箱崎(読み)はこざき

精選版 日本国語大辞典 「箱崎」の意味・読み・例文・類語

はこざき【箱崎】

  1. [ 一 ] 福岡市東区の地名。博多湾に面し、古来、博多港と対する要港。元寇の古戦場。九州大学、筥崎宮の所在地。
  2. [ 二 ] 江戸日本橋箱崎町のこと。町名の由来は、[ 一 ]の筥崎宮に因むという。
  3. [ 三 ] 謡曲。脇能物。世阿彌作。壬生忠岑が九州箱崎の八幡宮を訪れ、その神霊に導かれて、昔、神功皇后戒定慧(かいじょうえ)の三学の妙文を納めて箱崎の松の根元に埋めたという、黄金の手箱を拝す。

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日本歴史地名大系 「箱崎」の解説

箱崎
はこざき

宇美うみ川下流の左岸に位置し、博多湾に面している。筥崎宮が鎮座し、本来宮は筥崎、地名などは箱崎と記すのが原則らしいが、史料上は混用されている。「後拾遺往生伝」巻上(上人安尊)によると、応徳―寛治(一〇八四―九四)頃に「筑前国内山寺」(現太宰府市にあった有智山寺)の住僧安尊が「山中之草庵」を辞して「筥崎之松窓」に移っており、この地を別所とした可能性がある。大江匡房の「筥埼宮記」によると筥崎宮は那珂なか郡にある八幡大菩薩の別宮で、「戒定恵」を三つの箱に入れて埋めたという伝承から当地を「筥崎」と称するようになったという。

中世の箱崎は筥崎宮の門前町として発展したのみならず、貿易・商業・軍事的にも重要な地域であった。仁平元年(一一五一)九月二三日に官廷で行われた対問によれば、筥崎・博多で大宰府の目代宗頼の命によって、検非違所別当安清・同執行大監種平・季実らが五〇〇余騎の軍勢を引連れて大追捕を行った。彼らは宋人王昇後家をはじめとする一千六〇〇家の資財・雑物を運び取り、筥崎宮に乱入して神宝物を押取るなどの乱暴を働いた(文治二年八月一五日「中原師尚勘文案」宮寺縁事抄/鎌倉遺文一)。この背景には日宋貿易をめぐる筥崎宮と大宰府の主導権争いがあったとみられる。


箱崎
はこざき

[現在地名]石巻市八幡町一丁目

まき山西麓の突出部。箱崎山は古来みなと村の景勝の一つとして知られ、別称は五松ごしよう山。箱崎山丘陵端に石灰岩洞窟三ヵ所が確認されていたが、昭和一二年(一九三七)から同一三年の県道造成工事および採石事業によって壊滅した。かつて箱崎山山頂に拝幣志おかみへし神社があったといい、延喜式内大社、祭神は高皇産霊命・応神天皇。「三代実録」貞観元年(八五九)正月二七日条に「正五位下勲五等拝幣志神社」とあり、従四位下になっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「箱崎」の意味・わかりやすい解説

箱崎
はこざき

福岡市東区にある文教、商業地区。由緒ある八幡宮(はちまんぐう)の一つである筥崎宮(はこざきぐう)の所在地として知られ、1910年(明治43)九州大学の創設以来学生街としても発展してきた。現在の国道3号付近にあった海岸線は二度にわたる埋立てによって後退し、有名であった千代ノ松原も筥崎宮境内や九州大学構内におもかげをとどめるにすぎない。埋立地は倉庫工場が立地し、流通センターの役割を果たしている。JR鹿児島本線と市営地下鉄箱崎線が通じ、地下鉄は貝塚駅で西日本鉄道貝塚線と接続している。また、福岡都市高速1号の箱崎入口がある。

[石黒正紀]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「箱崎」の意味・わかりやすい解説

箱崎
はこざき

福岡県北西部,福岡市東区,博多湾に面する市街地の一部。 1911年九州帝国大学が開設され,以来大学を中心に発展した。宇佐 (大分県) ,石清水 (京都府) とともに三大八幡宮の1つといわれる筥崎宮 (本殿など重要文化財) がある。かつては美しい千代ノ松原の海岸が続いたが,69年からの埋立て造成 (1973完成,284万m2) によって姿を消し,工場,冷蔵倉庫,貨物駅などが進出している。 JR鹿児島本線箱崎駅がある。

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百科事典マイペディア 「箱崎」の意味・わかりやすい解説

箱崎【はこざき】

福岡県福岡市東区の一地区。1910年の九州大学開設以来,大学町として発展。鹿児島本線,市営地下鉄2号線が通じ,筥崎(はこざき)宮がある。工場地・住宅地化が進む。

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世界大百科事典(旧版)内の箱崎の言及

【瀬戸内海】より

…明治以降は鉄道の発達によって沿岸航路が廃止されたところもあり,大型の汽船が普及してからは小規模な港町の多くは衰退した。第2次大戦前までは沿岸独特の習俗として,家族が単位となって船上で生活のいっさいをまかなう家船(えぶね)が,現在の広島県因島市箱崎,三原市能地(のうじ)などを根拠地として内海各地で多くみられた。また大陸伝来のものと考えられる独特の石ぶろ(蒸ぶろの一種)が,古くから沿岸西部,とくに山口県で多くつくられ,住民の医療目的を兼ねたいこいの場となっていたと思われる。…

※「箱崎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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