経験批判論(読み)けいけんひはんろん(英語表記)Empiriokritizismus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

経験批判論
けいけんひはんろん
Empiriokritizismus

19世紀末,主としてドイツの哲学者 R.アベナリウスによって唱えられた学説。古来からの哲学上の基本問題,すなわち主観と客観,意識と存在 (したがって観念論唯物論) ,内的なるものと外的なるものなどの区分を認めない立場に立つ。アベナリウスは,経験内容から個的な主観的なるものを除去していけば,万人にとって普遍的ないわゆる純粋経験が得られ,これによって哲学上の二元論が克服されるとした。論理実証主義に大きな影響を与えた。

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百科事典マイペディアの解説

経験批判論【けいけんひはんろん】

ドイツ語Empiriokritizismusの訳。アベナリウスマッハによって創始された認識論の一つ。一種の実証主義であり,主観と客観の区別などを徹底的に排除して得られる概念を思考経済に従って記述することを認識の根本とした。後の論理実証主義に影響を与える一方,レーニンは《唯物論と経験批判論》(1909年)の中で,その観念論的傾向を激しく攻撃した。
→関連項目実証主義

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世界大百科事典 第2版の解説

けいけんひはんろん【経験批判論 Empiriokritizismus[ドイツ]】

純粋経験に基礎を置く実証主義的認識論の一形態。アベナリウスおよびマッハによって創始され,ペツォルトJ.Petzoldt,ゴンペルツH.Gomperzらによって受け継がれた。影響はおもにドイツ語圏内にとどまったが,イギリスのK.ピアソンにも同様の思想が見られる。物理的事象と心理的事象,主観と客観,意識と存在などの二元論的仮定や,実体,因果などの形而上学的付加物を排除し,その結果得られる純粋に経験的な世界概念を思考経済に従って記述することを認識の目標と考えた。

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大辞林 第三版の解説

けいけんひはんろん【経験批判論】

アベナリウスらによって、一九世紀後半に唱えられた実証主義的哲学。経験内容から形而上学的仮定や個人的要素を除去して主客未分の純粋経験をもとめ、それに基づいて世界像を構成しようとする立場。唯物論と観念論の対立を超えると主張するが、レーニンはこれを一種の主観的観念論であるとして批判する。

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世界大百科事典内の経験批判論の言及

【アベナリウス】より

…1877年ウィンデルバントの後任としてチューリヒ大学教授に招聘され,没年までそこで教鞭をとった。経験批判論の創始者として〈純粋経験〉に基礎を置く徹底した実証主義を唱え,マッハとともに後の論理実証主義の展開に大きな影響を与えた。主著は《純粋経験批判》全2巻(1888‐90)および《人間的世界概念》(1891)であるが,独特の用語と難解な記号法をもって書かれているため,マッハの思想に比べて人口に膾炙(かいしや)しなかった。…

【現象学】より

…そしてそのもとで心理学,社会学,歴史学,言語学など人間諸科学が成立することになるのだが,やがて1890年代に入ると,これら諸科学の内部でも,また一般的な哲学の領域においても,そうした実証主義的風潮への反省ないし反逆がはじまる。哲学の領域では,新カント学派,ディルタイ,ベルグソン,クローチェらの哲学,アベナリウスやマッハの経験批判論がそれであるが,フッサールの現象学もそうした反実証主義の運動のなかから生まれてきたものである。ことに,フッサールが現象学という概念を直接継承するのはマッハからであるから,現象学と経験批判論はこの運動のなかで当初密接に結びついていたと見てよい。…

【思考経済】より

…その源流は中世の〈オッカムの剃刀(かみそり)〉にさかのぼる。19世紀末にマッハおよびアベナリウスが,これを経験批判論の基本原則としたところから一般に広まり,論理実証主義に引き継がれた。現代の科学哲学では,理論の〈単純性の原理〉として言及されることが多い。…

【実証主義】より

…自然科学的認識方法を無批判に人間的事象に適用する当時の支配的な思想傾向が漠然とこの名で呼ばれ,批判されたのである。だが,同じ世紀末でも,マッハやアベナリウスの経験批判論が実証主義と呼ばれるのは,肯定的な意味においてである。彼らは科学的認識からいっさいの形而上学的要素を排除しようと意図する。…

【マッハ】より

…とくに《力学の発達》はニュートン力学の基本概念(時間,空間,質量)に潜む形而上学的性格を剔抉(てつけつ)して若年のアインシュタインに影響を与え,特殊相対性理論を準備したことで知られる。哲学上の主著は《感覚の分析》(1886)および《認識と誤謬》(1905)であり,その基本思想はアベナリウスらとともに経験批判論の名で呼ばれる。彼は旧来の形而上学的カテゴリー(実体,因果など)および物心二元論の仮定を排し,世界を究極的に形づくるのは物理的でも心理的でもない中性的な感性的諸要素(色,音,熱,圧等々)であるとし,これら諸要素間の関数的相互依属関係を思考経済の原則に従ってできるだけ簡潔かつ完全に記述することが科学の任務であるとした。…

※「経験批判論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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