鬼火(読み)おにび

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

鬼火
おにび

九州地方一円で行われる正月7日の火祭。北九州ではホウケンギョウなどともいう。子供または青年たちの主宰する集落や組単位の行事で,一定の場所に大きな竹木を芯にして正月飾りなどを積上げ,燃やすというもの。その火で身体をあぶったり,餅を焼いて食べると無病息災という。竹のはじける音が魔よけになるとか,燃え残りを持帰って門口に立てると悪魔が入ってこないともいう。書初を燃やして高く舞上がると腕が上がるといい,また芯木の倒れる方角で1年の豊凶を占うところもある。名称の由来や7日に行う理由は必ずしも明瞭でないが,内容は全国に分布する左義長 (さぎちょう) ,どんど焼などと同じである。

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デジタル大辞泉の解説

おに‐び【鬼火】

雨の降る暗夜などに、墓地や湿地の空中を漂う青い火。燐化(りんか)水素の燃焼によるとする説もあるが不明。陰火幽霊火狐火(きつねび)。
鬼火焚(た)き」に同じ。
[補説]書名別項。→鬼火

おにび【鬼火】[書名]

吉屋信子短編小説。昭和26年(1951)、第4回日本女流文学者賞を受賞。翌年、同作を表題作とする作品集を刊行。

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百科事典マイペディアの解説

鬼火【おにび】

雨夜などに空中を浮遊する怪火。青色は人魂(ひとだま),暗紅色は狢火(むじなび),淡紅色は狐火(きつねび)とする説もある。大晦日(おおみそか)の夜,関八州の狐が江戸王子稲荷に集まって狐火をともすという。原因はリンの燃焼ともいうが不明。また出棺の時の門火(かどび)も鬼火という。さらに鬼火焚(たき)といって,九州では正月7日早朝に火祭が行われる。→球電
→関連項目妖怪

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デジタル大辞泉プラスの解説

鬼火

池波正太郎の長編時代小説。1978年刊行。「鬼平犯科帳」シリーズ。

鬼火

鹿児島県、田崎酒造株式会社が製造・販売する芋焼酎。種子島産の紫イモを炭火で焼いて仕込んだもの。

鬼火

1997年公開の日本映画。監督:望月六郎、原案:山之内幸夫、脚本:森岡利行。出演:原田芳雄、片岡礼子、哀川翔、奥田瑛二、北村康、水上竜士ほか。第52回毎日映画コンクール男優主演賞(原田芳雄)受賞。

鬼火

1956年公開の日本映画。監督:千葉泰樹、原作:吉屋信子、脚色:菊島隆三、音楽:伊福部昭。出演:加東大介津島恵子宮口精二、笈川武夫、中村伸郎、中田康子、堺左千夫ほか。第11回毎日映画コンクール音楽賞受賞。

鬼火

1963年製作のフランス映画。原題《Le feu follet》。監督:ルイ・マル、出演:モーリス・ロネ、ベルナール・ノエル、ジャンヌ・モローほか。

鬼火

岡部耕大による戯曲。1993年、岡部企画プロデュースにより、下北沢OFF・OFFシアターのこけら落し公演として初演。

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世界大百科事典 第2版の解説

おにび【鬼火】

怪火の一つで,暗い雨夜に湿地や墓地などで燃えるという火。燐火(りんび),人魂(ひとだま),火の玉ともよばれ,形は円形,楕円形杓子形などで尾をひいて中空をとび,青色のほか黄色や赤色の火もある。人が死ぬと同時にその家の藪から青白い火の玉が出るとか,人の魂は家から知人の所へまわってから寺へ入るなどともいう。《和名抄》には鬼火は死んだ人や牛馬の血が化したものとある。鬼火は科学的には人骨などのリンが自然発火したものと考えられている。

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大辞林 第三版の解説

おにび【鬼火】

夜間、墓地や沼地などで、青白く燃え上がる不気味な火。人骨などのリンが自然発火したもの。人魂ひとだま。火の玉。あおび。
おにびたき」に同じ。
葬式の出棺時に門口でたく火。

きか【鬼火】

おにび。きつねび。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鬼火
おにび

妖怪(ようかい)のうち、怪火現象の一つ。燐火(りんか)、狐火(きつねび)のたぐいで、青い火が集散しつつ空中を浮遊する。死者や牛馬の血が年を経て化したものといい、とくに雨天の夜によく現れる。古戦場など大量の死者の出た所に出現するが、近世の怪談では墓地に出ることが多い。
 また、九州各地では小正月(こしょうがつ)の火祭を鬼火とか鬼火焚(た)きとよんでいる。七日正月に行う所が多く、熊本県南部などでは七日正月と小正月と二度も火祭をする所がある。どんど、左義長(さぎちょう)などという小正月の火祭と同じように、野外で臨時の小屋生活を送り、物忌みが終われば焼き捨てることを中心とする行事である。正月や節分などの年の境に、霊威ある神霊が訪れてきて人々の霊力を更新するという考え方が古くからあるが、これが一方では祖霊信仰と結び付き、厳重な物忌みをして迎え送る行事となり、一方では、霊威の激しさから、あるいは物忌みの厳しさから、強大な恐ろしいものの訪問と理解され、それを鬼と考えることになった。鬼を追い払うための行事だという理解が一般化すると、単に火を焚いて鬼を追い出すというにとどまらず、火の中に生(なま)竹を入れて爆竹を行い、「鬼の目はじき」とよんだり、鬼火の心柱(しんばしら)を「鬼の骨」といって、これを焼くことを鬼の焼殺になぞらえたりする。青年または子供が関与すること、年占(としうら)の意味をもつこと、焼杭(やけぐい)や灰を魔除(まよ)けに使うことなど、すべて小正月の火祭と同様である。別に、奈良県吉野の金峯山寺(きんぷせんじ)では、節分に鬼火という行事がある。大護摩(ごま)の煙の中を3匹の鬼が踊り狂い、年男たちが松明(たいまつ)を奪い取る厄除けの行事である。[井之口章次]

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精選版 日本国語大辞典の解説

おに‐び【鬼火】

〘名〙
① 沼沢や墓地などで、雨が降った夜や、闇の夜などに燃えて浮遊する青白い燐光。きつね火。陰火。幽霊火。《季・冬》
※十巻本和名抄(934頃)四「燐火 文字集略云燐〈音燐一音吝 於邇比〉鬼火也人及牛馬兵死者血所化也」
※読本・椿説弓張月(1807‐11)後「折しもあれ一団の燐火(オニビ)、叢(くさむら)の中より燃出て、手元(たなもと)を照らすにぞ、秋の蛍か鬼火(オニヒ)かと怪しみながら」
※諸国風俗問状答(19C前)肥後国天草郡風俗問状答「七日の朝鬼火とて、此松竹・注連をも焼也」
[語誌]漢語「鬼火(きか)」を訓読したもので、「十巻本和名抄」で「燐火」、「観智院本名義抄」で「燐」の訓として「おにび」がみえる。死んだ人や牛馬の血が年月を経て化した、死者の遊魂であるとする中国古来の考え方は「和名抄」をはじめ諸書に引かれるが、一般に鬼や化け物が灯すと信じられ、怪異な場面に現われるものとされる。

き‐か ‥クヮ【鬼火】

〘名〙 おにび。きつねび。または、鬼神の起こす火。
※続日本紀‐延暦八年(789)七月丁巳「海浦窟宅、非復人烟、山谷巣穴、唯見鬼火
※読本・近世怪談霜夜星(1806)四「陰雨の時はなほ鬼火(キクヮ)飄蕩として」 〔仁王護国経‐下〕

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世界大百科事典内の鬼火の言及

【左義長】より

…京都に近い地方ではサギチョウと呼ぶ土地もあるが,全国的には,広くトンド系統の語(〈どんど焼〉など)で呼ばれる。九州ではオニビ(鬼火),ホッケンギョウという。トンドもホッケンギョウも,左義長のはやしことばに由来する。…

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