阿鼻叫喚(読み)あびきょうかん

四字熟語を知る辞典「阿鼻叫喚」の解説

阿鼻叫喚

悲惨な状況になり、人々が泣き叫んだりして混乱している様子。

[使用例] 幾十万にも及ぶ広島在住のの民を一瞬にして阿鼻叫喚の地獄にさらしたということであります[井伏鱒二*黒い雨|1965~66]

[使用例] 頭のない者、手だけの死体、はらわたをちぎられた臓物のかたまりのような者など、それに麻酔剤が欠乏して、麻酔なしで足の切断手術をやっているので、病舎の方から、阿鼻叫喚のうめき声が聞えて来る[阿川弘之*雲の墓標|1955]

[使用例] 寮生は一斉に食堂に殺到し、「飯れ!」「汁呉れ!」と、空になった御飯のおひつや汁鍋を振りかざして各所から叫びがあがる。ボーイが「オーッ」と返事をする。阿鼻叫喚のちまたである[大野晋*日本語と私|1999]

[解説] 「阿鼻」はぼん「アヴィーチ」の音訳で、絶え間ないこと。同時に、「阿鼻地獄」(げん地獄)という苦しみの絶え間ない地獄の名前でもあります。また、「叫喚」はわめき叫ぶことで、「叫喚地獄」という、叫び声に満ちた地獄の名前でもあります。つまり、「阿鼻叫喚」とは、阿鼻地獄・叫喚地獄を思わせる、むごたらしい有様のことです。
 例文の[黒い雨]では原爆投下の様子が、[雲の墓標]ではB 29の爆撃を受けた宇佐海軍航空隊の様子が描かれています。後者では、「うめき声」とあるように、必ずしも叫び声は聞こえていません。地獄絵図のような状態を表現しており、やや変わった使い方と言えます。
 一方、[日本語と私]の例では、寮の食堂のけんそうをユーモラスに「阿鼻叫喚」と表現しています。このように、収拾がつかない騒ぎを表現するときにも「阿鼻叫喚」は使われます。応用範囲の広いことばと言えるでしょう。

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デジタル大辞泉「阿鼻叫喚」の解説

あび‐きょうかん〔‐ケウクワン〕【×阿鼻叫喚】

仏語。阿鼻地獄と叫喚地獄とを合わせた語。地獄のさまざまの責め苦にあって泣き叫ぶようすにいう。
悲惨な状況に陥り、混乱して泣き叫ぶこと。「一瞬の事故で車中は阿鼻叫喚の巷(ちまた)と化す」

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精選版 日本国語大辞典「阿鼻叫喚」の解説

あび‐きょうかん ‥ケウクヮン【阿鼻叫喚】

〘名〙
① 阿鼻地獄と叫喚地獄。両者とも八大地獄の一つ。また、とくに阿鼻地獄のことを指すこともある。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)二「多くの官女が泣さけぶは、あびけうくん。陸(くが)に源平戦ふは取りもなをさず修羅道の苦しみ」
② 阿鼻地獄に陥った者のように非常な惨苦に陥って、号泣し救いを求めること。
※天国の記録(1930)〈下村千秋〉一「女達の叫び声が、地獄の底から漏れて来る阿鼻叫喚(アビケウクヮン)に聞えた」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「阿鼻叫喚」の解説

阿鼻叫喚
あびきょうかん

阿鼻地獄叫喚地獄。またはただ阿鼻地獄のみをさすこともある。阿鼻地獄は特に極悪人のおもむくところで,そこで受ける痛のために泣き叫ぶのでこう呼ばれる。現在では,苦痛などでわめき苦しむさまを表わすのに用いられる。

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