仏教経典が地獄に関して説く〈火車(かしや)〉の和訓で,猛火の燃えている車。罪人を地獄で責めたり,あるいは罪人を地獄に迎えるのに用いる。初期の経典には〈火車輪〉〈火車炉炭〉などと罪人の責め具として出ているが,のちには命終のとき罪人を地獄に迎える乗物として説かれている。《観仏三昧海経》第五観相品には阿鼻(あび)地獄に18種の小地獄があり,その一種に18の火車地獄があるとして,火車で罪人を迎え,火車で呵責する種々相が描写されている。《地獄草紙》(東京国立博物館所蔵彩色模本)には〈またこの地獄の罪人を猛火熾燃なる鉄車にのせて,鬼おほく前後に囲遶して,城のほかにめぐりありくことあり,罪人身分やけとほりて,死生いくかへりといふことをしらず〉の詞書とともにその絵が描かれている。また火車は,文学上は煩悩(ぼんのう)の炎や業苦にさいなまれる状態を示すたとえに用いられているが,一休の狂歌に〈貧乏な人の世界は火の車質屋米屋の鬼に責められ〉とあるように,はやくから生計がきわめて苦しいことを指すようになっている。
執筆者:伊藤 唯真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…仏教経典が地獄に関して説く〈火車(かしや)〉の和訓で,猛火の燃えている車。罪人を地獄で責めたり,あるいは罪人を地獄に迎えるのに用いる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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