日本大百科全書(ニッポニカ) 「飯南」の意味・わかりやすい解説
飯南(町)
いいなん
島根県中南部、飯石(いいし)郡にある町。2005年(平成17)赤来町(あかぎちょう)と頓原町(とんばらちょう)が合併し成立。町域は、中国山地の脊梁(せきりょう)部に位置し、南部を広島県と接する。南端の県境にある女亀(めんがめ/めかめ)山を源とする神戸川(かんどがわ)が北へ貫流し、国道54号、184号が通じる。山林面積の多い高原地帯である。1964年(昭和39)赤名(あかな)峠に赤名トンネルが開通し広島市まで自動車で約2時間、翌1965年吹ヶ峠の西方に晴雲(せいうん)トンネルが開通し、松江市へ1時間余りとなった。北西部の三瓶山(さんべさん)東麓(とうろく)は大山隠岐(だいせんおき)国立公園に含まれ、広島県境にはブナの自然林のある大万木山(おおよろぎさん)(1218メートル)があり、その周辺は県民の森となっている。
古来牛市、馬市が栄え、赤名峠を経て山陽との交易が盛んであった。近世は松江藩の支藩広瀬藩領。米作を中心に高冷地野菜、メロン、シイタケ、花卉(かき)の栽培が盛ん。牧草団地育成も進み、牛の飼育など酪農も盛ん。ほかにヤマメの養殖、林業などが行われる。神戸川には来島ダム(きじまだむ)があり、邑智(おおち)郡美郷町の潮発電所(3.6万キロワット)に送水される。赤穴八幡宮(あかなはちまんぐう)の三つの木造神像(八幡神坐像(ざぞう)、息長足姫(おきながたらしひめ)坐像、比売神(ひめがみ)坐像)は、国指定重要文化財。飯南町民俗資料館には国の重要有形民俗文化財「奥飯石及び周辺地域の積雪期用具」150点が収納・展示される。赤名湿地性植物群落は県の自然環境保全地域。ほかに、琴引(ことひき)山(1013メートル)、観光農園、キャンプ場、スキー場などがある。面積242.88平方キロメートル、人口4577(2020)。
[編集部]
飯南
いいなん
三重県中西部、飯南郡にあった旧町名(飯南町(ちょう))。現在は松阪市中部の一地区。旧飯南町は、1956年(昭和31)柿野(かきの)町と粥見(かゆみ)町が合併して成立。町名は郡名による。2005年(平成17)嬉野(うれしの)、三雲(みくも)、飯高(いいたか)の3町とともに松阪市に合併した。国道166号、368号が通じる。中央構造線に沿う櫛田川(くしだがわ)の中流に位置し、段丘上に集落が並ぶが、耕地率わずか7%の山村である。林業と製材が主産業で、杉皮を特産するほか、シイタケ、茶、肉牛(松阪牛)、ニシキゴイを産する。とくに、低農薬有機栽培による深蒸し煎茶(せんちゃ)は全国品評会でも入賞している。櫛田川の渓流はアユ、アマゴの釣り場でも知られる。本郷の羯鼓(かんこ)踊は県の無形民俗文化財。
[伊藤達雄]
『『飯南町史』(1984・飯南町)』