(読み)イン

  • かくし
  • かくら・う ‥ふ
  • かくれ
  • かくろえ かくろへ
  • かくろ・う かくろふ
  • かく・す
  • かく・ねる
  • かく・る
  • かく・れる
  • なばり
  • なば・る
  • なま・る
  • 漢字項目
  • 隠〔隱〕

デジタル大辞泉の解説

常用漢字] [音]イン(漢) オン(呉) [訓]かくす かくれる こもる
〈イン〉
表面・世間からかくれる。「隠居隠遁隠忍索隠退隠
世間から身をかくす人。隠者。「市隠大隠
内情が見えないようにする。秘密にする。「隠語隠匿隠微隠蔽(いんぺい)
同情をよせる。「惻隠(そくいん)
〈オン〉
世間からかくれる。秘密にする。「隠密
隠岐(おき)国。「隠州
[補説]「証拠湮滅」の「湮(いん)」を「隠」で代用することがある。
[難読]雪隠(せっちん)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (動詞「かくす(隠)」の連用形の名詞化)
① 人に知られないようにすること。また、そのためのもの。人目につかない所。
※落窪(10C後)四「『かくしの方にやあらむ』と宣ふ」
※玉塵抄(1563)一三「長い袖をかくしにしてかおをかくいたぞ」
② 外からの守りとなるもの。防御施設。また、伏兵。
※書紀(720)敏達一二年是歳(前田本訓)「国家(みかと)此の時に望みたまひて壱岐対馬に多く伏兵(カクシ)を置きて、至(まういた)らむを候(ま)ちて殺したまへ」
③ 衣服に縫いつけた小さな袋。衣服の内側に作った物入れ。ポケット。
※歌舞伎・夢結蝶鳥追(雪駄直)(1856)序幕「長五郎金を腹掛の隠(カク)しへ入れる」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一三「何故に梨子(なし)を取りて、夾袋(ポッケット)(〈注〉カクシ)に蔵(かくさ)ざりしや」
〘他サ五(四)〙
① 物を人目につかないところに置いたり、覆ったりして、見えないようにする。隠れるようにする。
※万葉(8C後)一・一八「三輪山をしかも隠(かくす)か雲だにも情(こころ)あらなも可苦佐布(カクサフ)べしや」
※伊勢物語(10C前)五九「住みわびぬ今はかぎりと山里に身をかくすべき宿求めてん」
② 事柄を人に知られないようにする。秘密にする。
※万葉(8C後)二〇・四四六五「加久左(カクサ)はぬ 明き心を 皇(すめ)らへに 極めつくして 仕へ来る 祖(おや)の司と」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「人けなきはぢをかくしつつまじらひ給ふめりつるを」
③ (真実を人に知られないようにするの意から) いつわる。だます。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「時に旃荼羅、身命を護らむが為に、弓箭を執持して赤き袈裟を被て、詐(カクシ)て沙門の威儀形相を現して」
④ 死人を葬る。埋葬する。
※書紀(720)神武七七年九月(寛文版訓)「明年(くるつとし)の秋九月乙卯朔丙寅、畝傍山の東北(うしとらのすみ)の陵(みささき)に葬(カクシ)まつる」
〘自ナ下一〙 「かくれる(隠)」の変化した語。
[1] 〘連語〙 (四段活用動詞「かくる(隠)」の未然形に反復・継続を表わす上代の助動詞「ふ」の付いたもの) ずっと隠れる。隠れ続ける。
※万葉(8C後)三・三一七「渡る日の 影も隠比(かくらヒ) 照る月の 光も見えず」
[2] 〘自ハ下二〙 =かくろう(隠)(一)
※延喜式(927)一六「穢悪(けがら)はしき疫の鬼の、処処村村に蔵り隠布留(かくらフル)をば」
[1] 〘自ラ四〙 (下二段活用よりも古い形) =かくれる(隠)
※古事記(712)上・歌謡「青山に 日が迦久良(カクラ)ば」
[2] 〘自ラ下二〙 ⇒かくれる(隠)
〘名〙 (動詞「かくれる(隠)」の連用形の名詞化)
① 人目につかないでいること。人に知られないでいること。→隠れが無い隠れない
※落窪(10C後)二「しかじかの事あるべかなるを、心うくも言はぬにこそ。つひにかくれあるべき事かは」
② (近世「かぐれ」とも) 人目につかない場所。物陰。→隠れの方(かた)
※宇津保(970‐999頃)楼上下「その車は置かず。南のかたの山のかくれに立てなめたり」
※浄瑠璃・役行者大峯桜(1751)二「軒のかぐれに彳(たたず)む折柄」
③ (接頭語の「御」を付けた形で) 死ぬことを、その人を敬っていう語。→お隠れ
※平家(13C前)六「遂に御かくれありけるとぞきこえし」
④ 尻(しり)
※書紀(720)神代上(水戸本訓)「尻(カクレ)に在るをば墨雷と曰ひ」
⑤ ⇒かぐれ
〘自ラ下一〙 かく・る 〘自ラ下二〙
① 物の陰にはいったり、おおわれたりして、しぜんに見えなくなる。かくる。
※万葉(8C後)一四・三三八九「妹が門(かど)いや遠そきぬ筑波山可久礼(カクレ)ぬ程に袖は振りてな」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)象潟「汐風真砂を吹上、雨朦朧として鳥海の山かくる」
② 人目につかないような所にひそむ。また、逃げて姿を消す。
※書紀(720)仁徳即位前(前田本訓)「伏(カクレたる)(つはもの)、多(さは)に起り」
※枕(10C終)一二五「人の妻(め)のすずろなる物怨(ゑん)じしてかくれたるを」
③ 世間から離れて山里などに住む。隠遁(いんとん)する。隠居する。また、官職につかないで民間にいる。
※書紀(720)崇神一二年三月(北野本訓)「是(ここ)を以て、官(おほむつかさ)(すたるる)事無く、下(しも)に逸(カクルル)民無し」
④ 周囲の状況や他の物の影響などで、ある物事の存在が感じられなくなる。
※古今(905‐914)春上・四一「春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる〈凡河内躬恒〉」
⑤ 比喩的に、大きな力などに守られる。
※源氏(1001‐14頃)関屋「かうぶりなど得しまで、この御徳にかくれたりしを」
⑥ 死ぬ。多く高貴の人についていう。
※書紀(720)神代下(水戸本訓)「矢に中(あた)りて立(たちどころ)に死(カクレぬ)
※平家(13C前)一「同廿七日、御年卅八にて遂にかくれさせ給ひぬ」
[語誌](1)もと四段活用で、奈良時代以前に下二段に転じたものと見られる。同様の変化を見たものに「忘る」「触る」がある。奈良時代におけるこれらの語の四段、下二段の並立に意味的対立を見ようとする説もあるが不明。
(2)意味、用法は現代語との隔たりを見いだすことができず、この語が日本語の中でも、きわめて基礎的な語であることを示している。
[1] 〘自ハ四〙 (「かくらう」が変化して一語化したもの) 物陰にはいったりして見えなくなる。また、人に知られないような所にひそむ。
※伊勢物語(10C前)六七「きのふけふ雲のたちまひかくろふは花の林をうしとなりけり」
[2] 〘自ハ下二〙
① 物陰などにひそんで見えなくなる。人に知られないようにする。
※貫之集(945頃)四「しろたへに雪のふれれば小松原色の緑もかくろへにけり」
※風雅(1346‐49頃)春中・一二六「狩人の朝ふむ小野の草わかみかくろへかねてきぎす鳴なり〈俊恵〉」
② (「たり」「てあり」などを伴って) 表立たないでいる。
※源氏(1001‐14頃)末摘花「よめにこそしるきながらも、よろづかくろへたる事多かりけれ」
※評判記・役者評判蚰蜒(1674)序「初瀬のひばらかくろへたるふしぶしまでをまるはだかにして口からさきに生れたる山水のおきながしらみあたまと、かきちらしたれば」
〘名〙 (下二段動詞「かくろう(隠)」の連用形の名詞化)
① 人に知られないでいられるような物陰。
※源氏(1001‐14頃)総角「年ごろだに、何のたのもしげある、このもとのかくろへも侍らざりき」
② 外から知れない事柄。秘密。
※源氏(1001‐14頃)梅枝「何事のかくろへあるにか、深くかくし給ふとうらみて」
〘名〙 (動詞「なばる(隠)」の連用形の名詞化) 隠れること。伊賀国(三重県)名張の地名にかけて用いられることが多い。
※万葉(8C後)一・六〇「暮(よひ)に逢ひて朝面(あしたおも)無み隠(なばり)にか日(け)長く妹が廬(いほり)せりけむ」
〘自ラ四〙 隠れる。なまる。なぶ。
※石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「既に惶(おひ)え急ぎ走りて竹林に竄(ナハル)
[補注]「なばる」の連用形から転成したと思われる地名「なばり」「よなばり」や、「ば」と「ま」の子音交替で生じた「なまる」などの語形で「万葉集」中に見える。ただし、動詞「なばる」の仮名書き例は存在しない。
〘自ラ四〙 かくれる。なばる。
※万葉(8C後)一六・三八八六「おし照るや 難波の小江に 廬作り 難麻理(ナマリ)て居る 葦蟹を」

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世界大百科事典内のの言及

【謎】より

…表面の意味の背後に別の意味を隠しておき,それを当てさせようと誘いかける言語表現の一方法。言語遊戯の一つ。…

※「隠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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