半夏生(読み)はんげしょう

精選版 日本国語大辞典 「半夏生」の意味・読み・例文・類語

はんげ‐しょう ‥シャウ【半夏生】

〘名〙
① (半夏(カラスビシャク)が生える頃の意) 七十二候の一つ。夏至の第三候。夏至から一一日目で、今の七月二日頃にあたる。この日には毒気が降るといっていっさいの野菜を食べず、また竹節虫を生じる時だといって竹の子を食べないなどの俗習がある。はんげ。《季・夏》
※簠簋内伝(14C後頃か)三「半夏生事 五月中十一日目可之。此日不不浄、不婬欲、不五辛酒肉日也」
ドクダミ科多年草。本州から沖縄にかけての低湿地に生え、観賞用または薬用に栽培されることもある。高さ〇・六~一メートル。全体に一種の臭気がある。葉は長楕円形で基部はやや耳形になり長さ約一〇センチメートル。七月、茎の上部に下半部が白い葉を二~三枚つけ、そのわきから淡黄色の花弁のない小さな虫媒花を密生した花穂をたれる。茎・葉を胃腸・袪痰(きょたん)薬に用いる。和名は、半夏生の頃に白い葉をつけるからとも、また、葉の半面が白いのを半分化粧したという意味からともいう。漢名、三白草。かたしろぐさ。かたじろ。みつじろ。おしろいかけ。はんげしょうぐさ。〔物品識名(1809)〕

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デジタル大辞泉 「半夏生」の意味・読み・例文・類語

はんげ‐しょう〔‐シヤウ〕【半夏生】

雑節の一。太陽黄経100度にある日で、夏至から11日目。7月2日ごろにあたる。このころから梅雨が明け、田にカラスビシャク(半夏)が生えるのを目安に田植えの終期とされてきた。半夏はんげ 夏》「いつまでも明るき野山―/時彦」
ドクダミ科の多年草。水辺に生え、高さ約80センチ。全体に臭気がある。葉は長卵形で互生。6、7月ごろ、上部の葉が数枚白くなり、これと向かい合って花穂を出し、白い小花が咲く。名は1のころ咲くからとも、葉の下半分が白いので半化粧の意ともいわれる。かたしろぐさ。

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改訂新版 世界大百科事典 「半夏生」の意味・わかりやすい解説

半夏生 (はんげしょう)

雑節の一つ。夏至から11日目で,太陽暦では7月2日ごろ。このころ〈半夏〉(カラスビシャク)という名の毒草が生えるのでこの名が生まれたという。全国的に農繁期の一応の終了期とされている。ハンゲハンゲなどの語呂合せで〈半夏半毛〉〈半夏半作〉などといい,この日までに田植を終わらないと秋の実りが遅れて半分しか収穫量が見込めないというが,これはアワまきについてもいわれる。〈ハンゲの後に農なし〉などともいう。作業に一段落つけてから数日間の農休みをとり,餅をついたり,だんご,すし麦こがし,まんじゅうなどを作って食べる所が多いが,ヤマノイモやサバ(鯖)を食べる所もある。休養と栄養をとって体力の充実をはかろうとしたものであろう。大阪地方では,稲の穂が多く分かれて生長するようにとの願いをこめて,この日タコ(蛸)を食べる風習がある。毒が降るので野菜の収穫を控えるというのは,ハンゲの名称と関連する伝承である。半夏をハゲ(禿)と解し,畑がはげるとか田畑にはげ爺さんがいるからなどといって,ことさら働くことを忌む伝承もある。
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百科事典マイペディア 「半夏生」の意味・わかりやすい解説

半夏生【はんげしょう】

七十二候(二十四節気)の一つ,第30候。雑節の一つでもある。太陽の黄経が100°に達する時で,夏至から11日目,現行暦では7月2日ころ。このころ半夏(カラスビシャク)が生ずるのでこの名があるという。田植はこの日までに終わり,梅雨はこの時から明けるとされる。
→関連項目ハンゲショウ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「半夏生」の意味・わかりやすい解説

半夏生
はんげしょう

半夏ともいう。七十二候の一つで,本来は夏至後 10日目から小暑の前日までをいったが,現行暦では太陽の黄経が 100°に達する日 (7月1日か2日) を半夏生とし,雑節の一つとして記載している。この頃半夏生が生じるのでこの名があるといい,各地で種々の俗信物忌が行われた。また「半夏半作」といって,この日以後田植えをしても収穫が少いとし,この日を田植え終了の祝日とした地方も多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「半夏生」の意味・わかりやすい解説

半夏生
はんげしょう

七十二候の一つ。夏至(げし)の第三候にあたり、現在は雑節の一つとして残っている。太陽の位置が黄経100度にあるときと定義されているが、暦のうえの入梅は80度、夏至は90度であるから、半夏生は夏至を挟んで、入梅と対称の位置にあるときにあたり、陽暦では7月2日ごろとなる。半夏はドクダミ科の多年草で、別名カタシログサ。水辺や低湿地に生え、一種の臭気をもつ。その半夏が生えるころという意味である。昔の農事暦では、このころまでに田植を終えるとされていた。迷信的暦注としては、この日毒気が降るので、「前夜から井戸や泉に蓋(ふた)をすべし」といわれた。

[根本順吉]

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日本文化いろは事典 「半夏生」の解説

半夏生

半夏生〔はんげしょう〕は夏至を3つに分けた最後の3分の1の期間ことを指します。つまり、夏至から数えて11日目の7月2日頃から七夕(7月7日)頃までの5日間が半夏生です。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「半夏生」の解説

半夏生 (ハンゲショウ・ハゲショ;ハゲショウ)

学名:Saururus chinensis
植物。ドクダミ科の多年草,園芸植物,薬用植物

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世界大百科事典(旧版)内の半夏生の言及

【季語】より

…暮春),草餅。
[夏]
 薄暑(やや暑さを感じる初夏の候),麦秋(麦の刈入れ時),入梅(立春から135日目の梅雨の入り),梅雨(入梅から30日間),五月雨(さみだれ)(梅雨の雨),五月晴(さつきばれ)(梅雨の晴れ間),短夜(みじかよ),半夏生(はんげしよう)(夏至から11日目の物忌みの日),梅雨明,盛夏(夏の盛り),卯の花腐(くた)し(春雨と梅雨の間の長雨),青嵐(あおあらし)(青葉のころの強い風),薫風(さわやかな夏の南風),雹(ひよう),虹,雷,雲の峰(入道雲に同じ),日盛(ひざかり)(夏の日中の暑いさかり),油照(あぶらでり)(薄く曇ってむし暑い日和),炎天(真夏の燃えるような空),冷夏(異常に温度の低い夏),朝焼,夕焼,大暑(二十四節気の一つで夏の暑さのさかり),土用(立秋の前の18日間,暑中という),土用波(土用のころの高波),更衣(ころもがえ)(夏服に着がえること),雨乞,行水,虫干(土用干ともいう),花火,納涼(涼をとること),昼寝,氷室(ひむろ)(氷を貯蔵していた穴),清水(しみず),水中(あた)り(慣れないなま水で胃腸を損なうこと),早乙女(さおとめ)(田植えをする若い女性),さなぶり(田植えじまいの祝い,または休み日),祭(夏祭,もとは葵祭をさした),安居(あんご)(仏家の夏の修行),蛍狩,鵜飼,時鳥(ほととぎす),蟬,鯉幟(こいのぼり),夏越(なごし)(陰暦6月の晦日。茅(ち)の輪くぐりなどの祓(はらえ)が行われる),菖蒲湯(端午の節句の邪気払い),卯(う)の花,木下闇(こしたやみ)(夏の木立の昼なお暗いさま),鮓(すし),心太(ところてん)。…

※「半夏生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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