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福井県三方上中(みかたかみなか)郡若狭町鳥浜字高瀬にある縄文時代草創期~前期の低湿地遺跡。三方湖の南約1km,鰣(はす)川と高瀬川の合流点河床下およびその周囲に広がっている。縄文時代には三方湖に面した微高地であった。1961年の遺跡発見以後,同志社大学,福井県教育委員会などが発掘調査をおこなった。縄文時代の遺物包含層は厚さ3m以上あり,最下層は海面下3mに達する。下から順番に,草創期の爪形文土器・多縄文土器,早期の押型文土器,前期の諸型式と堆積しており,西日本の最も重要な層位遺跡である。植物遺体は草創期以後の各層から出土し,貝塚の形成は前期まで下る。遺構は少ないが,丸木舟,櫂(かい),桜の樹皮を巻いた短弓,石斧柄,編籠,紐,縄など豊富な植物性遺物が出土した。ヒョウタンやウリなど栽培植物の検出,漆塗容器,櫛の存在など,縄文前期文化の豊かさを示す遺物も多い。縄文時代の食生活の復元も重要な研究成果である。
執筆者:泉 拓良
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福井県三方上中(みかたかみなか)郡若狭(わかさ)町鳥浜にある縄文時代前期から草創期にかけての貝層を伴う低湿地遺跡。1962年(昭和37)から10年間にわたり、若狭考古学研究会のメンバーを中心に発掘が行われ、多大の成果を収めた。また、自然科学の各分野の研究者が参加協力し、共同研究の実をあげた。遺跡は、三方湖に注ぐ鰣(はす)川とその支流の高瀬川の合流点付近にあり、標高0メートルからマイナス2.5メートルの深さに包含層をもつ。貝層は前期に限られ、草創期のものはみられない。丸木舟、櫂(かい)、石斧(せきふ)柄、丸木弓、鉢、椀(わん)など、各種の多量の木製品が出土した。また、製作工程を示す加工材も豊富で、この時代の木工技術を知ることができる。木製容器や櫛(くし)などには朱や黒の漆(うるし)が塗られ、すでに漆技術の普及していたことがわかる。クリ、どんぐり、クルミなどとともに、ヒョウタン、緑豆(りょくとう)、ウリなどの「栽培植物」の種子が発見されており、縄文時代人の生業を知るうえで重要な資料となっている。
[岡本 勇]
福井県若狭町にある縄文時代の低湿地性貝塚。縄文草創~前期の遺物を出土。三方湖に注ぐ鰣(はす)川と高瀬川の合流点付近に位置し,海抜下に遺物包含層が形成されるため,漆器・木器などの有機質の遺物や,食料残滓(ざんし)である動植物の遺存体が当時のままに保存され,縄文時代の道具と製作技術や食生活の復原に役立つ膨大な資料が出土して,縄文時代のタイムカプセルともよばれる。おもな出土遺物は漆器・木器・漆塗櫛・飾り弓・丸木弓・丸木舟・櫂(かい)・石斧柄・編物・縄など,また糞石(ふんせき)も検出された。ヒョウタンの果皮と種子が出土し,縄文時代の栽培植物として注目された。出土品は重文。
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(天野幸弘 朝日新聞記者 / 今井邦彦 朝日新聞記者 / 2007年)
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[ウリ類の利用の歴史]
野菜や果物,生活用具として広がったウリ類の利用の歴史は,栽培植物の中で最も古いものの一つである。ヒョウタンの遺体は,南アメリカのペルーでは前1万3000‐前1万1000年,タイでは前1万‐前6000年,エジプトでは前3500‐前3300年の遺跡から,そして日本でも前8000‐前7500年の縄文早期の鳥浜貝塚などの遺跡から発掘され,アフリカ原産と推定されるこの植物が古くから新旧両大陸で利用のあったことが確認できる。食用とされるマクワウリは原産地から離れた日本でも,水田農耕開始とほぼ同じ時期,前200‐前100年の弥生前期の遺跡から種子が発掘されている。…
…その後,中国の農書には漆について記述しているものが多く,たとえば元の王禎の《農書》は漆はほうぼうにあるが,梁(河南)・蜀(四川)のものがよく,春分前後に移栽し,木がのびたら6~7月に皮を切って漆液をとるとし,また漆は〈成り易(やす)く,利博(ひろ)し〉とし,有利な経済作物であることを述べている。【佐藤 武敏】
【日本における利用】
日本では縄文前期の鳥浜貝塚から漆塗櫛・容器が出土し,漆の利用が古いことを示している。伝説では《色葉字類抄》に倭武皇子(やまとたけるのみこ)が阿貴山で漆樹で指を染めたのでその汁を塗らせ,漆部官を任じたとある。…
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[日本]
縄文時代に日本自生植物の栽培化が行われていたかどうかは定かでない。日本園芸の発祥は,現時点では福井県鳥浜貝塚から出土した縄文前期のヒョウタンとリョクトウである。《古事記》には70種あまりの植物名があがるが,1/4は外来植物であり,園芸植物にはアオナ(カブラ),ウリ,オオネ(ダイコン),カミラ(ニラ),ハジカミ(ショウガ),タチバナ,ハスなどがある。…
…明治以降は〈けはひ〉は〈美容〉に取って代わられ,懐旧的な表現や気取った表現をする場合に限り〈けしよう〉と区別して使われるようになった。 人類の化粧の起源は旧石器時代にさかのぼるといわれているが,日本でも縄文時代前期の福井県鳥浜貝塚から赤色漆塗りの木櫛(きぐし)が出土しており,当時すでに髪を梳(す)くという広義の化粧が行われていたことが確認されている。また《魏志倭人伝》には〈男子は大小と無く,皆黥面(げいめん)文身す〉〈朱丹を以って其の身体に塗る,中国の粉を用うるが如きなり〉〈女王を去る四千余里,又裸国,黒歯国有り〉などとあり,弥生時代に呪術や部族の識別,階層の表示などと関連した原初的な化粧が行われていたことを物語っている。…
※「鳥浜貝塚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
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