蝸牛(狂言)(読み)かぎゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蝸牛(狂言)」の意味・わかりやすい解説

蝸牛(狂言)
かぎゅう

狂言曲名山伏狂言。太郎冠者(かじゃ)は、主人から長寿の薬にカタツムリ蝸牛)をとってこいと命じられる。ところがカタツムリを知らないので、藪(やぶ)の中にいて頭が黒く腰に貝をつけ、ときには角(つの)を出すと教わって出かける。藪の中で頭に黒い兜巾(ときん)を着けて寝ていた山伏(シテ)を太郎冠者はカタツムリかと思って尋ねる。山伏はあきれるが、からかってやろうと、腰の法螺(ほら)貝を見せたり、篠懸(すずかけ)を角のように差し上げたりして信じさせてしまう。山伏は囃子物(はやしもの)にのって行こうと、太郎冠者に囃させ、「でんでんむしむし」と音頭をとり戯れている。そこへ迎えにきた主人は驚いて、あれは山伏だと教えるが、太郎冠者は囃子物のリズムについ体が動き出してしまう。やがて主人までも引き込まれ、ともに浮かれながら入っていく。以上は大蔵流の筋で、和泉(いずみ)流では、正気づいた太郎冠者と主人を山伏が打ち倒して逃げていく。カタツムリと山伏の連想の奇抜さと、囃子物にのせられるおもしろさが眼目

[林 和利]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例