( ②について ) ( 1 )「彼は学生なり」「これは本である」「光陰矢の如し」などの「学生」「本」「矢」を、これがないと意味をなさないという観点から補語とするもの、さらに「賊を捕える」「文法を教える」などの「賊」「文法」(普通は客語とされる)をも補語に含めるものなど異説がある。
( 2 )学校文法では、橋本進吉の考えに従い、客語や補語を区別せず、一括して連用修飾語として扱っている。
主語(主語・述語),目的語などとともに,文を構成する成分の一つであるが,その内容は各言語,各研究者によりさまざまに異なった定義が与えられている。
そのなかで,われわれに最もなじみ深いのは英語文法の用語としてである。通常,英語文法ではI am a boy.のa boyや,He is rich.のrichを補語と呼ぶ。これはbe動詞を代表とするいくつかの動詞は,主語+動詞では完全な意味を表せず,その後に来て全体を完全にするもの(complement)を必要とするわけであるが,これが補語といわれる。さらに,このように主語にかかわる場合を主格補語といい,He made her angry.〈彼は彼女を怒らせた。〉のangryのように目的語にかかわる場合を目的補語という。すなわちこの文でのherとangryの関係は,She is angry.のsheとangryの関係と同様であり,sheがherという形で目的語として現れているがゆえに目的補語と呼ぶのである。
フランス語文法では,目的語をも含めて補語と称している。
中国語文法では,動詞の後について動作に一定の方向性を与える〈方向補語〉(逬来〈入って来る〉の来),動作の結果を表す〈結果補語〉(作完〈し終える〉の完)や,その他〈程度補語〉などの用語が行われている。これらは動詞の後に来てその意味を補うという意味で〈補語〉と呼ばれる。
日本語の文法では,〈おどおどする〉の〈おどおど〉や,〈先生になる〉の〈先生〉などのように,〈する〉〈なる〉などの形式用言の意味を補う要素を〈補語〉とする考え方もあるが,連用修飾語と区別しない考え方もあり,まったく別の使い方をする研究者もある。
このように,文の構成成分のうちどんな特徴をもったものを補語とするかについては,どの言語にもあてはまる定義づけは存在しない。
執筆者:柘植 洋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
文の一成分をさすが、学説により内容に出入りがある。比較的に明確なのは伝統的な英文法のもので、不完全動詞の叙述を完全にするのに補われる名詞・形容詞をさす。be, becomeなどの不完全自動詞は主格補語を従え、make, find, keepなどの不完全他動詞は目的補語を従える。補語は義務的な成分であり、そうでない成分は修飾語となる。実際にはこの規定をはみ出るものがあり、Winter is over /He is in the garden/Put it on the deskの副詞(句)も補語的であり、He died young /He came inでは補語か修飾語かはっきりしない。
フランス文法では、さす範囲が広く、目的語、一般の副詞・副詞節までも含む。日本文法でも学説により内容が異なっていて、三上章(みかみあきら)は主語まで目的語と同列に扱って補語とした。日本文法では、分類の基準自体がはっきりしないことが多く、問題が残っている。
[国広哲弥]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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