(読み)カイコ

デジタル大辞泉の解説

かい‐こ〔かひ‐〕【蚕】

《「飼い蚕(こ)」の意》
カイコガ幼虫。孵化(ふか)したては黒く小さいが、のち白い芋虫となり、体長7センチくらい。桑の葉を食べ、ふつう4回脱皮し、繭を作ってさなぎになる。繭から生糸がとれ、育つ時期により春蚕(はるご)夏蚕秋蚕などとよぶ。養蚕が全国に普及したのは近世以降。家蚕(かさん)。 春》「逡巡(しゅんじゅん)として繭ごもらざる―かな/虚子
蚕を飼うこと。養蚕を始めること。 春》「髪結うて花には行かず―どき/太祇

こ【蚕】

かいこ。「春―(ご)」
「たらちねの母が飼ふ―の繭隠(まよごも)り」〈・二九九一〉

さん【蚕〔蠶〕】[漢字項目]

[音]サン(漢) [訓]かいこ こ
学習漢字]6年
〈サン〉カイコガの幼虫。「蚕糸蚕食蟻蚕(ぎさん)原蚕養蚕
〈かいこ〉「蚕蛾蚕棚
〈こ(ご)〉「毛蚕(けご)春蚕(はるご)
[難読]沙蚕(ごかい)蚕豆(そらまめ)草石蚕(ちょろぎ)天蚕糸(てぐす)天蚕(やままゆ)

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大辞林 第三版の解説

かいこ【蚕】

〔「飼い蚕」の意。普通、幼虫のことをいう〕
チョウ目カイコガ科の蛾。開張約4センチメートル。全身灰白色、はねに褐色の帯の入る品種もある。胴の太い割にははねが小さく、飛べない。幼虫は体長7センチメートルほどの白いイモムシで、桑の葉を食べる。繭から絹糸をとるため数千年前から中国で飼育され、のちに世界中に広まり多くの改良品種ができた。日本では春蚕はるごをはじめ夏蚕なつご・秋蚕あきごなどと称して農家での養蚕が盛んであった。カイコガ。家蚕かさん[季] 春。

こ【蚕】

かいこ。 「母が養ふ-の繭隠まよごもり/万葉集 2495

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精選版 日本国語大辞典の解説

かい‐こ かひ‥【蚕】

〘名〙 (「飼い蚕」の意で、古来、飼育されるところからいう。かいご(卵子)とは別語)
① カイコガ科のガ。はね開張約四センチメートル。雌は白色で、触角は灰色。雄は灰色で触角は黒色。蛹(さなぎ)から羽化して数日間で交尾、産卵して死ぬ。何千年間もの累代飼育によって習性が変化し、人の管理下で飼育しないと生命を維持することができず、成虫は飛翔力を失った。かいこが。蚕蝶(かいこのちょう)
② ①の幼虫。絹糸をとるために飼育される。卵から孵化(ふか)した直後は黒色で毛深く毛蚕(けご)または蟻蚕(ぎさん)と呼ばれる。桑を食べて発育する期間(齢)と、食べずに脱皮の準備をする期間(眠)とを交互に繰り返し、第五齢で成熟する。第二齢以後の幼虫は不透明な白色で不規則な黒い細線のあるものが多く、熟蚕になると体が透明になり絹糸腺から糸を吐いて体のまわりに繭をつくる。蛹(さなぎ)は羽化して成虫のガとなって繭から出る。幼虫は絹糸をとるために飼育され、品種も多く、原産地によって日本種、中国種、欧州種、熱帯種などに分けられるほか、種々の分類がある。家蚕(かさん)。御蚕(おこ)。《季・春》
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「顱(ひたひ)の上に粟生(な)れり。眉の上に(カヒコ)生れり」
③ 蚕を飼うこと。蚕飼(こが)い。養蚕(ようさん)。《季・春》
※俳諧・落日庵句集(1780頃か)「ことしより蚕はじめぬ小百姓」
[語誌]古くは単に「こ(蚕)」で、「万葉‐二四九五」に「たらつねの母が養子(かふこの)まよごもりこもれる妹を見むよしもがも」とあり、「日本書紀‐神代上」の「養蚕」に「こかひ」の古訓がある。「かいこ」の語形は、書紀の古訓に見えるが、一般化したのは中古以降と思われる。

こ【蚕】

〘名〙 かいこ。《季・春》
※万葉(8C後)一二・二九九一「たらちねの母が養ふ蚕(こ)の繭(まよ)隠りいぶせくもあるか妹に逢はずして」
[語誌]蚕は、古く一音節語「こ」であった。「万葉」には「かふこ(飼ふ蚕)」が三例見られ、これが中古の「かひこ」を経て現代の「かいこ」となる。また、「万葉」には「くはこ(桑蚕)」が一例見られる。このように、「かふ」や「くは」を伴って表現されるのは、籠・子・粉・海鼠などの同音異義語との混同を回避しようとしたためといわれる。

さん【蚕】

〘名〙 カイコ。
※続春夏秋冬(1906‐07)〈河東碧梧桐選〉春「蚕の神の御鬮の占のよかりけり〈碧童〉」 〔韓非子‐内儲上〕

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