(読み)イン

デジタル大辞泉 「隠」の意味・読み・例文・類語

いん【隠〔隱〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]イン(漢) オン(呉) [訓]かくす かくれる こもる
〈イン〉
表面・世間からかくれる。「隠居隠遁隠忍索隠退隠
世間から身をかくす人。隠者。「市隠大隠
内情が見えないようにする。秘密にする。「隠語隠匿隠微隠蔽いんぺい
同情をよせる。「惻隠そくいん
〈オン〉
世間からかくれる。秘密にする。「隠密
隠岐おき国。「隠州
[補説]「証拠湮滅」の「いん」を「隠」で代用することがある。
難読雪隠せっちん

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「隠」の意味・読み・例文・類語

かくれ【隠】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「かくれる(隠)」の連用形名詞化 )
  2. 人目につかないでいること。人に知られないでいること。→隠れが無い隠れない
    1. [初出の実例]「しかじかの事あるべかなるを、心うくも言はぬにこそ。つひにかくれあるべき事かは」(出典:落窪物語(10C後)二)
  3. ( 近世「かぐれ」とも ) 人目につかない場所。物陰。→隠れの方(かた)
    1. [初出の実例]「その車は置かず。南のかたの山のかくれに立てなめたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
    2. 「軒のかぐれに彳(たたず)折柄」(出典浄瑠璃役行者大峯桜(1751)二)
  4. ( 接頭語の「御」を付けた形で ) 死ぬことを、その人を敬っていう語。→お隠れ
    1. [初出の実例]「遂に御かくれありけるとぞきこえし」(出典:平家物語(13C前)六)
  5. (しり)
    1. [初出の実例]「尻(カクレ)に在るをば墨雷と曰ひ」(出典:日本書紀(720)神代上(水戸本訓))
  6. かぐれ

かくし【隠】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「かくす(隠)」の連用形の名詞化 )
  2. 人に知られないようにすること。また、そのためのもの。人目につかない所。
    1. [初出の実例]「『かくしの方にやあらむ』と宣ふ」(出典:落窪物語(10C後)四)
    2. 「長い袖をかくしにしてかおをかくいたぞ」(出典:玉塵抄(1563)一三)
  3. 外からの守りとなるもの。防御施設。また、伏兵
    1. [初出の実例]「国家(みかと)此の時に望みたまひて壱岐対馬に多く伏兵(カクシ)を置きて、至(まういた)らむを候(ま)ちて殺したまへ」(出典:日本書紀(720)敏達一二年是歳(前田本訓))
  4. 衣服に縫いつけた小さな袋。衣服の内側に作った物入れ。ポケット。
    1. [初出の実例]「長五郎金を腹掛の隠(カク)しへ入れる」(出典:歌舞伎・夢結蝶鳥追(雪駄直)(1856)序幕)
    2. 「何故に梨子(なし)を取りて、夾袋(ポッケット)(〈注〉カクシ)に蔵(かくさ)ざりしや」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一三)

かくろえかくろへ【隠】

  1. 〘 名詞 〙 ( 下二段動詞「かくろう(隠)」の連用形の名詞化 )
  2. 人に知られないでいられるような物陰。
    1. [初出の実例]「年ごろだに、何のたのもしげある、このもとのかくろへも侍らざりき」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
  3. 外から知れない事柄。秘密。
    1. [初出の実例]「何事のかくろへあるにか、深くかくし給ふとうらみて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)

なばり【隠】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「なばる(隠)」の連用形の名詞化 ) 隠れること。伊賀国三重県)名張の地名にかけて用いられることが多い。
    1. [初出の実例]「暮(よひ)に逢ひて朝面(あしたおも)無み隠(なばり)にか日(け)長く妹が廬(いほり)せりけむ」(出典:万葉集(8C後)一・六〇)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「隠」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

(旧字)隱
17画

[字音] イン・オン
[字訓] かくす・いたむ・よる

[説文解字]
[その他]

[字形] 形声
声符は(いん)。は呪具の工で神を鎮め匿(かく)す意。(ふ)は神の陟降する神梯。その聖所に神を隠し斎(いわ)うことをいう。〔説文〕十四下に「(おほ)ふなり」とするが、神聖を隠す意。

[訓義]
1. かくす、おさめる。
2. おくふかい、ほのか、かすか。
3. 穏に通じ、しずか、やすらか。
4. 慇に通じ、いたむ、うれえる。
5. 意に通じ、はかる。
6. に通じ、よる、たのむ。

[古辞書の訓]
名義抄〕隱 カクル・カクス・カスカナリ・オホキナリ・ヲク・イタム・ヨル・カカル・ハカル・フルシ・シム・アヤツル

[語系]
隱in、愛t、翳yetと声近く、不安、おそれの意がある。穩(穏)un、殷・慇inと通用する。依ii、倚iaiは声近く、inは同声。みな隠依の意がある。

[熟語]
隠逸・隠隠・隠映・隠化・隠・隠懐・隠括・隠・隠几・隠机・隠欺・隠宮・隠居・隠曲・隠形・隠顕・隠見・隠幻・隠戸・隠語・隠・隠士・隠私・隠疾・隠射・隠者・隠秀・隠恤・隠賑・隠人・隠棲・隠静・隠迹・隠絶・隠退・隠度・隠痛・隠匿・隠・隠遯・隠忍・隠・隠微・隠庇・隠避・隠閔・隠伏・隠僻・隠謀・隠没・隠密・隠民・隠黙・隠約・隠幽・隠憂・隠略・隠淪・隠坐
[下接語]
逸隠・回隠・隠・官隠・顕隠・索隠・市隠・仕隠・自隠・小隠・招隠・真隠・深隠・雪隠・潜隠・蔵隠・惻隠・大隠・退隠・探隠・逃隠・韜隠・遯隠・秘隠・伏隠・隠・卜隠・幽隠・傭隠・吏隠

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【謎】より

…表面の意味の背後に別の意味を隠しておき,それを当てさせようと誘いかける言語表現の一方法。言語遊戯の一つ。…

※「隠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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