素読(読み)ソドク

デジタル大辞泉 「素読」の意味・読み・例文・類語

そ‐どく【素読】

[名](スル)書物、特に漢文で、内容理解二の次にして、文字だけを声に出して読むこと。すよみ。「論語素読する」
[類語]斜め読み拾い読み抜き読み走り読み流し読み速読素読み読み飛ばす読み流す

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「素読」の意味・読み・例文・類語

す‐よみ【素読】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 書物の意味・内容を考えないで、ただ機械的に文字を音読すること。そどく。
    1. [初出の実例]「前座が修羅場の素読(スヨミ)をするうちは騒々しくって寝られねへが」(出典西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉六)
  3. 原稿と引き合わせながらではなく、校正刷りを読みながら校正すること。〔造本印刷(1948)〕

そ‐どく【素読】

  1. 〘 名詞 〙 書物、特に漢籍の意味・内容を考えることなく、ただ文字だけを音読すること。そよみ。すよみ。
    1. [初出の実例]「難経内経の素読(ソドク)も済むか済ぬに」(出典:洒落本・風俗八色談(1756)一)

そ‐よみ【素読】

  1. 〘 名詞 〙そどく(素読)
    1. [初出の実例]「四書一部のそよみやうやうしけるが」(出典:人鏡論(1487))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「素読」の意味・わかりやすい解説

素読 (そどく)

古典原文を幾度となく繰り返して読み,それを書物を用いないで誤りなく言うことができるようになる学習法の一つ。日本でこの方法がひろく行われて学習の初歩として普及したのは江戸時代においてである。とくに武家子弟漢学の初歩としてこの方法をとったのであって,武家の学校や漢学塾での学習の初めは漢籍の素読であった。それでこれらの教育機関では初歩の生徒のために素読席が設けられ,素読の個人教授を担当する教師がいた。《小学》《孝経》や〈四書五経〉などが素読のために用いられたので,当時の武家の子弟はこれらを暗記していた。ヨーロッパにおいても古典や聖書などはこれを暗唱できるまで読み習ったので,同じ学習法をとったとみられる。素読の方法によるとその意味は理解できないでも原文のままに暗唱するので,児童の発達をもととした近代の学校ではこの方法はほとんど用いない。しかし素読には原典の文をその身につけていて,いかなるときにでもこれを用いることができるという特別な効果を現すので,今日でも素読の必要を主張する人がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「素読」の意味・わかりやすい解説

素読
そどく

漢文学習の一方法。漢文学習法には、文字の順序に従って音読みする直読と、日本語に読み下す訓読とがあり、素読はこの訓読の一法であるが、その意味や内容は二の次とし、訓読口調に熟達して、文章を暗唱するように読むものである。

 素読は中世以来盛んになった方法で、とくに江戸時代には漢文を学習する幼若の初学者の間で盛行した。寺子屋などで教材として多く用いられたのは、『論語』『孟子(もうし)』『大学』『中庸』のいわゆる四書で、これらの教材の意味、内容を深く考えることなく、ただ口調のおもしろさに応じて暗唱し、読了する。記憶力の旺盛(おうせい)な幼若初学者には、漢文口調のおもしろさは格別で、それにつられての熟達も速く、素読はそれなりの効果があったが、明治以後の漢文学習には、そののんびりとした性格から、すっかり廃れた。「読書百遍、意自(おのずか)ら通ず」というのはこの漢文素読法の賞揚に通じる。

[田所義行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android