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デジタル大辞泉
「黒い雨」の意味・読み・例文・類語
くろいあめ【黒い雨】[書名]
井伏鱒二の小説。昭和40~41年(1965~1966)発表。広島の原爆を扱った記録的作品。黒い雨に打たれた姪の結婚話が破談になるのを通して、原爆の悲劇を日常生活の場で描く。

を原作とする映画。今村昌平監督、平成元年(1989)公開。第63回キネマ旬報ベストテンの日本映画ベストワン作品。第13回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞。
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くろいあめ【黒い雨】
井伏鱒二の長編小説。1965‐66年《新潮》に連載,加筆訂正のうえ新潮社から刊行。第19回野間文芸賞受賞。原爆投下という人類史上未曾有の惨事をささやかな庶民生活の日常的視点からとらえた作品で,原爆文学の最高の達成とされる。被爆当時広島市内に住んでいた主人公閑間(しずま)重松が5年近くたって,郷里の村で療養生活をしながら当時の日記を清書するという構成になっている。多くの聞書きを含む被爆時の阿鼻叫喚の地獄と,現在の平和な山村の美しい自然と日常が対照されながら書き進められているために,原爆の悲惨さと恐ろしさがいっそう際だつ。
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黒い雨
くろいあめ
井伏鱒二(いぶせますじ)の長編小説。1965年(昭和40)1月号から66年9月号まで『新潮』に連載。広島の原爆を扱った、重い記録的小説である。被爆者閑間(しずま)重松の姪(めい)矢須子(やすこ)に、戦後5年ほどして結婚話が持ち上がるが、やがて彼女に原爆症の症状が出始め、結局破談になる。そのことをきっかけとして、重松は原爆の記録に挑む。そういう枠組みを借りて、原爆地獄が、冷静な生活者の目を通して、みごとな平静さで写し出され、原爆小説というよりは戦争小説の最高傑作となりえている。井伏文学の代表作。
[磯貝英夫]
『『黒い雨』(新潮文庫)』
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黒い雨
①井伏鱒二の小説。1965年~1966年発表。広島の原爆の悲劇を描いた代表作。第19回野間文芸賞受賞。
②1989年公開の日本映画。①を原作とする。監督:今村昌平、脚本:石堂淑朗、今村昌平、美術:稲垣尚夫。出演:田中好子、北村和夫、市原悦子、小沢昭一、三木のり平、石田圭祐ほか。第63回キネマ旬報ベスト・テンの日本映画ベスト・ワン作品。第13回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀主演女優賞(田中好子)、最優秀助演女優賞(市原悦子)受賞。第44回毎日映画コンクール日本映画大賞、美術賞ほか受賞。
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世界大百科事典内の黒い雨の言及
【原爆文学】より
…作品に林京子《祭りの場》(1975),《ギヤマンビードロ》(1978),《無きが如き》,竹西寛子《儀式》(1963),《管絃祭》,渡辺広士《終末伝説》(1978)などがある。第3は,原爆がもたらした悲劇を庶民の日常生活をとおして書き,文学史に残る傑作と称される井伏鱒二の《黒い雨》(1965‐66)のように,被爆者ではないが,広島,長崎と出会った良心的な文学者たちによって,さまざまな視点から広島,長崎,原水爆,核時代がもたらす諸問題と人間とのかかわりを主題とする作品が書かれた。作品に佐多稲子《樹影》(1970‐72),いいだもも《アメリカの英雄》(1965),堀田善衛《審判》(1960‐63),福永武彦《死の島》(1966‐71),井上光晴《地の群れ》(1963),《明日》,高橋和巳《憂鬱なる党派》(1965),小田実《HIROSHIMA》(1981)などがある。…
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