『法華経(ほけきょう)』を講賛する法会。606年(推古天皇14)に聖徳太子が岡本宮で当経を講じたのが最初といわれ、以後教理の研究とともに護国三部経の一つとして重視され、さらに観音(かんのん)信仰と並行して流布するに至った。746年(天平18)3月には良弁(ろうべん)により四恩のために東大寺羂索(けんじゃく)堂で創始された当法会は、平安時代中期に講堂に移されて開講されたが、南都諸大寺の学僧を請(しょう)じて研学竪義(りゅうぎ)を設けた大会であった。また817年(弘仁8)に藤原冬嗣(ふゆつぐ)が父内麿(うちまろ)の菩提(ぼだい)を祈って興福寺南円堂で9月末日から7か月間法華会を行い、藤原氏北家一門の隆盛を祈願し、興福寺の屈指の大会となったし、833年(天長10)8月には大安寺においても勅会(ちょくえ)として行われるに至った。後三条(ごさんじょう)天皇の御願寺(ごがんじ)である円宗(えんしゅう)寺では1072年(延久4)に創始され、のち天台宗三会(北京(ほっきょう)三会)の一つに数えられ、僧綱補任(そうごうぶにん)への階梯(かいてい)となった。延暦(えんりゃく)寺においては、ことに『法華経』との関係が密接であったから、最澄(さいちょう)の命日にあたる6月に法華会を修してその菩提を祈り、世に六月会と称せられたし、967年(康保4)には座主良源(ざすりょうげん)によって、宗祖天台大師慧恩(えおん)のために法華大会が行われ、世に霜月会(しもつきえ)と称せられ、学僧育成のための竪義の制が設けられた。そのほかに空海の菩提を追修して洛西高雄(らくせいたかお)の神護(じんご)寺にも行われたことが『三宝絵詞(さんぼうえことば)』によって判明する。これらの法華会は宗祖や先祖の功績をしのび『法華経』を所依(しょえ)として学僧育成のために設けられた法会であったのに対して、『法華経』8巻を8人・8座で講賛し、故人の菩提を祈る法華八講と称する仏会がある。796年(延暦15)に大安寺勤操(ごんそう)が同朋(どうぼう)7人とともに亡友栄好(えいこう)の母のために平城左京東山の石淵(いわぶち)寺で菩提を追修したのに始まるという。この石淵寺八講はのち東大寺天地院、笠置(かさぎ)寺などにも伝わり、流布したことが『玉葉(ぎょくよう)』などでも判明する。
[堀池春峰]
《法華経》の講讃が行われる法会。日本では606年(推古14)聖徳太子が岡本宮で講じたのを初例とし,746年(天平18)東大寺羂索院で聖武天皇・同皇后のため良弁(ろうべん)らが催してより勅会となり,毎年3月16日を恒例の日とした。興福寺では817年(弘仁8)藤原冬嗣が父内麻呂追善のため南円堂ではじめて修し,後三条天皇の御願寺である円宗寺では1072年(延久4)に始まり,勅会のなかでも規模が大きく荘厳華麗を極めた。延暦寺では967年(康保4)天台座主良源が広学竪義(りゆうぎ)(竪義)と称する法華会を始め,法華大会(だいえ),叡山霜月会の名でも知られ,1216年(建保4)より勅会となった。戦国期一時中止になったが,江戸時代に復興し,現在は5年に1度大講堂で修せられる。故事にのっとって論義を行う者を竪者(りゆうしや)/(りつしや)といい,その論義の判定をなす権威者を探題と称し,一山の長老があたる。法華八講・法華十講なども法華会と称するが,これは講座の数によって名づけられたものである。
執筆者:村山 修一
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…日本では598年(推古6)4月に聖徳太子が,諸王・豪族を集めて法華・勝鬘(しようまん)の2経の講義を行ったことが知られ,仏教の興隆流布とともに各種の法会が催された。経論の主旨を究明しようとした維摩(ゆいま)会,最勝会,唯識会,俱舎(くしや)会,華厳会,法華会をはじめ,国家の安泰を祈る仁王(にんのう)会,大般若会や,釈迦の入滅を追慕し報恩の意を表す涅槃(ねはん)会は,やがて一宗一寺の祖師信仰と結びついて,祖師の御影(みえ)像や堂を造って忌日に法事を行うにいたった。中世には祖先の追善冥福を祈る法会も一般化し,ときに斎(とき)(食事)の席を設けるなどして今日に至っている。…
※「法華会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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