日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯梨浜」の意味・わかりやすい解説
湯梨浜(町)
ゆりはま
鳥取県中部、東伯(とうはく)郡にある町。2004年(平成16)東伯郡の羽合(はわい)、東郷(とうごう)の2町と泊村(とまりそん)が合併して成立。北は日本海に臨み、町の中央部北西寄りに東郷池がある。町域の北西端、北栄(ほくえい)町との境を天神川が北流して日本海に注ぐ。町の東部から南部を占める山地丘陵地帯を水源とする舎人(とねり)川、東郷川、羽衣石(うえし)川などの中小河川が東郷池に流入。池の北西部からは橋津(はしづ)川が流出し、日本海に注いでいる。東郷池の周辺から天神川と橋津川に挟まれた一帯に平地(羽合平野)が開ける。北部を国道9号、青谷(あおや)・羽合道路(国道9号の自動車専用道路)が横断し、北西部を国道179号が南北に走る。北東―南西方向にJR山陰本線が通じる。平地では稲作のほか、ブドウ、イチゴ、メロンなどの果物、丘陵地帯ではナシの栽培が盛ん。北東部、日本海に突き出た甲亀(こうき)山(87メートル)西麓の泊漁港は県中部の漁業拠点の一つで、東麓の石脇(いしわき)には鳥取県の栽培漁業センターがある。東郷池畔のはわい温泉、東郷温泉、海岸部に点在するハワイ、宇野、石脇の各海水浴場などが観光拠点となっている。新町名は温泉(湯)、特産の二十世紀ナシ(梨)、白砂青松の海岸線(浜)という町の特色を表したもの。天神川右岸砂丘上の長瀬高浜遺跡から出土した埴輪一式は国の重要文化財。東郷池北岸の橋津古墳群、南岸の北山古墳は国指定史跡。伯耆一宮とされる倭文(しどり)神社境内にある平安時代の経塚(伯耆一宮経塚の名称で国史跡)から出土した遺物一式は国宝。幕末に鳥取藩が橋津川河口部に築造した海岸防備の橋津台場跡は国指定史跡。江戸時代後期から河村郡の大庄屋を勤めた尾崎氏の庭園は国指定名勝。中世には、羽衣石城に拠った南条氏が勢力を誇ったが、現在、7月20日の東郷池の水郷祭で踊られる浪人踊(県指定無形民俗文化財)は羽石城落城、南条氏滅亡の折に、死者の魂を供養するために始められたという念仏踊りである。なお、旧羽合町が1996年にアメリカ合衆国ハワイ郡と結んだ姉妹都市提携は湯梨浜町成立後も継続。面積77.94平方キロメートル、人口1万6055(2020)。
[編集部]