法律上の権利を行使しないままでいると、その権利が消滅するまでの期間。不法行為を巡る権利関係を時の経過によって確定させるのが目的で、当事者の認識にかかわらず進行し、不法行為から20年が過ぎると損害賠償請求権がなくなる。最高裁が1989年に明確化し、判例として定着した。ただ、被害救済できないケースが起こり得るとの批判もあり、2020年施行の改正民法で、当事者の事情によっては請求権が残る「消滅時効」と明記された。時の経過だけで請求権が消えることはなくなった。改正前の事案にはさかのぼって適用されない。
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権利の行使を限定する期間で,予定期間ともよばれる。時効と異なる点は,中断によって期間が伸長されることがない点と,当事者が援用しなくても裁判所が職権で認定しなければならない点である。したがって,時効期間ではなく除斥期間が定められるのは,〈権利ノ特ニ速ニ行使サレルコトヲ欲〉する場合である(民法起草者)。両者の区別は,民法の条文に〈時効ニ因リテ〉とある場合には時効期間,そうでない場合は除斥期間であると説明されている(民法起草者)が,これに従うと,個々の場合に不当な結果をもたらすことがある。
民法には同一条文に長期・短期二つの時効期間が定められていることがある(126条,426条,724条,884条)が,この場合に長期の期間は除斥期間と解すべきである。また,売買・請負の担保責任の存続期間(564条,566条,637条,638条)については,時効に因りてという文言はないが,期間が短いことと,訴訟を好まない日本人の性格からみて,時効期間と解すべきである,という見解が有力である。また,〈形成権〉(〈私権〉の項参照)の行使期間についても問題が多い。民法は取消権=形成権に時効期間を規定しているが,形成権の性質上時効期間とすることは意味がない。しかしそれを除斥期間と解すると,取消しの結果生ずる返還請求権についてさらに時効を問題にしなければならなくなる。したがって,形成権それ自体の行使期間を問題にするのではなく,形成権行使の結果生ずる請求権について,時効期間を考慮すればよい,というのが現在の有力な見解である。
→時効
執筆者:岡本 坦
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権利関係を速やかに確定するために設けられた権利の存続期間。条文のなかにこの概念は出てこないが、判例・学説上認められている。たとえば、売り主の担保責任のところで買い主の解除権や代金減額請求権などにつけられた権利の存続期間(民法564条・566条)とか、盗品・遺失物の回復請求の期間制限(同法193条)など。時効と類似するが、中断ということがない固定期間であること、および、援用がなくても裁判所はこの期間が経過すれば、権利が消滅したものとして裁判しなければならない点で、それとは異なる。除斥期間の定められた権利は、その期間内に裁判外の行使があれば権利が保全される、とするのが通説・判例であるが、その期間内に訴えを提起しなければならない、とする有力説もある。
[淡路剛久]
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