裁判官,裁判所書記官等の裁判所の職員が,事件自体または当事者と特別の関係をもつ場合に,当該事件を担当させないようにして,裁判の公正を確保する制度(民事訴訟法23条,27条,非訟事件手続法5条,民事調停法22条,家事審判法4条,刑事訴訟法20,26条)。同じ目的のための類似の制度として,忌避があるが,除斥は,その原因が法律の規定で列挙されていること,および除斥事由があるときは当該裁判所職員は法律上当然に職務を執行できなくなること,の2点において,忌避とは異なる。
除斥原因とされるのは,たとえば,裁判官等が当事者(民事訴訟の原告・被告,刑事訴訟の被疑者など)の親族である場合,裁判官等が事件の証人・鑑定人となった場合,裁判官等が同じ事件につきすでに当該訴訟以前に行われた手続に関与していた場合などである。除斥原因があるときは,民事訴訟では,当事者の申立てまたは職権によって,除斥の裁判がなされる。これに対して刑事訴訟では,当事者の申立てによる場合は,除斥原因がある場合でも忌避と呼んでいる。いずれの場合も,客観的に除斥原因が存在する限り当該裁判所職員の職務執行は上記裁判をまたずに違法とされるのであり,上記裁判は確認的意味を持つにすぎない。なお,裁判所職員がみずからこの除斥原因または忌避事由が存在すると判断する場合には,除斥の裁判を待つことなく,みずから,司法行政上の監督権をもつ裁判所の許可を得て当該事件の担当からはずれることができる。これを回避という(刑事訴訟規則13条)。
裁判官,裁判所書記官のほか,家事事件における参与員(家事審判法4条),執行官(執行官法3条)にも除斥の制度が適用され,裁判所速記官についても同様に解される。また,裁判所職員ではないが,公証人(公証人法22条),特許,実用新案,意匠,商標事件における審査官・審判官(特許法48条,139条,実用新案法13条,41条,意匠法19条,52条,商標法17条,56条),検察審査員(検察審査会法7条),海難事件における審判官・参審員(海難審判法施行規則6条,10条)などにも,除斥の制度がある。
なお,財団の清算等の手続において,所定の期間内に債権の届出や申出をしない債権者を弁済や配当から除外することを権利の除斥という。
執筆者:上原 敏夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
裁判官に偏頗(へんぱ)(不公平)な裁判をするおそれのある一定の類型的な事由があるとき、その裁判官を法律上当然に職務の執行から排除する制度。裁判官が、当該事件の当事者(刑事事件の場合は、被害者や被告人)であるか、当事者に近い立場にある場合や、職務上当該事件にかかわったことがある場合などが類型化されており、民事訴訟上の事由としては、次のような六つの場合である(民事訴訟法23条)。
(1)裁判官か配偶者(だった者を含む)が当事者か、利害関係者である場合。
(2)当事者が4親等内の血族、3親等内の姻族または同居の親族(だった者を含む)の場合。
(3)当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人または補助監督人の場合。
(4)当該事件の証人または鑑定人になった場合。
(5)当事者の代理人または補佐人(だった場合を含む)の場合。
(6)当該事件の仲裁判断や不服申立ての対象となった前審の裁判に関与した場合。
刑事訴訟上もほぼ同様である(刑事訴訟法20条)が、事件について検察官や司法警察員の職務を行った場合が加わっている。なお、裁判所書記官にも除斥の規定の準用がある(民事訴訟法27条、刑事訴訟法26条)。
[大出良知]
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