(読み)ヒシ

デジタル大辞泉 「菱」の意味・読み・例文・類語

ひし【×菱/×芰】

ミソハギ科の水生の一年草。池や沼に生え、茎は細長く、泥水中を伸びる。葉は菱状三角形で、葉柄の一部にふくらみがあり、四方に出て水面に浮かぶ。夏、葉の間から短い花柄を伸ばし、水上に白い4弁花を開く。秋にとげのある固い実がなり、果肉は白く、食用 実=秋 花=夏》「―採のはなるる一人雨の中/蛇笏
鉄製で菱の実に似た鋭い角のある武器。地上にまいたりして敵の進入を防ぐ。→鉄菱
文様や紋所の名。菱形をさまざまに図案化したもの。さいわい菱・三蓋菱・松皮菱割菱など。
菱形」の略。
菱縫ひしぬい」の略。
菱根ひしね」の略。

りょう【菱】[漢字項目]

人名用漢字] [音]リョウ(呉)(漢) [訓]ひし
水草の名。ヒシ。「菱花菱形

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「菱」の意味・読み・例文・類語

ひし【菱・

  1. 〘 名詞 〙
  2. ヒシ科の水生一年草。各地の池沼に生える。前年泥中に落ちた果実から芽を出して長い茎を水面にのばし、先端に菱状三角形の葉を多数放射状につける。葉柄は中空でふくれ、浮袋の役割をする。夏、葉腋から出た柄の先に小さな白い四弁花が咲く。果実は扁平で横長のほぼ菱形で両側に鋭いとげがあり、中に一個の種子が含まれる。種子は多肉質の子葉をもち食用になる。漢名、。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「歯並は 椎比斯(ヒシ)なす 櫟井(いちひゐ)の 丸邇坂(わにさ)の土(に)を」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  3. 植物はまびし(浜菱)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
  4. 武器の一種。刺股(さすまた)状の刃に長い柄をつけたもの。
    1. [初出の実例]「若し橛、若し鏘(ヒシ)をもて人を傷けしむ」(出典:大智度論平安初期点(850頃か))
  5. 鉄製で菱の実の形をして、先端をとがらせたとげをつけたもの。戦場や河中に立て、また、まきちらして、敵の進攻を妨げるのに用いる。→鉄菱。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  6. ( 籗 ) 漁具の一つ。柄の先に二股の鉄の刃をつけたもので、魚を突き刺して捕える道具。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. 籗<b>⑤</b>〈和漢三才図会〉
      〈和漢三才図会〉
  7. 紋所の名。菱形を組み合わせなどして図案化したもの。菱持・幸(さいわい)菱・三蓋菱・松皮菱・違菱・四つ割菱・五つ菱などがある。〔装束抄(1577頃)〕
    1. 菱持@三蓋菱@幸菱@松皮菱
      菱持@三蓋菱@幸菱@松皮菱
  8. ひしぬい(菱縫)」の略。
    1. [初出の実例]「練貫の小袖の上に赤糸の鎧の、ひしの板より切捨たるに」(出典:梅松論(1349頃)下)
  9. ひしがた(菱形)」の略。
  10. とがった角をもつ崖。菱根(ひしね)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「菱」の解説

菱 (ヒシ)

学名Trapa japonica
植物。ヒシ科の浮葉性一年草,園芸植物,薬用植物

菱 (ヒシ)

植物。ハマビシ科の一年草,薬用植物。ハマビシの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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