鷽替(読み)うそかえ

精選版 日本国語大辞典 「鷽替」の意味・読み・例文・類語

うそ‐かえ‥かへ【鷽替】

  1. 〘 名詞 〙 福岡県太宰府、および東京都江東区亀戸(かめいど)天満宮などで、参詣人が木製の鷽を替え合う神事。昨年の凶をうそにして今年の吉に取り替える意という。太宰府では正月七日夜の酉(とり)の刻(午後五~七時)に行なう。鷽は神社から出し、中に一個ある黄金製のものを得た者には、幸運が来るとした。亀戸では一月二五日、神主が参詣人の持参した鷽を受け取り、別のものと取り替える。鷽替の神事。鷽替祭。鷽祭。《 季語・新年 》
    1. 鷽替(左 亀戸天満宮 右 太宰府天満宮)
      鷽替(左 亀戸天満宮 右 太宰府天満宮)
    2. [初出の実例]「鷽替へは萩より女房油断せず」(出典:雑俳・柳多留‐七九(1824))

鷽替の語誌

( 1 )鷽は天神の御使鳥とされる。その由来は、菅原道真が遭難の折、鷽が道真を救ったからとも、また、鷽が天満宮の梅の蕾や新芽を求めて数多く集まってくるからともいわれる。
( 2 )鷽の名の由来はその鳴き声が「うそ(嘯=口笛)」に似ているからだという。「うそぶく(嘯)」という行為は病魔悪霊を退散させる呪的な行為であった。そのため、木製の鷽が火伏せのまじないともされていた。
( 3 )鷽替神事はもと依代(よりしろ)を奪い合う年占一つであったと考えられるが、それとは別に、一年分の嘘を節分小正月など特定の日に儀礼的に払う民俗各地に見られる。「鷽」が「嘘」にも通じるところから、これらが未分化な形でとりこまれ定着したのであろう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鷽替」の意味・わかりやすい解説

鷽替
うそかえ

福岡県太宰府市太宰府天満宮や東京都江東区亀戸天神社などで行なわれる,鷽(ウソ)と呼ばれる木彫りの鳥を新しいものと交換する行事。太宰府天満宮の鷽替は,1月7日夜に,追儺の祭りである鬼すべの前段階の行事として行なわれる。鷽を手にした参拝者たちが注連縄をめぐらせた楼門前に参集し,暗闇のなか「替えましょう,替えましょう」と言いながらお互いの鷽を交換し合う。この時,人々のなかに神職が 12個の金の鷽を持って紛れており,運良くその金の鷽を手にした人は,幸運に恵まれるといわれている。鷽と天神(→菅原道真)との関係については,天神がハチ大群に襲われた際に鷽が救ったとも,太宰府天満宮の祭りの日に鷽が害虫を駆除したともいわれ,一説に鷽の文字が學に似ているからなどともいわれている。また,鷽替の鷽は,その羽部分の形が円柱形の半周分を削り掛けにしたものであることから,依代の一種と考えられている。一方,亀戸天神社では 1月24,25日に行なわれ,参拝者が前年にもらった鷽を神社に納めて新しいものをもらって帰る日となっている。鷽はその読みが嘘に通じることから,日頃知らず知らずのうちについている嘘を天神の力で誠の心に変えると説かれるが,一般には悪運を嘘にして幸運に変える行事とされており,確実に合格をかちとるお守りとして,この日に鷽を買い求める受験生も多い。(→天神信仰

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百科事典マイペディア 「鷽替」の意味・わかりやすい解説

鷽替【うそかえ】

1月7日や25日に九州の太宰府天満宮のほか東京亀戸天神などでも行われる神事。ヤナギの木で頭と尾を黒く口の辺を赤くし,背を緑にして金箔をつけた鷽をつくり,参拝者が〈かえましょ,かえましょ〉といって互いに交換し,金の鷽に当たれば幸運がある。一年中の嘘(うそ)を鷽に託するとも,不幸を嘘にして幸に替えるのだともいう。

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