補語(読み)ホゴ

デジタル大辞泉 「補語」の意味・読み・例文・類語

ほ‐ご【補語】

complement英語フランス語などの文法で、それだけでは完全な意味を表さない動詞の意をおぎなう語。He is rich. I make him happy.のrich, happyの類。
日本語で、連用修飾語うち、主として格助詞」「」などを伴う語。「兄が弟に本を与える」の「弟に」の類。「」を伴うものを目的語または客語というのに対する。

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精選版 日本国語大辞典 「補語」の意味・読み・例文・類語

ほ‐ご【補語】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( [英語] complement の訳語 ) 西欧語の文法などで、不完全自動詞・不完全他動詞の意を補う語。英語の “He is a sailor” “He made her happy” の中の、“a sailor” “happy” の類。
  3. 国文法で、連用修飾語のうち、主として格助詞「に」「と」を伴うもの。「を」を伴うものを目的語または客語というのに対する。「母が私にお小遣いをくれた」の「私に」の類。
    1. [初出の実例]「『勉励衆に超ゆ』『氷水となる』右の二文は『勉励超ゆ』『氷なる』にては叙述の意味完からず。『衆に』『水と』の補語を加へて、叙述始めて完全するものとす」(出典:中等教科明治文典(1904)〈芳賀矢一〉三)

補語の補助注記

( について ) ( 1 )「彼は学生なり」「これは本である」「光陰矢の如し」などの「学生」「本」「矢」を、これがないと意味をなさないという観点から補語とするもの、さらに「賊を捕える」「文法を教える」などの「賊」「文法」(普通は客語とされる)をも補語に含めるものなど異説がある。
( 2 )学校文法では、橋本進吉の考えに従い、客語や補語を区別せず、一括して連用修飾語として扱っている。

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改訂新版 世界大百科事典 「補語」の意味・わかりやすい解説

補語 (ほご)

主語主語・述語),目的語などとともに,文を構成する成分の一つであるが,その内容は各言語,各研究者によりさまざまに異なった定義が与えられている。

 そのなかで,われわれに最もなじみ深いのは英語文法の用語としてである。通常,英語文法ではI am a boy.のa boyや,He is rich.のrichを補語と呼ぶ。これはbe動詞を代表とするいくつかの動詞は,主語+動詞では完全な意味を表せず,その後に来て全体を完全にするもの(complement)を必要とするわけであるが,これが補語といわれる。さらに,このように主語にかかわる場合を主格補語といい,He made her angry.〈彼は彼女を怒らせた。〉のangryのように目的語にかかわる場合を目的補語という。すなわちこの文でのherとangryの関係は,She is angry.のsheとangryの関係と同様であり,sheがherという形で目的語として現れているがゆえに目的補語と呼ぶのである。

 フランス語文法では,目的語をも含めて補語と称している。

 中国語文法では,動詞の後について動作一定の方向性を与える〈方向補語〉(逬来〈入って来る〉の来),動作の結果を表す〈結果補語〉(作完〈し終える〉の完)や,その他〈程度補語〉などの用語が行われている。これらは動詞の後に来てその意味を補うという意味で〈補語〉と呼ばれる。

 日本語の文法では,〈おどおどする〉の〈おどおど〉や,〈先生になる〉の〈先生〉などのように,〈する〉〈なる〉などの形式用言の意味を補う要素を〈補語〉とする考え方もあるが,連用修飾語と区別しない考え方もあり,まったく別の使い方をする研究者もある。

 このように,文の構成成分のうちどんな特徴をもったものを補語とするかについては,どの言語にもあてはまる定義づけは存在しない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「補語」の意味・わかりやすい解説

補語
ほご

文の一成分をさすが、学説により内容に出入りがある。比較的に明確なのは伝統的な英文法のもので、不完全動詞の叙述を完全にするのに補われる名詞形容詞をさす。be, becomeなどの不完全自動詞は主格補語を従え、make, find, keepなどの不完全他動詞は目的補語を従える。補語は義務的な成分であり、そうでない成分は修飾語となる。実際にはこの規定をはみ出るものがあり、Winter is over /He is in the garden/Put it on the desk副詞(句)も補語的であり、He died young /He came inでは補語か修飾語かはっきりしない。

 フランス文法では、さす範囲が広く、目的語、一般の副詞・副詞節までも含む。日本文法でも学説により内容が異なっていて、三上章(みかみあきら)は主語まで目的語と同列に扱って補語とした。日本文法では、分類の基準自体がはっきりしないことが多く、問題が残っている。

[国広哲弥]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「補語」の意味・わかりやすい解説

補語
ほご
complement

文法用語。文を完成するのに必要な要素で,主語または目的語と意味上主述関係をなすもの。特に伝統的な英文法でよく用いられる。 (1) Time is money. (時は金なり) ,(2) They call it love. (人はそれを愛と呼ぶ) で,(1) の money ,(2) の loveがなければ,動詞の意味からいって文が完全にならない。 (1) の moneyのようなものを主格補語,(2) の loveのようなものを目的格補語という。しかし,補語の定義は人によってかなりの差がみられ,日本の言語学者の間でも,定義は一定しない。またたとえば,仏文法では英文法で目的語と呼ぶものを,補語と呼ぶなどの用語の違いもある。

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