私鋳銭(読み)しちゅうせん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

私鋳銭
しちゅうせん

民間で私的に鋳造した銭貨和同開珎が発行された翌年の和銅2(709)年,政府は私鋳を禁じ,犯人の刑を杖(じょう)200と規定し,同 4年には極刑の斬としたが,天平勝宝5(753)年にいたって一等を減じて遠流とした。10世紀半ば,銭貨の官鋳が終わって以後,絹が主要通貨の役割を果たしたが,平安末期には中国銭が大量に流入するようになり,物価や租税にかかわる問題が起こった。そのため治承3(1179)年,明法博士中原基広が,宋銭は私鋳銭と同じであるから通用を停止すべしと主張して,建久4(1193)年に宋銭使用が禁止されるなど,しばしば中国銭の排斥がはかられた。しかしその後,貨幣経済がますます発展して,16世紀末までに大量の中国銭が流通するとともに,私鋳銭も活発につくられて,撰銭が盛んとなった。江戸幕府は寛永13(1636)年に寛永通宝を発行して幣制を統一し,同 20年には私鋳者を死罪と定め,私鋳を厳禁した。

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デジタル大辞泉の解説

しちゅう‐せん〔シチウ‐〕【私鋳銭】

民間で鋳造した銭貨。古代、律令政府発行の皇朝十二銭以外は厳しく禁止された。中世には宋銭明銭をまねたものが多くつくられ、貨幣流通上混乱したので、幕府や戦国大名によって撰銭令(えりぜにれい)が出された。→撰り銭

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百科事典マイペディアの解説

私鋳銭【しちゅうせん】

民間において公許を得ずに鋳造された銭貨。貨幣の不足と悪貨の流通の下で生ずる。日本での私鋳銭取締りは711年にみられ,皇朝(こうちょう)十二銭の流通を阻害するという理由で,平安中期まで数度にわたり取締令が公布された。中世では悪銭の一種をさした。→撰銭(えりぜに)/鐚銭(びたせん)
→関連項目明銭

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世界大百科事典 第2版の解説

しちゅうせん【私鋳銭】


[古代]
 日本古代では律令政府の鋳造した〈官銭〉に対して民間で鋳造された銭貨をいう。律令政府は銭の鋳造発行を独占し,地金より高い法定価値を付与して支払手段として財政的利益を得ていた。したがって私的な鋳造銭を使用することができればその利が大きいことが私鋳銭の誘引となった。760年(天平宝字4)の万年通宝発行の勅では,誇張もあるが私鋳銭が流通銭の半ばにまで達したと述べている。このような私鋳銭の頻発は,法定価値の下落とともに律令政府に新銭の発行をくり返させる原因となった。

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大辞林 第三版の解説

しちゅうせん【私鋳銭】

政府法定の貨幣に対し、民間で鋳造した貨幣。特に、古代における皇朝十二銭以外の偽造貨幣をいうことが多い。 ⇔ 官銭

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

私鋳銭
しちゅうせん

民間で私的に鋳造された銭貨。奈良・平安時代に発行された皇朝十二銭には地金の銅よりも高い法定価値が付与されていたため、私鋳銭による利はきわめて大きかった。このため私鋳銭は盛行し、万年通宝(まんねんつうほう)発行(760)の勅では通用銭の半分に達したとさえ記されている。私鋳銭は、銭貨の鋳造発行を独占し、高い法定価値を付与した「官銭」を支払いに用いて利益を得る律令(りつりょう)政府の銭貨政策を揺り動かし、法定価値下落の一因ともなった。律令政府による新銭発行の繰り返しは、私鋳銭と法定価値下落に対処するための処置であった。したがって私鋳銭に対する刑罰は厳しく、大宝(たいほう)律の規定は不明だが、その刑では軽いとして711年(和銅4)首謀者は斬(ざん)、共犯者は没官(もっかん)、家口(かこう)(家族)は流罪の重刑に改められている。この厳罰は、753年(天平勝宝5)首謀者は遠流(おんる)に、780年(宝亀11)共犯者は徒(ず)3年、家口は徒2年半に軽減されるまで維持された。なお、中世では国家権力による銭貨鋳造は行われず、おもに中国渡来銭が流通したが、南北朝時代ごろからは、私鋳銭もかなり流通した。16世紀後半、大隅(おおすみ)国加治木(かじき)(鹿児島県姶良(あいら)市)で鋳造された宋銭(そうせん)、明銭(みんせん)の模造私銭は著名である。[栄原永遠男]

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世界大百科事典内の私鋳銭の言及

【貨幣】より

…洪武通宝・永楽通宝・宣徳通宝などは代表的な明銭であった(宋元銭)。室町時代には中国の官鋳制銭のほかに,日本製の模造銭や私鋳銭が造られ,中国製の精銭と並んで日本製の鐚銭(びたせん)が使用された。そのため撰銭(えりぜに)の現象がみられるようになり,標準的な中国銭に対して日本製の銭貨は資質の悪い減価された悪銭として区別された。…

※「私鋳銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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