組踊(読み)クミオドリ

デジタル大辞泉 「組踊」の意味・読み・例文・類語

くみ‐おどり〔‐をどり〕【組踊(り)】

数人が組んで踊ること。また、その踊り。
二つ以上の踊りを組み合わせて構成する踊り。
18世紀以来、琉球(沖縄)で伝承されてきた、せりふ・音楽・舞踊からなる古典劇。享保4年(1719)中国の冊封使さくほうしを歓待するため、踊奉行おどりぶぎょう玉城朝薫たまぐすくちょうくんが創作上演したのが始まり。ユネスコ無形文化遺産に登録されている。

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共同通信ニュース用語解説 「組踊」の解説

組踊

沖縄の優雅な音楽に乗せ、鮮やかな衣装でせりふ、所作、舞踏を繰り広げる音楽劇。琉球王国の「踊奉行」だった玉城朝薫たまぐすく・ちょうくんが、中国皇帝の使者「冊封使」を歓待するために創作し、1719年に首里城で上演したのが始まり。1972年に沖縄の本土復帰と同時に、国の重要無形文化財に指定された。沖縄県を中心に「組踊上演300周年」として、11月には首里城で記念公演を開催する。

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精選版 日本国語大辞典 「組踊」の意味・読み・例文・類語

くみ‐おどり‥をどり【組踊】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 二人、または三人で組になって踊ること。
    1. [初出の実例]「はじめにて・むらびゃうしなるくみ躍」(出典:雑俳・住吉おどり(1696))
  3. 数種類の踊りを組み合わせて一つの踊の舞台を構成したもの。
  4. 沖縄の伝統芸能の一つ。せりふ、歌、舞踊からなり、沖縄古来の演劇的な神事に、能や狂言を取り入れたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「組踊」の意味・わかりやすい解説

組踊
くみおどり

18世紀初めに沖縄で創始され、今日まで伝承されている楽劇。古くから中国と親交の深い沖縄では、国王がかわるたびごとに皇帝の使者が多数来島し、厳粛な戴冠(たいかん)の儀式と、それに伴う盛大な宴が催された。そのときの余興芸能として数々の芸能が組まれ、御冠船踊(おかんせんおどり)と称されたが、これは踊り中心の、小童の群舞がほとんどであった。これに対して組踊は、沖縄に古くから伝わる音楽と舞踊を総合的に取り入れ、一つの物語を形成した戯曲になっている。創始者は玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)で、1719年(享保4)の尚敬王冊封(さくほう)式典後の重陽(ちょうよう)の宴において、首里城内の特設舞台の御冠船踊に上演されたのが最初である。そのときの演目は『鶴亀二児復父仇古事(つるかめにじちちのあだをふくするのこじ)(二童敵討(にどうてきうち))』と『鐘魔事(しょうまのこと)(執心鐘入(しゅうしんかねいり))』の2番であったが、その後『銘苅子(めかるしい)』『女物狂(おんなものぐるい)』『孝行の巻』の3番を完成、組踊の確立をみせた。この5曲は後の組踊と区別して玉城の「五番」と称されている。玉城は組踊を書き上げるまでに5回も薩摩(さつま)や江戸へ出張しており、滞在中に人形浄瑠璃(じょうるり)や能狂言歌舞伎(かぶき)などを見て、創作への足掛りをつくったといわれている。彼は素材を沖縄の史実や古伝説からとり、「能と歌舞伎の中間に位置する」組踊という画期的なジャンルの誕生にこぎ着けたのであった。

 組踊は音楽、舞踊、台詞(せりふ)の3要素からなるが、とくに音楽のもつ意義は大きく、古くは「組踊を聞きに行く」といったほどである。内容は、創作当時の思想を反映して、忠、孝、節、義が強力に表現され、ほとんどが「めでたしめでたし」で終わる展開になっている。現在50種ほど残っているが、今日でも演じられているのは約半数にしかすぎず、前述の玉城の五番をはじめ、平敷屋朝敏(へしきやちょうびん)の『手水(てみず)の縁(えん)』、田里朝直(たさとちょうちょく)(1703―1773)の3番(『義臣物語』『万歳敵討(まんざいてきうち)』『大城崩(おおぐすくくずれ)』)中の前2組、高宮城親雲上(たかみやぐすくぺえちん)の『花売の縁』、久手堅(くでけん)親雲上の『大川敵討(おおかわてきうち)』、辺土名(へんとな)親雲上作といわれる『忠臣身替の巻』、平敷(へしき)親雲上作といわれる『巡見官(じゅんけんのかん)』、作者不詳の『久志(くし)の若按司(わかあじ)』や『姉妹敵討』などである。

 組踊は、本来は能楽式舞台を使って宮廷で上演されてきたが、今日では多目的ホールで3間(約5.5メートル)四方を使って、民間の舞踊研究所単位で演じられている。舞台の上手に三味線、大小の太鼓、笛、琴、胡弓(こきゅう)などの地方(じかた)と地謡(じうたい)が並び、伴奏し謡う。登場人物はおもに下手から出入りし、韻文体の詞章で台詞を交わし、舞踊を主とした様式的な演技表現をする。昔は役者はすべて男性であったが、今日では女役は女性が演じることが多い。また、組踊は廃藩置県以後に宮廷芸能から脱して村々へ伝播(でんぱ)し、沖縄各地の村踊りで盛んに演じられてきた。現在も旧暦8月には観客と演者が一体となって楽しんでいる。1972年(昭和47)沖縄の本土復帰にあたって国指定の重要無形文化財(総合認定)となり、2010年(平成22)ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。2003年には組踊音楽太鼓で島袋光史(しまぶくろみつふみ)(1920―2006)が、2005年には組踊音楽歌三線(うたさんしん)で城間徳太郎(しろまとくたろう)(1933― )が、2006年には組踊立方(たちかた)で宮城能鳳(みやぎのうほう)(1938― )が、2011年には組踊音楽歌三線で西江喜春(にしえきしゅん)(1940― )が、2017年には組踊音楽太鼓で比嘉聰(ひがさとし)(1952― )が重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。

[當間一郎]

『當間一郎著『組踊選集』(1968・沖縄風土記社)』『服部四郎・仲宗根政善・外間守善編『伊波普猷全集3 琉球戯曲集』(1974・平凡社)』『矢野輝雄著『組踊への招待』(2001・琉球新報社)』『矢野輝雄著『組踊を聴く』(2003・瑞木書房)』『勝連繁雄著『組踊の世界――私の見方・楽しみ方』(2003・ゆい出版)』

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百科事典マイペディア 「組踊」の意味・わかりやすい解説

組踊【くみおどり】

沖縄の伝統楽劇。国指定無形文化財。中国からの冊封使を歓待するために,1719年,玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)(1684年―1734年)が踊奉行として,〈おもろ語〉や地方古謡を織り混ぜ新作したのに始まる。三線を伴奏にしながら歌とせりふで物語を展開する。50数編が現存するが,朝薫の手になる《執心鐘入(しゅうしんかねいり)》《銘苅子(めいかるしい)》《女物狂(おんなものぐるい)》《孝行の巻》《二童敵討》の〈五番〉が代表作。これらはたとえば《執心鐘入》が《道成寺》の,《銘苅子》が《羽衣》の,《二童敵討》が《小袖曾我》ほかの翻案といってよく,能,狂言さらには浄瑠璃,歌舞伎などに取材している。他に,平敷屋朝敏(へしきやちょうびん)(1711年―1734年)の異色の恋愛物である《手水の縁》が著名。
→関連項目国立劇場無形文化遺産保護条約琉球文化

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「組踊」の意味・わかりやすい解説

組踊
くみおどり

沖縄の舞踊劇。老人踊,女踊,二才踊(にせおどり),雑踊など単独の端踊(はおどり)に対し,それらを組み合わせた劇的展開のある舞踊楽劇。物語は,登場人物の会話と幕内の抒情的な歌謡で進められ,この歌を地に踊りも見せる。楽は大小太鼓,笛,三線,琴。中国の冊封使(さくほうし)をもてなすために,踊奉行の玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)が創作したといわれ,享保4(1719)年に初演され,おもに貴族の子息が演じた。本土の狂言歌舞伎などの影響が曲目や演出に認められるが,劇構成は中国の戯曲に近い。『執心鐘入』『女物狂』『二童敵討』『花売の縁』などの曲が著名で,それぞれ能の『道成寺』『桜川』『小袖曾我』『芦刈』の影響が考えられる。50曲ほどの台本が残っており,今日では沖縄各地に伝播したものが祭りの際に演じられるほか,民間の舞踊団に継承されている。1972年国の重要無形文化財に指定。2010年世界無形遺産に登録された。(→沖縄舞踊

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改訂新版 世界大百科事典 「組踊」の意味・わかりやすい解説

組踊 (くみおどり)

沖縄の歌舞劇。18世紀に中国からの冊封使を歓待するために宮廷で踊られた,冠船踊の一種。時の躍奉行(おどりぶぎよう)であった玉城朝薫(たまぐすくちようくん)(1684-1734)によって作られた。琉球の古事を題材にしてこれを歌謡と舞踊で構成するが,日本の能楽や歌舞伎の影響もみられる歌舞劇となっている。朝薫以外の人による作品もあり,現在47の組踊の台本が残っている。明治以降は民間の人々によって伝承されている。
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事典 日本の地域遺産 「組踊」の解説

組踊

(沖縄県)
無形文化遺産」指定の地域遺産(2010(平成22)年)。
組踊は、せりふ、音楽、所作、舞踊によって構成される歌舞劇であり、首里王府が中国皇帝の使者である冊封使を歓待するために、踊奉行であった玉城朝薫(1684~1734)が創作したもの。1719(享保4)年初演された。以後、士族の子弟によって演じられたが、明治以降は市井の舞台で演じられ受け継がれている。重要無形文化財(芸能)

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

日本文化いろは事典 「組踊」の解説

組踊

組踊は沖縄に古くから伝わる伝統芸能です。音楽、踊り、台詞で構成されている沖縄独自の歌劇です。昭和47年の沖縄本土復帰と共に、国の重要無形文化財に指定されました。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の組踊の言及

【沖縄[県]】より

…もともと薩摩役人たちをもてなす宴席で歌われたという。(4)劇文学 奄美の諸鈍芝居(しよどんしばや),狂言,沖縄の組踊(くみおどり),狂言,人形芝居,歌劇,宮古・八重山の組踊,狂言などが伝わっている。組踊は,沖縄の言語,文学,芸能をもって総合的に構成された独自の楽劇である。…

【琉球語】より

…また(11)は語頭のヤ行子音をdに変えている(例:dama〈山〉)。
【琉球語の文献資料】
 韻文の資料は《おもろさうし》,組踊(くみおどり)の脚本,琉歌集の3種がおもなものである。また《混効験集》(1711)は《おもろさうし》のための古辞書である。…

※「組踊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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