民部(読み)ミンブ

デジタル大辞泉 「民部」の意味・読み・例文・類語

みん‐ぶ【民部】

古代中国の官名。後周代に設置され、人民衆寡を計ることをつかさどった。唐代以降、戸部と改称された。
民部省」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「民部」の意味・読み・例文・類語

みん‐ぶ【民部】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中国、後周の頃に設けられた官名。大司徒卿の属に民部中大夫を置き、司徒の教を受け籍帳の法を以て人民の衆寡を計ることをつかさどったもの。隋の初め、度支尚書があってこの職を兼ねたが、唐代、太宗李世民の名を避けて戸部(こほう)と改め、以後はこれによった。〔文献通考‐職官考・歴代尚書・戸部尚書
  3. みんぶしょう(民部省)」の略。〔令義解(718)〕
  4. みんぶきょう(民部卿)」の略。
    1. [初出の実例]「一、民部娘かほよ、嵐富八」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)三)
  5. 女官の呼名。また、民部丞などを父親にもつ女房の称。
    1. [初出の実例]「またおはするは誰そと問ふ民部のおもとなめり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)空蝉)

かき‐べ【民部・部曲】

  1. 〘 名詞 〙 大化前代において臣(おみ)、連(むらじ)伴造(とものみやつこ)国造(くにのみやつこ)、村首(すぐり)等の豪族大和政権貢納奉仕することを前提に、管理することを認められていた人々。天武朝ののち廃止されて公民とされた。豪族の名を上に付けて蘇我部、大伴部のように呼ばれた。かき。かきのたみ。ぶきょく。
    1. [初出の実例]「是に土師連の祖、吾笥(あけ)、仍て摂津国の来狭々(くささの)村・山背国の内の村・俯見(ふしみの)村・伊勢国の藤形(ふしかたの)村・及丹波但馬因幡の私(わたくし)の民部(カキヘ)を進る」(出典:日本書紀(720)雄略一七年三月(前田本訓))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「民部」の意味・わかりやすい解説

民部(かきべ)
かきべ

「たみべ」とも読む。664年(天智称制3)の甲子(かっし)の改革で設定された身分階層の一つ。663年8月における朝鮮半島の白村江(はくすきのえ)での敗北後、翌年2月に発令された内政改革の一環として、家部(やかべ)とともに諸氏に設定された。その性格・意義については諸説があるが、大化改新によって公民になった民衆への私民的支配の復活や、また後の律令(りつりょう)制の帳内(ちょうない)・資人(しじん)的な従者の源流と推測するよりも、なお広く残っていた諸氏の私民的支配に、国家権力による統制を加え、その認定・登録を図ったものとすべきであろう。民部・家部は670年の庚午年籍(こうごねんじゃく)に載せられ、壬申(じんしん)の乱を経た675年(天武天皇4)、家部よりも身分の高かった民部(部曲(かきべ))は公民化された。

[野村忠夫]


民部(たみべ)
たみべ

民部

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「民部」の解説

民部 みんぶ

1657-? 江戸時代前期-中期の仏師。
明暦3年生まれ。元禄(げんろく)11年多賀朝湖(たが-ちょうこ)(英一蝶(はなぶさ-いっちょう))とともに幕政を批判したとして伊豆(いず)八丈島に流された。在島中釈迦如来坐像などおおくの仏像をつくり,一部は宗福寺に現存する。宝永6年ゆるされて江戸城内紅葉山御用仏師となる。別名に遊扇。

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改訂新版 世界大百科事典 「民部」の意味・わかりやすい解説

民部/部曲 (かきべ)

部民(べみん)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の民部の言及

【氏姓制度】より

…ただ,そのなかでは,朝廷に出仕して,職務の名を負う品部(しなべ),王名,宮号を負う名代(なしろ)(名代・子代),屯倉(みやけ)の耕作民である田部(たべ)などの先進的な部民に,共同体のなかの戸を単位に編成されるもの,6世紀には,なんらかの籍帳に登載されるものが現れたことが予測され,比較的はやく氏姓を称するにいたったのであろう。それにたいし,豪族の支配下にあった民部(かきべ)は,在地の族長を介して,共同体のまま部に編入し,族長をへて貢納させる形のものが多く,各戸に豪族名を付して,某部・某人部などと称することはなかったと思われる。まして,地方の族長のもとには,部民化されず,族長の私的支配下にある農民が多く存在したはずであり,このような共同体的な農民は部民制と関係なく,したがって氏姓を称する機縁はまったくなかったとみられよう。…

【部曲】より

…主と客の関係を起源とする部曲制は,土地所有関係が強い契機となる農奴制と同一視できない面をもっている。【谷川 道雄】
[日本]
 古代において,豪族の領有する民を民部,部曲と記し,カキベ,カキノタミとよんだが,カキとは区画することで,領有者の名を付して,その集団を支配することを意味し,もともと地方で家をなし,自営の農業を営んでいたものを,集団として中央貴族の支配下に編入したものである。大化改新によって,部曲は公民とされ,氏姓をあたえられ,戸籍に編付された。…

【部民】より

…このように下部組織を形成する伴や部を〈トモ〉ともいい〈ベ〉ともいうのは,百済の官司の諸部の制度を輸入して朝廷の政治組織を革新したとき,朝廷の記録をつかさどっていた百済の帰化人=史部(ふひと∥ふひとべ)が,本国の習慣に従い,漢語の〈部〉とその字音の〈ベ〉を,日本の〈伴〉の制度に適用したために生じたとみるのが正しいであろう。 さらに,このような官司制を統轄した臣・連・伴造らの畿内貴族は,その経済的基盤として,部曲・民部(かきべ∥かきのたみ)の領有を公認され,天皇・后妃・皇子もおのおのの宮の経営や子女の養育の資として,名代・子代(なしろこしろ)を設定した。これらの部民は各地域の農民集団をさし,地方の国造(くにのみやつこ)にひきいられ,主家に力役や貢納の義務を負ったが,名代はさらに国造の一族から舎人(とねり),采女(うねめ)などを天皇・后妃の近侍者として差し出す慣習があった。…

※「民部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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