「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」で、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者をいう(民法15条)。
1999年(平成11)の民法改正(2000年4月1日施行)などにより成年後見制度が導入される以前は、判断能力が不十分な者を保護する制度として、後見、保佐の2類型から成る禁治産・準禁治産制度が設けられていた。しかし、この制度では対象者が限定されており、判断能力の低下が比較的軽度の者は対象外であったことなどから、あまり利用されないのが実情であった。そこで新しい成年後見制度では、自己決定権の尊重の理念に沿った柔軟かつ弾力的な保護が図れるよう、保護の対象範囲が広げられ、前記2類型に新たに「補助」類型が加えられた。
被補助人は、後見、保佐に至らない程度、すなわち、軽度の精神上の障害(軽度の認知症・知的障害・精神障害・自閉症など)をもった者を対象としており、原則として鑑定は不要であるが診断書は必要とされている。
家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、ほかの類型の後見人・後見監督人、検察官、市町村長の請求によって、補助開始の審判を行う。ただし、本人の自己決定を尊重する観点から、本人以外の者の請求の場合は本人の同意が必要とされており(同法15条)、家庭裁判所は職権による補助開始を行うことはできない。補助開始が決定されると、家庭裁判所は職権で被補助人を保護する補助人を選任する(同法16条)。保護の内容・範囲については、被補助人の自己決定・選択に委ねられる。補助人には、被補助人が申立てにより選択した特定の法律行為について、「代理権」または「同意権と取消権」の一方または双方が付与される。
補助人に同意権が付与される場合、被補助人は、補助人の同意を要する事項について行為能力が制限されるという意味で、制限行為能力者とよばれる。同意を要する行為について、被補助人の利益を害する可能性がないのにもかかわらず補助人が同意しないときは、被補助人は家庭裁判所に対し補助人の同意にかわる許可を求めることができる(同法17条)。本人の判断能力が回復した場合は、本人、配偶者等、補助人等は家庭裁判所に補助開始の審判の取消しを請求することができる(同法18条)。
従来の禁治産者・準禁治産者に関しては、法令上、多数の資格制限(欠格事由)が規定されており、これに対する国民の心理的抵抗感が制度の利用の障害となっていたことを考慮して、ノーマライゼーションの理念(高齢者や障害者を隔離するのではなく、ともに暮らす社会こそがノーマルだとする考え方)などの観点から、被補助人については資格制限を設けていない。なお、取引の安全の保護の観点から、補助人に対する取消権・代理権の付与を伴う補助の開始決定については登記所に登記されるが、戸籍簿への記載は行われない。
[池尻郁夫]
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