出たという説もある。

 現在の皿に相当する器に、日本では古くは「盤(ばん)」の字が使われた。これは、古代中国の殷(いん)代~戦国時代(前16~前3世紀)には青銅製の浅く平たい器があり、盤とよばれたことによる。これは食器ではなく、祭祀(さいし)や饗宴(きょうえん)のときに手を洗う水を受ける器として使われた。現在でも多数の盤が他の青銅器とともに発掘されている。食器としては隋(ずい)から唐代にかけて銀製の盤が完成した。一方で陶製の三彩(さんさい)が現れ、それから陶磁製が主流となり、陶磁製の盤は宋(そう)代に完成をみた。この中国で使われた盤の字が、日本において古くは食器や盛り付け器である「さら」の漢字として使われた。古辞(字)書には「盤」の字を項目として出すものが多い。

 日本語としての「さら」は、『正倉院文書』中の天平宝字(てんぴょうほうじ)8年(764)の「大般若(だいはんにゃ)経料雑物納帳」に「佐良卅(さらさんじゅう)口」とみえるのが早い例であろう。また承平(じょうへい)年間(931~938)成立の字書『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には、「盤」の字に「佐良」の訓をつけ「器名」と解説している。現用の「皿」の字は、中国では『説文解字』に「飯食之用器」と記すように、食器の一種であったが、日本では平安末期の字書『類聚名義抄』にも出る。皿の表記は中世からしだいに優勢となり、江戸時代までには盤にとってかわった。

 すでに平安時代中期の『延喜式(えんぎしき)』には、さまざまな種類の盤の名称が記されている。銀盤、木盤、土盤、陶盤、瓷(し)盤は材料を表す。朱漆(しゅしつ)盤は仕上げを、高(こう)盤、大(たい)盤、枚(まい)盤、片(へん)盤、麻笥(まけ)盤は大きさと形状を表す。また、陶埦(とうわん)盤、粥(しゅく)盤、後(こう)盤、下食(かしょく)盤は用法を表す名である。このほかの用例では、「しろがねの御さら」(『紫式部日記』)、「白銅大盤」(『大安寺資材帳』)、「鉄盤」(『観世音寺資材帳』)、「青瓷ノ盤」(『今昔物語集』)、「こんるりの御皿」(『十訓抄(じっきんしょう)』)は材料、「瓜(うり)盤」(『日本書紀』)、「水盤」(『江家次第(ごうけしだい)』)は用法の例である。

 現存品にみると、たとえば正倉院の二彩大皿は径37センチメートル前後、高台(こうだい)のない平底で、唐三彩の影響を受けた奈良三彩とよばれるものである。当時の皿(盤)と鉢・椀(わん)の基本的な違いは、浅深のほかに高台の有無であったらしい。高台はのちに成形後につける「つけ高台」になり、さらに初めから高台をつけた形に成形する「削り高台」に発展した。

 中世においては絵巻物などの絵画資料に皿の姿をうかがうことができる。『餓鬼(がき)草紙』には琵琶(びわ)を弾く男の姿を描くが、男の前に、折敷(おしき)にのせた高台付きの小皿、高坏(たかつき)にのせた食物を盛った小皿、酒器のような高台のない小皿と、3種類の小皿が置かれている。また『後三年合戦絵巻』には、武士が山盛りの飯、いわゆる垸(椀)飯(おうばん)を食べている光景が描かれているが、その横には副食物を盛ったと思われる小皿が置かれている。この副食物用の食器の例は他にもみられ、当時の小皿の用途がわかる。これら中世における皿は大部分が酒杯を大きくした程度の小皿で、素焼が多いようである。あるいは塗り物や木地の皿も使われた。桃山時代には陶器の皿がしだいに生産を増し、織部(おりべ)・志野(しの)などの窯には名品が生まれたが、なお貴重品であり、一般には素焼の小皿が主であった。

 陶磁器の皿が普及するのは江戸時代になってからのことである。九州の有田(ありた)焼は、その製品の大半が皿で、大皿(径1尺)、中皿(5~7寸)、小皿(3寸)という大きさの基準があり、これが全国的な皿の大きさの基準になった。このほか、とくに北九州において盛んに生産され、「皿山」という地名を残す所が多い。全国的には瀬戸、九谷(くたに)、薩摩(さつま)などが主産地であった。一方では国産品とは別に、中国からの輸入品が高級品として珍重された。

[森谷尅久]

 皿は食事には欠かせないものの一つである。もともとは手のひらにのせたり、木の葉、薄く削った木片などが使われ、現在でも、手のひらに漬物をとってのせ、茶を飲むとか、ホオノキの葉、ササの葉、ハランなどを皿がわりに使うこともある。日常食器としての皿は、料理を盛るとか、取り分けるのが目的で、目的別の食器としての皿は、かなり種類が多い。日本では、とくに料理の一種ごと別々の皿に盛る風習が強いので種類が多い。まとめて料理を入れる大皿から、中皿、小皿、とり皿、調味料を入れるおてしょ、焼き魚を入れる細長い皿や、形も円形だけでなく、角形、多角形のものがある。西洋皿では、肉皿、パン皿、スープ皿、小皿といったものがあり、耐熱性のグラタン皿のような特殊なものもある。また、各自が取り分けることが多く、大皿がよく使われる。このほか、ケーキ皿、飲み物用カップの受け皿などがある。中国料理は、大皿からいきなり箸(はし)でとって食べるか、自分の小皿にとることが多い。皿の材質としては陶磁器が多く、このほかガラス、金属(アルミニウムステンレスなど)、プラスチック、紙など多くのものが使われる。皿には、白、色付き、絵のついたもの、飾りにくふうしたものなどさまざまであり、特殊なものとしては、金属(銀など)に彫刻を施したものや、大皿で模様や彩色の美しい高知県の皿鉢(さわち)など非常に豪華なものもある。

河野友美

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改訂新版 世界大百科事典 「皿」の意味・わかりやすい解説

皿 (さら)

食物を盛る浅く平らな器。他の食器などをのせる台としても用いられる。中国では比較的大きく深い皿を盤,小皿は碟と呼び,日本でも古くは〈さら(佐良,沙羅)〉と呼んで〈盤〉の字をあてており,のち〈皿〉の字も用いるようになった。今日,〈皿〉と書く場合はおもに陶磁器を指し,木製品や金属製品に対しては〈盤〉も使われる。英語では大皿をプレートplate,小皿をディッシュdish,大型平皿をプラッターplatter,受皿をソーサーsaucer,灰皿や盆などをトレーtrayと呼んで区別している。

 皿の起源は明確ではないが,食器として主要な役割を担うようになるのは比較的新しく,日本では奈良時代以降のことである。今日でも太平洋の島嶼にみられる未開社会では,木の葉や平らな石を食器として用いる例があって,これらが皿の起源とされることが多い。《日本書紀》神武紀には大嘗祭にカシワの葉を綴り合わせた〈葉盤(ひらで)〉をもって神饌を供えることが書かれている。また上賀茂神社などに,やはり祭祀用神饌具として葉盤を用いる伝統がある。一方,すでに縄文時代の遺跡から,わずかながら皿形の土器が出土しているが,縄文時代を通じて土器は鉢と壺を基本的なセットとし,農耕社会となる弥生時代に至って食生活の変化を物語るように土器の基本的種類は増大するものの,ここでも皿はほとんどみられない。皿の出土例が急速に現れるのは,平城宮址などからの出土例をみると8世紀になってからで,それらはむしろより深い器であるや坏(杯)(つき)からの変化と考えられる。先の〈葉盤〉も,葉を利用した原初の記憶を残すとするより,神聖な器として日常的な器物とことさら区別されたものと考えるべきであろう。

 平城宮址からは〈盤〉の墨書をもつ皿も出土しており,《正倉院文書》また正倉院宝物から,奈良時代には器の大小,素材,形態による区別が行われていたことも明らかである。大盤,小盤,片盤,花盤,後盤などの名が残るとともに,磁皿と呼ばれる二彩や緑釉,白釉の皿,金属や漆器の皿も伝存している。さらに平安時代はじめの《延喜式》では,土盤,木盤,陶盤,瓷(じ)盤,銀盤,朱漆盤,黒漆盤,高盤,枚(ひら)盤,水盤,粥(かゆ)盤など,素材や形態に加え用途による分類もなされている。

 しかしこうした盤や皿は庶民にまで浸透していたのではなく,彼らの間では鉢,杯と高杯(たかつき)が主要な器で,陶磁器の生産が急速に高まり器種も豊富になる近世まで,普及しなかった。この間,皿の形態は高台のない平底から,成形後に高台をつける〈つけ高台〉へ,さらにろくろの普及によって成形とともに高台をも削り出す〈削り高台〉へと変化する。16世紀末から朝鮮の陶工が渡来し,また中国やヨーロッパ諸国との交通によって食生活にも変化が及び,茶道の隆盛も加わってさまざまの形態の皿が大量に作られるようになった。織部陶にみる型を用いた角皿,志野陶の額絵皿なども生まれている。なかでも肥前の有田焼,加賀の九谷焼などではろくろ技術も高度になって見事な大皿がひかれ,華麗な染付や色絵磁器を焼き,前者はヨーロッパへも渡っている。また佐賀鍋島藩の藩窯鍋島焼は,その製品の大部分が皿で,大皿(径1尺),中皿(5~7寸),小皿(3寸)という規格も整い,やがて皿の大小の規準はこれに準ずることとなった。有田などは豪華な製品ばかりでなく日常食器としても大量の皿を焼き,皿屋窯が陶磁窯の代名詞ともなった。

 今日では皿は日本人の食生活でも主要な位置を占める器となり,また西洋料理の習慣もとり入れられて,大小や角,丸,扇面などの形態ばかりでなく,パン皿,スープ皿,グラタン皿など用途を限定した皿も使われている。材質も陶磁器を中心にガラス,金属,プラスチック,紙などさまざまである。なお食器以外に壁掛皿や額皿などのインテリア,灰皿やペン皿など特殊な用途のものもある。
食器
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

普及版 字通 「皿」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音] ベイ
[字訓] さら

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
平皿の形。〔説文〕五上に「の用なり。象形。豆と同」とあり、「讀みて猛(まう)の(ごと)くす」という。〔顔氏家訓、音辞〕に古今の音の異なる例としてこの条を引く。周祖の〔問学集〕に、当時の汝南の方言音であろうとしている。

[訓義]
1. さら、飲食の器。
2. 器のおおい。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕皿 サラ・ウツハモノ

[熟語]
皿器・皿金
[下接語]
器皿・金皿・次皿

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

食器・調理器具がわかる辞典 「皿」の解説

さら【皿】

食物を盛る平たく浅いうつわ。◇洋食器では「プレート」ともいう。

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