(読み)フン

デジタル大辞泉 「紛」の意味・読み・例文・類語

ふん【紛】[漢字項目]

常用漢字] [音]フン(呉)(漢) [訓]まぎれる まぎらす まぎらわす まぎらわしい まがう
ごたごたと入り乱れる。物事がもつれる。「紛糾紛争紛紛内紛繽紛ひんぷん
入りまじってわからなくなる。「紛失
[名のり]お・もろ
[難読]気紛きまぐ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「紛」の意味・読み・例文・類語

まぎれ【紛】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「まぎれる(紛)」の連用形名詞化 )
    1. まぎれること。まじり合うこと。入りまじって見わけにくいこと。判別がつかなくなること。
      1. [初出の実例]「山かぜにさくらふきまきみだれなん花のまぎれに君とまるべく〈遍昭〉」(出典:古今和歌集(905‐914)離別・三九四)
    2. ある事につけこんで何かを行ないうる機会、また事の勢いにまかせて何かを行なうような状態。
      1. [初出の実例]「おほとなぶらまゐれなどいふまぎれに、はひよりて」(出典:落窪物語(10C後)二)
    3. 心が他のことにひかれること。
      1. [初出の実例]「昔物語などせさせて聞き給ふに、少しつれづれのまぎれなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    4. まちがい。
      1. [初出の実例]「ふとしもあらはならぬまぎれ、ありぬべし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    5. 多忙。とりこみごと。混乱。とりまぎれ。
      1. [初出の実例]「御作法御進退など、事多かる御事にて、御習礼など、かねてよりいみじき御まぎれにぞ侍し」(出典:竹むきが記(1349)上)
    6. 囲碁や将棋で、局面を複雑にさせる打ち方、またはさし方。
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙
    1. ( 心情を表わす形容詞語幹、動詞連用形に付いて ) 不快な心情の高まりを転嫁してまぎらすことを表わす。「に」を伴って副詞的に、「…のあまり、前後のわきまえもなく」などの意に用いることが多い。「苦しまぎれ」「腹立ちまぎれ」など。
    2. ( 体言に付いて ) まぎれて、見わけにくいことを表わす。
      1. [初出の実例]「といての名の姓がどれも王なり。王まぎれがしたぞ。どちか本やらう」(出典:玉塵抄(1563)一)

まぐれ【紛】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「まぐれる(紛)」の連用形の名詞化 )
  2. まぎれること。まぎれ。
    1. [初出の実例]「炉の梅花香に鶯のまぐれ鳴」(出典:俳諧・うたたね(1694))
  3. 偶然そうなること。思いがけず、ある結果になること。まぐれあたり。
    1. [初出の実例]「たまにはまぐれにもいい方を選びさうなものだが」(出典:転生(1924)〈志賀直哉〉六)

まぎらわしまぎらはし【紛】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「まぎらわす(紛)」の連用形の名詞化 ) まぎれるようにすること。まぎらかし。
    1. [初出の実例]「世ばなれて眺めさせ給ふらん、御心のまぎらはしには、さしも驚かせ給ふばかり、きこえ馴れ侍らば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)

まがわまがはし【紛】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「まがう(紛)」の形容詞化 ) まぎれやすい。まちがいやすい。まぎらわしい。
    1. [初出の実例]「まがはしや花吸ふ蜂の往還り〈園風〉」(出典:俳諧・猿蓑(1691)四)

まぎら【紛】

  1. 〘 名詞 〙 まぎらわすこと。ごまかし。
    1. [初出の実例]「重き心を軽口に、蒲団被って行く振りも、涙くろめしまぎらなり」(出典:浄瑠璃・心中重井筒(1707)中)

まぎろし【紛】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 まぎらわしい。怪しい。疑わしい。
    1. [初出の実例]「まぎろしや・精進の有る給仕人」(出典:雑俳・絹はかま(1701))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「紛」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

(旧字)
10画

[字音] フン
[字訓] みだれる・まじる・さかん

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(分)(ふん)。に分散するものの意がある。〔説文〕十三上に「馬尾の韜(ふくろ)なり」とあるのは、字の一義。もと糸の乱れることをいい、紛乱・紛糾の意に用いる。

[訓義]
1. みだれる、もつれる。
2. まじる、まぎれる、むすぼれる。
3. 多い、多く、さかんなさま。
4. ゆるむ、くらい、かわる。
5. 馬尾をつつむふくろ。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 尓己也加尓(にこやかに) 〔名義抄 チル・ヲブクロ・イキドホリ・ミダル・ホコビル・マガフ・マジハル・オホシ 〔字鏡集〕 イキドホル・ヲフクロ・アフ・マス・モロ・チル・マガフ・オホシ・ユルシ・ミダル・トホザカル・マジハル・ホヒコル

[語系]
phiunはbiun、紊miunと声近く、みな雑乱のさまをいう。繽phien、(頻)bienは双声の語。

[熟語]
・紛・紛委紛怡・紛郁紛紜・紛紛云・紛員紛衍紛烟・紛紛華紛岐・紛起・紛議・紛糾・紛劇紛喧紛更・紛垢紛訌紛梗紛淆紛囂・紛紛錯・紛雑・紛失・紛奢・紛若紛糅・紛如紛冗紛繞紛擾・紛縟・紛塵・紛紛舛・紛然・紛争・紛拏・紛・紛濁・紛呶紛沓・紛・紛屯・紛・紛飛・紛披・紛霏・紛・紛敷・紛紛・紛溶・紛羅・紛乱・紛離・紛綸・紛猥・紛惑
[下接語]
解紛・糾紛・群紛・喧紛・交紛・囂紛・糸紛・思紛・時紛・衆紛・世紛・俗紛・内紛・佩紛・白紛・繽紛・敷紛・放紛・奔紛

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android