出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
皿よりは深く,椀よりは浅い,口の広く開いた容器。石,金属,陶磁,漆塗(木)製などがある。広口の縄文土器のうち,深い筒形のものを深鉢,截頭円錘形や半球形の浅い器を浅鉢と呼ぶが,深鉢はおおむね弥生土器の甕(かめ)に相当する。僧が用いる食器を鉢(はつ)といい,〈はち〉の語はこの鉢多羅(はつたら)(サンスクリットのパートラの音写)を略したものといわれる。奈良時代における鉢の代表的遺品に金銅鉢(鉄鉢),奈良三彩鉢(正倉院),𡑮(乾漆),鉢(東京国立博物館)などがあり,形体は底が丸く,上部の口縁が内側にややせばめられている点が共通している。これらは法事などに用いられたものが多いと思われる。平安前期には高台がつく一般的な形の鉢が須恵器,瓷器などにみえ,《延喜式》には神前の供器として陶鉢,土師(はじ)鉢,齏(あえ)鉢などがあげられている。鎌倉期の遺品として特徴的なものは根来(塗)の鉢である。底に繰形の足がつくものもある。一般に陶磁器製の食器が普及するのは近世以降で,それ以前,あるいは江戸期でもおもに白木や漆塗の鉢が使われていた。桃山時代から江戸初期にかけて各地で特色のある陶器が生み出されたが,なかでも織部陶の角鉢や提梁のある手鉢などは,漆器を模したと思われるような独特な器形をもつすぐれた作例である。さらに江戸時代の有田磁器は皿とともに鉢が多く,径20cm前後で円形,多角形,花形など種類も多い。これらは大量生産のために型による成形も行われた。鉢には高台の高い台鉢,入れ子となった重鉢(かさねばち),菓子鉢,すり鉢,火鉢など,形状や用途により多種ある。
執筆者:上田 敬二
出家者の用いる食器のこと。応器,応量器ともいう。サンスクリットのパートラpātraの音写。詳しくは鉢多羅(はつたら)という。〈応(量)器〉は,法に応ずる,また1人の食量に応ずる器の意味である。鉢は出家者の最も基本的な所持物である六物(ろくもつ)の一つで,その形,大きさ,材質,取扱方に細かい規定があった。形はおおむね半球状で,材料は鉄または土(素焼)に限られていた。石は仏のみの所有とされ,木は外道(げどう)(仏教以外の修行者)の用いるものとして,金銀などのぜいたく品とともに出家者(比丘)には禁止されていた。大きさは必ずしも一定していないが,いずれも数l程度ははいる比較的大きなものである。ただし,今日の禅宗などでは,木地に漆塗の五つ程度から成る組碗式の小さな鉢が用いられている。
執筆者:岩松 浅夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
皿よりは深く、瓶(へい)よりは口が広く、壺(つぼ)よりは浅く開いた容器で、食物、水などを入れる。石、金属、陶磁、木製などがある。鉢のような口の開いたやや深めの容器は、すでに縄文・弥生(やよい)式土器にも多くみられ、登呂(とろ)遺跡からは木鉢も出土している。ハチの語は、梵語(ぼんご)Pātraの音訳「鉢多羅(はつたら)」の略で、インドでは食器を意味し、本来、僧侶(そうりょ)が托鉢(たくはつ)で施しを受けるのに持った鉄鉢(てっぱつ)のことであった。奈良時代の正倉院宝物には焼物鉢、ガラス鉢、鍮錫(ちゅうしゃく)鉢、木鉢などがみえ、平安時代の『延喜式(えんぎしき)』には神前の供器として、陶(すえ)鉢、土師(はじ)鉢、虀(あえ)鉢などがみえている。しかし一般に陶磁器製の食器が普及したのは近世以降で、明治までは、もっぱら白木や漆塗りの木鉢が使用されることが多かった。鉢の外面は、文様や絵模様を描いて装飾としたものも多く、形態は円形がもっとも多く、また四角、六角、八角、隅(すみ)切り、花形などいろいろあった。鉢の底には、湾曲したままのもの、平底のもの、高台のあるものなどがあった。なお鉢には、高台の高い台鉢、外側の切り立った鉦(しょう)鉢、段のついた甲(かぶと)鉢、入れ子になる重(かさね)鉢、婚礼道具とされた挽(ひき)鉢のほか、平鉢、鼓(つづみ)鉢、菓子鉢、飯(めし)鉢、すり鉢、火鉢、植木鉢など、形状や用途による種類も多い。
[宮本瑞夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…雅楽では,現在では舞楽のときに舞具として小型の銅拍子を使用する(《迦陵頻(かりようびん)》)。仏教音楽では〈どうばち〉ともいい,あるいは〈はち〉といって〈鉢〉の字を当てることもある。かなり大型のものを用いるが,声明曲(しようみようきよく)《三十二相》などには小型のものを用い,これを〈羯鼓(かつこ)〉と呼ぶ。…
…修行者が鉢(はち)を飛ばして布施を得る説話をいう。鉢は〈三衣一鉢(さんねいつぱつ)〉というように,僧の携えるべき什器の一つで,木や鉄で作られ,供養を受けるための容器であった。…
…石,金属,陶磁,漆塗(木)製などがある。広口の縄文土器のうち,深い筒形のものを深鉢,截頭円錘形や半球形の浅い器を浅鉢と呼ぶが,深鉢はおおむね弥生土器の甕(かめ)に相当する。僧が用いる食器を鉢(はつ)といい,〈はち〉の語はこの鉢多羅(はつたら)(サンスクリットのパートラの音写)を略したものといわれる。…
…塔周囲の四門や欄楯(らんじゆん)(玉垣)には仏伝図や本生図の精細な浮彫が施されている。クシャーナ朝のガンダーラの塔になると,方形の基壇上に円筒形の鼓胴部を幾壇にも高く積み,頂上に小さな覆鉢を置き,その平頭上に立てた傘蓋は底部が大きく,層を重ねるごとに先細りとなり,全体に垂直的な上昇感のある塔に変化する。方形基壇や鼓胴部には,仏伝,仏像,装飾文の浮彫をめぐらすものがある。…
※「鉢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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