(読み)ねむらせる

精選版 日本国語大辞典 「眠」の意味・読み・例文・類語

ねむら‐・せる【眠】

〘他サ下一〙 (「眠る」の使役形の比喩的用法)
① 殺す。
※野獣死すべし(1958)〈大藪春彦〉「『ねむらせろ』というのがリーガン命令であった」
感情などを押し殺す。押し込める。
※影の部分(1964)〈小川国夫〉「あの時すでにいとこに対するやましさを眠らせたいという気持の動きと」
本来機能が働かない状態にする。
ノリソダ騒動記(1952‐53)〈杉浦明平〉八「百万の金はすべての関係者を眠らせるに足りたのである」

ねむら・す【眠】

〘他サ五(四)〙 =ねむらせる(眠)〔モダン語辞典(1930)〕
魔都(1937‐38)〈久生十蘭二一「見馴れない混血児(あひのこ)がやってきて、ぜひとも殺(ネム)らしてもらひたい人があるといふ」

みん【眠】

〘名〙 蚕が桑の葉を食べるのをやめる、脱皮のための静止期間をいう。多く、何回目の眠であるかを示すのに用いる。「一眠」「三眠」など。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕

ねぶた・し【眠】

〘形ク〙 ⇒ねぶたい(眠)

ねむ・し【眠】

〘形ク〙 ⇒ねむい(眠)

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デジタル大辞泉 「眠」の意味・読み・例文・類語

みん【眠】[漢字項目]

常用漢字] [音]ミン(慣) [訓]ねむる ねむい
ねむる。ねむり。「安眠永眠仮眠休眠催眠睡眠惰眠冬眠不眠

みん【眠】

が脱皮の前に、摂食をやめて静止する状態。また、その期間。一眠・二眠・三眠と数え、ふつう四眠まである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「眠」の意味・わかりやすい解説


みん

カイコ幼虫が摂食を停止して静止している状態をいう。カイコの幼虫は1か月足らずの間、クワを食べて脱皮を繰り返すが、眠に近づくと摂食量が少なくなり、脱皮の前にはクワを食べるのをやめて眠の状態に入り、新しい外皮などの形成をして脱皮のための準備をする。普通、飼育されているカイコの品種は4回の眠を行う。眠はおよそ24時間続き、四眠がもっとも長い。眠によって一齢から五齢までの発育段階に分けられる。眠が3回または5回のものもある。眠の回数は遺伝が関係しているが、環境条件にも左右され、低温や光の明条件、良好な栄養条件下のほうが三眠になりやすい。眠についている間は運動を停止しているために硬化病などにかかりやすい。これを防ぐため、糞(ふん)やクワの食い残しを取り除いたりするが、これを除沙(じょさ)という。

[小野山敬一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「眠」の意味・わかりやすい解説


みん
molting

蚕が脱皮の準備を始める直前から終るまで,食桑をやめ静止する時期をいう。脱皮の回数は品種によって3眠,4眠,5眠とあり,4眠蚕が実用品種として最も普及している。眠の時間は第4眠中が約 24時間で最も長く,次いで3眠,1眠,2眠の順。春蚕期は夏蚕期よりも長い時間を要する。眠中時間の大部分は脱皮の準備に費やされ,単に蚕体の外皮だけでなく,消化管で外胚葉由来の部分,気管などの外皮も脱ぎ替えられる。

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百科事典マイペディア 「眠」の意味・わかりやすい解説

眠【みん】

カイコが脱皮の前に活動を止め,体の前部をもち上げてじっと眠ったようになる現象。他の昆虫についても用いることがある。いわば脱皮の準備のための期間で,休眠とは関係がない。活動性はないが,代謝は活発。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【眠性】より

…昆虫の幼虫が脱皮のために静止する状態を眠といい,幼虫期間になん回眠につくか(脱皮するか)という性質を眠性という。元来はカイコが脱皮の前に少量吐糸し体を固着させ,あたかも眠っているような状態になることからこう呼ばれたが,現在では昆虫一般にも使われることがある。…

※「眠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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