青森県の西部、津軽平野の南方にそびえる独立峰。「いわきやま」とも読む。山頂は中津軽郡岩木町に含まれる。鳥海火山帯に属する円錐状の休火山で、山頂は三峰よりなる。中央の峰は中央火口丘にあたり、標高一六二五・二メートル。南西の峰は
正保二年(一六四五)の津軽郡之絵図に岩木山とみえるが、この名称がいつから使用されたかは明らかでない。古くは「
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青森県西部,津軽平野南西部に位置する二重式火山。山容が円錐形で,平地に孤立してすそ野をのばすところから津軽富士の別名がある。山頂は三つの峰に分かれているが,巌鬼(がんき)山と鳥海山は外輪山の一部であり,岩木山はその後にできた中央火口丘で,標高1625m。外輪山のうち,西半部はその後の爆発で破壊されて地形が明瞭でないが,東半部は比較的明瞭に保存されている。岩木山の火山活動は1863年(文久3)の噴火が最後となっていたが,1970年に山頂西側の赤沢で硫化水素ガスの噴出がみられた。山麓には岳,湯段,百沢,三本柳などの温泉があり,また1965年には西側山腹の八合目まで延長約10kmの津軽岩木スカイラインが完成したため観光地として発展している。南麓の百沢には,津軽一帯の信仰を集める岩木山(いわきやま)神社があり,旧暦8月1日には五穀豊穣を感謝する〈お山参詣〉の行事が行われる。
執筆者:水野 裕
岩木山は津軽の総氏神的な存在であり,修験道の山,ごみそと呼ばれる巫者の行場のほか,山荘太夫伝説にちなむ山としても知られている。一方では農耕と深いかかわりをもち,岩木山の残雪の模様によって農作業をすすめたり,豊凶を占う。こうした農耕神的性格は,また,有名なヤマカゲと呼ぶ登拝習俗においても,山中の種蒔苗代という小池に米や銭を紙に包んで投げ入れ,その沈みぐあいによって豊凶を占ったという。ヤマカゲと呼ぶ登拝習俗は津軽全域にわたって行われ,初参りの習俗とも結びついている。一般に登拝の1週間前から村々の産土(うぶすな)神社にこもり,水垢離(みずごり)をとって別火精進をした後,各自が御幣をもち,笛,太鼓などではやしながら登拝する。〈ヤマカゲに行かぬ男は一人前ではない〉といわれるように,この習俗には成人儀礼としての性格が顕著に認められる。また登拝習俗には,一般の氏子入りに相当するような幼少期の初参りもみられる。
執筆者:宮本 袈裟雄
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青森県西部、津軽平野の南西部にある円錐(えんすい)形の火山。標高1625メートル。山容が富士山に似ているところから津軽富士の別名がある。鳥海火山帯(ちょうかいかざんたい)に属する複式火山で、外輪山は山頂付近に発達し、その中に中央火口丘がそびえる。外輪山の西半部は爆発で欠損し、東半部に鳥海山(1502メートル)、巌鬼山(がんきさん)(1456メートル)がある。中央火口丘が狭義の岩木山である。標高500メートル以上は比較的急傾斜をなし、大小数個の爆裂火口や硫気孔があって、山体を深くえぐる谷頭となっている。500メートル以下が裾野(すその)で、大部分は火山性の泥流堆積物(たいせきぶつ)と火山性扇状地の堆積物である。噴火は記録のうえでは21回あり、最後の噴火は1863年(文久3)3月23日である。山麓(さんろく)一帯は藩政時代には馬の牧場や草刈り場として利用され、第二次世界大戦後は開拓が行われたが、二、三の開拓地を除いては十分な成果をあげていない。1965年(昭和40)に山麓の嶽(だけ)温泉から八合目まで自動車道岩木山スカイラインが完成し、鳥海山噴火口までリフトも架設され、容易に登山ができるようになった。山麓に嶽のほか、湯段(ゆだん)、百沢(ひゃくざわ)の温泉があり、弘前(ひろさき)市百沢の岩木山神社(いわきやまじんじゃ)は津軽一円の信仰を集めている。津軽の人々は古くから岩木山を信仰し、天候の変化を山にかかる雲の動きで予知するなど、日常生活のよりどころとしている。「お山参詣(さんけい)」の行事は国の重要無形民俗文化財に指定され、旧暦8月1日(前後3日間)、山麓の集落ごとに若者たちを中心に、御幣や幟(のぼり)を立てて豊作祈願のため山に登る。
[横山 弘]
『宮城一男著『津軽の岩木山』(1971・森重出版)』
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…旧国幣小社。顕国玉(うつしくにたま)神,多都比売(たつひめ)神,宇賀能売(うかのめ)神,大山祇(おおやまづみ)神,坂上苅田麻呂(さかのうえのかりたまろ)命をまつり,桓武朝に坂上田村麻呂が創建したと伝えるが,本来は岩木山(いわきさん)自体を神とする信仰に発し,顕国玉神は国魂(くにたま)神で主祭神である。室町時代には北畠氏が,戦国時代には大浦氏が社殿を造営したといい,津軽(大浦)氏が代々崇敬し社殿を修造した。…
※「岩木山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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