(読み)マツ

デジタル大辞泉 「松」の意味・読み・例文・類語

まつ【松】

マツ科マツ属の常緑高木の総称。明るく乾燥した地に生え、樹皮はひび割れするものが多い。葉は針状で、ふつうアカマツクロマツなどでは2本、ゴヨウマツチョウセンゴヨウハイマツなどでは5本が束になって出る。春、球状の雌花雄花とがつき、黄色い花粉が風に飛ぶ。果実は松かさとよばれ、多数の硬い鱗片りんぺんからなる。種子は食用。材は薪炭・松明たいまつ・建築・パルプなどに広く用いられ、また松脂まつやにをとる。竹・梅あるいは鶴とともにめでたい取り合わせとされ、正月の門松にする。翁草・千代見草・常盤草ときわぐさなど異称も多い。 花=春 落葉=夏》線香の灰やこぼれて―の花/蕪村
門松かどまつ。また、門松を飾っている期間。「が取れる」「の内」
松明たいまつ
「月のない晩だったから、私は―などお持たせするように言いつけた」〈堀辰雄・ほととぎす〉
紋所の名。松の幹・枝・葉または松かさを図案化したもの。
遊女の最高の位。松の位。
「この子は―に極めて」〈浮・武家義理・四〉
マツタケをいう女房詞
[補説]和歌では「待つ」と掛けて用いられる。
「立ち別れいなばの山の峰におふるまつとし聞かば今かへりこむ」〈古今離別
[下接語]相生あいおいの松赤松アメリカ松いそ一の松市松美し松海松蝦夷えぞ老い松・拝み松・鏡の松かさ松・飾り松かどからかさ松・唐松ぐい松黒松腰掛け松小松五葉松下がり松れ松三蓋さんがい三の松霜降り松磯馴そなれ松朝鮮松とど鳥総とぶさ二の松の日の松はい柱松姫松べい見越しの松夫婦めおと琉球りゅうきゅう若松
[類語]若松這松五葉松黒松赤松落葉松からまつ蝦夷松椴松とどまつヒマラヤ杉つが

しょう【松】[漢字項目]

[音]ショウ(漢) [訓]まつ
学習漢字]4年
ショウ〉木の名。マツ。「松柏しょうはく松籟しょうらい松露松竹梅青松老松
〈まつ〉「松風松原門松
[名のり]ときわます
難読松魚かつお落葉松からまつ松明たいまつ杜松ねず松毬まつかさ海松みる水松みる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「松」の意味・読み・例文・類語

まつ【松】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 1 ]
    1. マツ科マツ属の常緑高木の総称。樹皮は赤褐色・黒褐色または灰褐色でひびわれしてはげる。葉は針状、種類によって二本・三本・五本が短枝の上に束生する。雌雄同株。雌雄花ともに花被はなく、雌花は球状に集って新芽の頂につき、雄花序は穂状で新芽の下部に密生する。果実は多数が集って球果をなし松かさと呼ばれる。アカマツ、クロマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウ、ゴヨウマツなど世界中に一〇〇種ぐらいある。日本では神の依(よ)る木として門松などにされ、古くから長寿や慶賀を表わすものとして尊ばれている。材は建築・薪炭用。雅名にあさみぐさ・いろなぐさ・おきなぐさ・おりみぐさ・くもりぐさ・ことひきぐさ・すずくれぐさ・たむけぐさ・ちえぐさ・ちよぐさ・ちよみぐさ・ときみぐさ・ときわぐさ・とちよぐさ・とわれぐさ・ねざめぐさ・はつみぐさ・はつよぐさ・ひきまぐさ・ひさみぐさ・みやこぐさ・めざましぐさ・ものみぐさ・ももぐさ・ゆうかげぐさ・ゆうみぐさなど。
      1. [初出の実例]「尾張に 直に向かへる 尾津の埼なる 一つ麻都(マツ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. [その他の文献]〔淮南子‐説山訓〕
    2. ( 白氏文集の驪宮高の一節によった表現 ) 小松であるとも、シダ類の一種でノキシノブまたはカワラマツのことともいう。
      1. [初出の実例]「垣などもみな古りて、苔生ひてなん、など語りつれば、宰相の君、瓦に松はありつやといらへたるに」(出典:枕草子(10C終)八三)
    3. 松茸をいう、女房詞。
      1. [初出の実例]「八わたのたなかまつ二をりまいる」(出典:御湯殿上日記‐文明九年(1477)九月八日)
    4. 松の脂(やに)の多い部分を束ねて火をつけ、照明に用いたもの。たいまつ。
      1. [初出の実例]「御階のもとに、まつともしながらひざまづきて」(出典:大和物語(947‐957頃)一二五)
    5. ( 「待つ」をかけて、多く和歌などに用いられる ) 待つこと。
      1. [初出の実例]「立ち別れいなばの山の峯におふる松としきかば今かへりこむ〈在原行平〉」(出典:古今和歌集(905‐914)離別・三六五)
    6. ( 松は常緑で変わらないところから ) 永久であること、不変であることのたとえ。
      1. [初出の実例]「我が君を何によそへむ浦に住む、亀山の、いはかどに生ひたるまつによそへむ」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
    7. 紋所の名。松の幹・枝・葉または松かさを図案化したもの。一つ松、抱き松、櫛松、松葉菱など種々ある。
      1. 一つ松@櫛松@抱き松@松葉菱
        一つ松@櫛松@抱き松@松葉菱
    8. まつかざり(松飾)」の略。
      1. [初出の実例]「大路のさま、まつ立わたして、花やかにうれしげなるこそ」(出典:徒然草(1331頃)一九)
    9. まつの位(くらい)
      1. [初出の実例]「大夫を松(マツ)とし、天神を梅とし、囲を鹿とせり」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
    10. 劇場で、東西前土間の行詰り。切り落としで、もっとも舞台に近い席。
      1. [初出の実例]「松の一座頭芝居を聞てゐる」(出典:雑俳・柳多留‐一一一(1830))
    11. 「松・竹・梅」などと順位をつけたものの、その最上位を表わす。
    12. 男のたとえ。女を花にたとえるのに対していう。
      1. [初出の実例]「世は物にかまはぬがよしとて、松(マツ)(ばかり)の山にてもおもしろからず」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)八)
    13. 花札で、一月を表わす札。松に鶴の図柄の二〇点札と、松に短冊の五点札が各一枚、一点札が二枚ある。
  3. [ 2 ] 荻江節。四世荻江露友作曲。明治初年ごろの作。「竹」「梅」と共に三部作をなす祝賀曲。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「松」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(旧字)
8画

(異体字)
14画

[字音] ショウ
[字訓] まつ

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は(公)(こう)。(頌)・(訟)(しよう)の声がある。〔説文〕六上に「木なり」とし、重文としてを録する。常緑の木で多節、偃蹇(えんけん)としておごり高ぶる姿が愛されて、古くから祝頌の詩に用いられ、〔詩、小雅、斯干〕に「るが如く」、また〔詩、小雅、天保〕に「柏のるが如く」のように歌われている。

[訓義]
1. まつ、まつのき。
2. めでたいたとえ。

[古辞書の訓]
和名抄 末(まつ)/脂 万豆夜邇(まつやに) 〔名義抄 マツ 〔立〕 マツノミ・マツ

[熟語]
松衣・松・松陰・松・松韻・松雨・松雲・松影・松液・松煙・松下・松火・松柯・松・松鶴・松間・松巌・松菊・松毬・松・松魚・松・松狗・松径・松契・松・松軒・松骨・松根・松釵・松子・松脂・松樹・松楸・松梢・松心・松針・松・松翠・松声・松石・松雪・松鼠・松窓・松亭・松濤・松煤・松柏・松風・松棚・松明・松門・松籟・松陵・松林・松露・松
[下接語]
倚松・雲松・簷松・哦松・寒松・危松・旧松・喬松・暁松・勁松・孤松・枯松・高松・杉松・若松・小松・深松・青松・石松・松・聴松・低松・貞松・盤松・風松・碧松・暮松・茂松・門松・老松

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「松」の解説

松 (マツ)

植物。マツ科マツ属の常緑高木の総称

松 (マツ)

植物。松茸の別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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