石炭ガス
せきたんがす
coal gas
広義には石炭に関連してできるガスの総称であるが、狭義には石炭の高温乾留で得られるガスをさす。1872年(明治5)横浜に点じられたガス灯に使われたのは石炭ガスであり、これが日本での工業的利用の始まりであった。初期はガスレトルト(乾留用加熱容器)を用いて製造されていた。現在の高温乾留で得られるガスはほとんどコークス炉で製造されるものなので、コークス炉ガスcoke oven gas(COG)ともよばれる。水素50%、メタン30%を主成分とし、一酸化炭素、窒素、重炭化水素、二酸化炭素を少量ずつ含む。発熱量は1立方メートル当り17~21メガジュール程度である。昭和30年代なかばまでは都市ガスの主原料として用いられたが、昭和50年代になるとそのほとんどが製鉄所内の燃料や発電用として用いられるだけとなった。
燃料電池自動車が今後の水素エネルギー時代に普及することを期待して、石炭ガスからの水素製造が始まっている。ガス中の水素を圧力スイング吸着法(PSA法。PSA=pressure swing adsorption)により分離・精製して高純度水素(99.9999%)を製造するもので、日本では2004年(平成16)から小規模ながら実際の水素ステーションで供給されている。
[富田 彰]
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石炭ガス
せきたんガス
coal gas
石炭を高温乾留して得られるガス。ほとんどがコークス炉によってつくられる。成分は製造条件によって多少異なるが,水素 50%,メタン 30%,一酸化炭素およそ8%となっており,発熱量は約 6000 kcal/m3 。都市ガスとして利用されるほか工業燃料や化学工業用水素源として用いられ,石炭ガス精製時の副産物も利用価値が出ている。なお環境問題などを背景に,都市ガス生産は液化天然ガスを原料とする方式が 70%以上を占め,石炭系ガスは 2.2%まで減少している。
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せきたん‐ガス【石炭ガス】
石炭の高温乾留によって得られるガス。成分はふつう水素約50パーセント、メタン約30パーセント、一酸化炭素約8パーセントなどからなり、精製して燃料に使用。
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せきたんガス【石炭ガス coal gas】
一般には石炭から得られるガスをいうが,とくに石炭を高温乾留したときに得られるガスをいう。後者のガス組成はおもにメタンおよび水素であり,ほかに一酸化炭素,二酸化炭素,エチレンその他の炭化水素などが含まれる。発熱量はおよそ4000~5000kcal/m3であり,都市ガスとして,あるいは工場燃料として用いられる。【冨永 博夫】
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