親不知(読み)オヤシラズ

デジタル大辞泉 「親不知」の意味・読み・例文・類語

おやしらず【親不知】

新潟県糸魚川いといがわ外波となみから市振いちぶりまでの海岸。断層海岸で、北陸街道波打ち際を通り、難路であった。親子でも互いに気遣う暇がなかったところからの名という。親不知子不知おやしらずこしらず

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「親不知」の意味・読み・例文・類語

おや‐しらず【親不知】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 生まれてすぐ他人に養われ、または孤児となって、生みの親の顔を知らないこと。また、その人。
    2. 生まれて間もない子を、以後いっさい、便りなどしないという約束で、養子として他人にやったり、他人から貰ったりすること。また、その養子。一生不通養子
      1. [初出の実例]「給銀の中から廿匁付て、親しらず子知らずの堅めにて貰ひ」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)三)
    3. 波が荒くて、親は子を、子は親をかえりみる暇もないほどの危険な海岸。
    4. おやしらずば(親不知歯)」の略。〔羅葡日辞書(1595)〕
      1. [初出の実例]「親しらずをのけて二十八本ありましょがなも」(出典:銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉後)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 新潟県南西端、青海(おうみ)町外波(となみ)から市振までの断層海岸。絶壁下の波打際を北陸街道が通り、波が寄せる時は親も子をかえりみるひまもなかったところからの名という。親不知子不知(おやしらずこしらず)
    2. [ 二 ] 静岡市清水区の東端にある薩埵(さった)山が海にせまる付近の道。東海道難所。親不知子不知(おやしらずこしらず)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「親不知」の解説

親不知
おやしらず

市振いちぶり外波となみの間にある約七千メートルにわたって続く絶壁をひかえた海岸。飛騨山脈の北端が断崖となって日本海になだれ落ちる中核部にあたり、古来北陸道最大の難所として知られる。日本海に迫る懸崖・絶壁・岩礁洞穴などの大断崖と砂浜と海浪による景観子不知こしらずとともに県指定名勝とされ、波除観音・大フトコロ・波除不動・走り込み・大崩れ・避難岩などの名があり、海賊部落の伝説が残る。長享三年(一四八九)親不知を越えた京都相国しようこく寺の僧万里集九は「梅花無尽蔵」に「五月旦、自外波至越中州之宮崎、途程四五里、有父不知子不知之嶮難、余平生所耳而已、待波瀾之回急走過、波吼崖崩頑石欹、伝聞父子不曾知、扶桑第一嶮難地、今日初嘗摩脚皮」と記し、波を除けて海岸を通り抜けるのに足をすりむいた様子がうかがえる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「親不知」の意味・わかりやすい解説

親不知 (おやしらず)

新潟県糸魚川市市振と勝山の間約15kmの海岸。親不知・子不知とも呼ばれる旧北陸街道の難所。飛驒山脈の北端が断崖をなして日本海に臨む岩石海岸である。地名は親子が互いに顧みる暇もなく断崖の波打ちぎわの波間を通り抜けなければならなかったことに由来する。県指定名勝の風波と浄土の間1.5kmは最大難所で海食洞の大ふところ・小ふところ,大穴・小穴の避難所,両側の波よけ観音,波よけ不動に往時の苦労が推察される。1883年北陸街道が改良されて開通し,のち国道8号線となってトンネルシェードを加え大改修された。1912年北陸本線が開通し,さらに山寄りに電化複線の親不知トンネル(1964),子不知トンネル(1968)が完成した。一帯は67年県立自然公園に指定された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「親不知」の意味・わかりやすい解説

親不知【おやしらず】

新潟県南西端,青海(おうみ)町(現・糸魚川市)にある長さ約14kmの断崖。飛騨山脈が日本海に落ち込む地。1883年山腹に新道が開通するまでは北陸街道の難所で,波間をぬって走りぬけなければならなかったため,互いに顧みる余裕がなく親不知子不知と呼ばれた。1489年当地を越えた万里集九は《梅花無尽蔵》に〈扶桑第一嶮難地〉と記している。寒原・蒲原とも称し,《源平盛衰記》に国境の難所としてみえる。
→関連項目糸魚川[市]青海[町]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「親不知」の意味・わかりやすい解説

親不知
おやしらず

新潟県南西部,糸魚川市北西にある日本海に臨む断層海岸。長さ約 14km,高さ 300~500mの断崖のうち,市振-外波間をさす。旧北陸街道最大の難所で,1883年に崖の中腹に国道が開かれるまでは,波が静かなときにかぎり絶壁下の狭い砂浜をかろうじて通過できた。 JR北陸本線,国道8号線がトンネルで通過し,北陸自動車道が海上を湾曲して通り,その突出部に親不知インターチェンジがある。子不知とともに 1967年親不知子不知県立自然公園に指定。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

スキマバイト

働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...

スキマバイトの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android