デジタル大辞泉
「三瓶山」の意味・読み・例文・類語
さんべ‐さん【三瓶山】
島根県中部にある火山群。古くは佐比売山といい「出雲国風土記」の国引きの伝説の山。最高峰の親三瓶(男三瓶とも。標高1126メートル)のほか、女三瓶・子三瓶・孫三瓶が連なる。
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さんべ‐さん【三瓶山】
- 島根県中央部にある火山群。主峰は親(男(お))三瓶(一一二六メートル)。親三瓶、女三瓶(めさんべ)、子三瓶、孫三瓶の四つの鐘状火山が、旧火口の室ノ内(むろのうち)を環のように囲み、裾野は傾斜のゆるやかな草原で、牛の放牧場に利用されている。大山隠岐国立公園の一部。古くは佐比売(さひめ)山と呼ばれた。山辺山。形見山。
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三瓶山
さんべさん
県のほぼ中央部、石見と出雲の国境に位置する。大部分が大田市域にあたり、東側の一部が飯石郡頓原町域となっている。白山火山帯に属する死火山。標高一一二六・二メートルの男三瓶山(親三瓶山)を中心に、その南東にある標高九五七メートルの女三瓶山(母三瓶山)、男三瓶山の南に位置する子三瓶山(九六一メートル)、その南東にある孫三瓶山(九〇七メートル)、女三瓶山の南に位置する大平山(八五五メートル)の五峰が環状に連なる。その中央に旧火口の室の内があり、トロイデ型の山容をみせる。五峰の南東にやや外れて日影山(六九七メートル)がある。直径数キロの小型の火山であるが、溶岩円頂丘・火山砕屑丘・火砕流・カルデラなど多様な火山地形をみせる。室の内の南東隅には室の内池があり、四季を通じて水をたたえている。池の西方約二〇〇メートルの孫三瓶山の麓には鳥の地獄とよばれる炭酸ガスの噴気孔があり、付近に生息している昆虫の死骸がみられる。
〔原始―中世〕
三瓶山の火山活動は一〇万年以前から始まり、数回の噴火を繰返して松江市や岡山県新見市の近くまで火山灰を飛ばすほどの激しい活動を経たのち、約三千年前に現在のような形状になったといわれ、有史上に火山活動の記録はない。古名を佐比売山といい、「出雲国風土記」に八束水臣津野命が国引きを行った際の杭は石見と出雲の国境にある佐比売山であると記される。同書の飯石郡条には「佐比売山。郡家の正西五十一里一百四十歩なり。石見と出雲との二国の堺なり」とある。山名について、国境にあるところから「さかいめ山」が転訛したとする説があり、また全山が片側からだけ見えるということから片見山・形見山ともいわれる。白鳳一三年(天武天皇一三年、六八四)の大地震によって佐比売山の西崖が崩壊し、三個の瓶が飛出したことから三瓶山と改称したと伝えられる。伝承などによると、三瓶山は修験道の山ともいわれる。その本拠地は天台宗円城寺(現大田市)とされ、かつては四八の宿坊を有したというが、戦国期の毛利氏と尼子氏による戦乱の兵火にかかり衰退したと伝える(円城寺記)。
〔女三瓶山・子三瓶山の呼称〕
近世の山麓には幕府領(石見銀山領)石見国安濃郡池田村・小屋原村・志学村・加淵村・多根村(現大田市)と、松江藩領出雲国神門郡山口村(現同上)および広瀬藩領同国飯石郡角井村(現頓原町)の計七ヵ村があって、周囲四分の三が石見国、四分の一が出雲国に属していた。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
三瓶山 (さんべさん)
島根県中央部,旧出雲・石見両国の境にある火山群。最高峰は男三瓶(おさんべ)(親三瓶,1126m)。小型ながら,大山と並ぶ中国地方の数少ない火山の一つで,《出雲国風土記》の国引きの神話にある佐比売(さひめ)山にあたる。大きく新旧2期の活動が推定され,古三瓶期には石英安山岩質の溶岩,凝灰角レキ岩が噴出し,のちカルデラが生じて北部の森田山,茶臼山などの外輪山がつくられた。新三瓶期にはカルデラ内にある日影山,男三瓶,女三瓶(めさんべ),子三瓶,孫三瓶などの溶岩円頂丘が形成され,ほぼ現在の姿となった。中央に〈室の内〉と呼ばれる旧噴火口があり,水をたたえる。歴史時代の確かな噴火記録はない。噴出した大量の軽石や火山灰は,カルデラ内に東ノ原,長者ヶ原,西ノ原のすそ野をつくり,また遠く広島・岡山両県北部に飛来したものは吉備土(きびつち)などの名で知られている。長者ヶ原にはチガヤ,チカラシバが生え,レンゲツツジやタニウツギ,ノアザミ,ワレモコウなどが季節により美しい花をつける。男三瓶の北斜面および南斜面の旧火口内にはブナを中心とする自然林が残され,天然記念物に指定されており,また野鳥の宝庫でもある。大山隠岐国立公園に属し,登山,スキー,山菜採りなど,四季を通じて訪れる人が多い。南麓の大田市三瓶町志学(しがく)にはかつて志学温泉といわれた三瓶温泉(食塩泉,39~42℃)がある。
執筆者:藤原 健蔵
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三瓶山
さんべさん
島根県中央部、出雲(いずも)と石見(いわみ)の国境にある複式火山。大山隠岐(だいせんおき)国立公園の一部。『出雲国風土記(ふどき)』には佐比売山(さひめやま)とある。白山(はくさん)火山帯に属するが、有史以後の記録はない。石英安山岩とその砕屑岩(さいせつがん)からなる鐘状(しょうじょう)火山群で、水瓶(みずがめ)をいくつか並べた形をしている。主峰の親(おや)三瓶(男(お)三瓶)(1126メートル)のほか、子三瓶(961メートル)、孫(まご)三瓶(907メートル)、女(め)三瓶(957メートル)、大平(おおひら)山(854メートル)などが環状に並ぶ。環内は室の内(むろのうち)とよばれる低地(684メートル)で、少量のガスを噴出し、室の内池がある。火山活動は約3万年前に始まったとされるが、現在の山容は約4000年前に形成されたという。山麓(さんろく)は傾斜が緩やかで、第二次世界大戦中は陸軍の演習地に利用されたが、現在は道路なども整備され観光開発が著しい。西麓の西の原に浮布池(うきぬののいけ)があり、ボートが浮かび、周辺丘陵はキャンプ場に指定され、草地では貸し馬もみられる。東麓の東の原には大平山への登頂リフトがある。北麓の北の原には姫逃池(ひめのがいけ)や国立青少年交流の家がある。南麓には三瓶温泉街が立地する。男三瓶からの雲海はすばらしく、男三瓶北東斜面の三瓶山自然林はブナ、コナラ、ミズナラなどが多く、国の天然記念物に指定されている。
[野本晃史]
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三瓶山
さんべさん
島根県中部,大田市の南東部から飯南町にまたがる活火山。石見高原上に噴出した溶岩円頂丘(鐘状火山)で白山火山帯に属する。『出雲国風土記』の佐比売山(さひめやま)で,国引きの神話(→国引伝説)で有名。男三瓶山(親三瓶山。1126m)を主峰に,子三瓶山(961m),孫三瓶山(903m),女三瓶山(953m)が環状に並び,室の内(むろのうち)と呼ばれる旧噴火口を囲む。裾野の東ノ原,西ノ原などはゆるやかな草原でウシの放牧地。南麓に三瓶温泉,北麓に小屋原温泉,西麓に浮布池(うきぬののいけ)があり四季を通じての行楽地。裾野を一周する高原道路もあり観光地として発展。三瓶山自然林は国の天然記念物に指定。大山隠岐国立公園に属する。
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三瓶山【さんべさん】
島根県中部にある活火山。標高1126m。黒雲母花コウ岩の台地上に噴出した安山岩質溶岩からなり,室ノ内火口を中心に,男三瓶,女三瓶,子三瓶,孫三瓶の4峰が環状に連なる。《出雲国風土記》に佐比売山とみえる。大山隠岐国立公園に属し,南麓には三瓶温泉,北麓に小屋原温泉があり,登山,キャンプ,スキーによい。山麓は放牧に利用される。
→関連項目大田[市]|中国山地
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報