七十二候(読み)しちじゅうにこう

精選版 日本国語大辞典 「七十二候」の意味・読み・例文・類語

しちじゅうに‐こう シチジフ‥【七十二候】

〘名〙
陰暦で、五日を一候とし、三候を一気とし、六候を一か月とし、二十四気すなわち一年間を七二分して季候の変化を示したもの。正月の第一気「立春」に「東風解凍、蟄虫始振、魚上冰」、「立秋」に「涼風至、白露降、寒蝉鳴」、「立冬」に「水始冰、地始凍、雉入大水蜃」とする類。〔拾芥抄(13‐14C)〕
※十善法語(1775)五「雲をみて楽むものよく四季七十二候の変をしるといふ」
俳諧で、七二句からなる連句形式。懐紙三枚に、表八句裏一四句、二の表・二の裏・名残の表各一四句、名残の裏八句、計七二句をつらねたものをいう。〔俳諧・俳諧古今抄(1730)〕

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デジタル大辞泉 「七十二候」の意味・読み・例文・類語

しちじゅうに‐こう〔シチジフニ‐〕【七十二候】

二十四節気の各節気をそれぞれ三つに分けたもの。
72句からなる連歌連句の一形式。懐紙の初表しょおもて8句、初裏14句、二の表・裏と名残の表に各14句、名残の裏8句を書き連ねたもの。
[補説]1は、日本では具注暦などに中国渡来のものがそのまま記されていたが、貞享暦作成の際に日本の気候に合うよう改められた。例えば、春分は玄鳥至(ツバメが南から来る)・電乃発声(雷鳴がとどろき始める)・始電(稲光が初めて光る)の三つに分けられていたものが、日本では雀始巣(スズメが巣をかける)・桜始開(サクラの花が咲き始める)・雷乃発声(雷鳴がとどろき始める)とされる。

七十二候明治略本暦による)
二十四節気日取り(頃)七十二候
立春初候2月4日~2月8日東風解凍はるかぜこおりをとく
立春次候2月9日~2月13日黄鶯睍睆こうおうけんかんす
立春末候2月14日~2月18日魚上氷うおこおりをいずる
雨水初候2月19日~2月23日土脉潤起つちのしょううるおいおこる
雨水次候2月24日~2月28日霞始靆かすみはじめてたなびく
雨水末候3月1日~3月5日草木萌動そうもくめばえいずる
啓蟄初候3月6日~3月10日蟄虫啓戸すごもりむしとをひらく
啓蟄次候3月11日~3月15日桃始笑ももはじめてさく
啓蟄末候3月16日~3月20日菜虫化蝶なむしちょうとなる
春分初候3月21日~3月25日雀始巣すずめはじめてすくう
春分次候3月26日~3月30日桜始開さくらはじめてさく
春分末候3月31日~4月4日雷乃発声かみなりすなわちこえをはっす
清明初候4月5日~4月9日玄鳥至つばめきたる
清明次候4月10日~4月14日鴻雁北こうがんかえる
清明末候4月15日~4月19日虹始見にじはじめてあらわる
穀雨初候4月20日~4月24日葭始生あしはじめてしょうず
穀雨次候4月25日~4月29日霜止出苗しもやみてなえいずる
穀雨末候4月30日~5月4日牡丹華ぼたんはなさく
立夏初候5月5日~5月9日鼃始鳴かわずはじめてなく
立夏次候5月10日~5月14日蚯蚓出みみずいづる
立夏末候5月15日~5月20日竹笋生たけのこしょうず
小満初候5月21日~5月25日蚕起食桑かいこおきてくわをはむ
小満次候5月26日~5月30日紅花栄べにばなさかう
小満末候5月31日~6月5日麦秋至むぎのときいたる
芒種初候6月6日~6月10日蟷螂生かまきりしょうず
芒種次候6月11日~6月15日腐草為蛍くされたるくさほたるとなる
芒種末候6月16日~6月20日梅子黄うめのみきばむ
夏至初候6月21日~6月26日乃東枯なつかれくさかるる
夏至次候6月27日~7月1日菖蒲華あやめはなさく
夏至末候7月2日~7月6日半夏生はんげしょうず
小暑初候7月7日~7月11日温風至あつかぜいたる
小暑次候7月12日~7月16日蓮始開はすはじめてひらく
小暑末候7月17日~7月22日鷹乃学習たかすなわちわざをならう
大暑初候7月23日~7月28日桐始結花きりはじめてはなをむすぶ
大暑次候7月29日~8月2日土潤溽暑つちうるおうてむしあつし
大暑末候8月3日~8月7日大雨時行たいうときどきふる
立秋初候8月8日~8月12日涼風至すずかぜいたる
立秋次候8月13日~8月17日寒蝉鳴ひぐらしなく
立秋末候8月18日~8月22日蒙霧升降ふかききりまとう
処暑初候8月23日~8月27日綿柎開わたのはなしべひらく
処暑次候8月28日~9月1日天地始粛てんちはじめてさむし
処暑末候9月2日~9月7日禾乃登こくものすなわちみのる
白露初候9月8日~9月12日草露白くさのつゆしろし
白露次候9月13日~9月17日鶺鴒鳴せきれいなく
白露末候9月18日~9月22日玄鳥去つばめさる
秋分初候9月23日~9月27日雷乃収声かみなりすなわちこえをおさむ
秋分次候9月28日~10月2日蟄虫坏戸むしかくれてとをふさぐ
秋分末候10月3日~10月7日水始涸みずはじめてかるる
寒露初候10月8日~10月12日鴻雁来こうがんきたる
寒露次候10月13日~10月17日菊花開きくのはなひらく
寒露末候10月18日~10月22日蟋蟀在戸きりぎりすとにあり
霜降初候10月23日~10月27日霜始降しもはじめてふる
霜降次候10月28日~11月1日霎時施こさめときどきふる
霜降末候11月2日~11月6日楓蔦黄もみじつたきばむ
立冬初候11月7日~11月11日山茶始開つばきはじめてひらく
立冬次候11月12日~11月16日地始凍ちはじめてこおる
立冬末候11月17日~11月21日金盞香きんせんかさく
小雪初候11月22日~11月26日虹蔵不見にじかくれてみえず
小雪次候11月27日~12月1日朔風払葉きたかぜこのはをはらう
小雪末候12月2日~12月6日橘始黄たちばなはじめてきばむ
大雪初候12月7日~12月11日閉塞成冬そらさむくふゆとなる
大雪次候12月12日~12月16日熊蟄穴くまあなにこもる
大雪末候12月17日~12月21日鱖魚群さけのうおむらがる
冬至初候12月22日~12月26日乃東生なつかれくさしょうず
冬至次候12月27日~12月31日麋角解さわしかのつのおつる
冬至末候1月1日~1月4日雪下出麦ゆきわたりてむぎのびる
小寒初候1月5日~1月9日芹乃栄せりすなわちさかう
小寒次候1月10日~1月14日水泉動しみずあたたかをふくむ
小寒末候1月15日~1月19日雉始雊きじはじめてなく
大寒初候1月20日~1月24日欵冬華ふきのはなさく
大寒次候1月25日~1月29日水沢腹堅さわみずこおりつめる
大寒末候1月30日~2月3日雞始乳にわとりはじめてとやにつく

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「七十二候」の意味・わかりやすい解説

七十二候
しちじゅうにこう

中国の暦で二十四節気(にじゅうしせっき)の各1気をさらに3等分して、1候をほぼ5日の3候とし、1年を72候とし、そのおのおのに太陽があるときの季節に相応する名称を付して、これを七十二候という。たとえば春分2月中の第一候を玄鳥至、第二候を電乃発声、第三候を始電という。日本でも具注(ぐちゅう)暦には記載されたが、仮名暦頒暦には一般に記載されなかった。初めは中国渡来のままの名称で暦に記載されたが、これでは日本の時候に適合しないので、渋川春海(しぶかわはるみ)は1685年(貞享2)「貞享暦(じょうきょうれき)」施行のとき、日本に適するような名称に改めて「新制七十二候」を制定した。さらに1755年(宝暦5)宝暦(ほうれき)改暦土御門(つちみかど)(安倍(あべ))泰邦(やすくに)によっていくらか改められたが、以後改訂もなく用いられてきた。1873年(明治6)太陽暦施行後も1883年まで略本暦には記載された。

[渡辺敏夫]

『渡辺敏夫著『日本の暦』(1976・雄山閣出版)』『川口謙二他著『こよみ事典』(1977・東京美術)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「七十二候」の意味・わかりやすい解説

七十二候
しちじゅうにこう

中国,日本に古くから普及している季節の区分二十四節気は太陽の黄経によって1年を 24等分したものであるが,昔中国では各気をさらに三候に細分して七十二候とし,中国の故事にちなむ名前 (獺祭魚,鹿角解など) や自然現象にちなむ名前 (東風解凍,桃始華,虹始見など) をつけて呼んでいた。前3世紀頃,中国では七十二候が完備し,それがそのまま日本の暦に採用されたが,中国と日本とでは気候が必ずしも一致せず,また動物や植物にも多少の違いがあるので,江戸時代に日本独自の本朝七十二候がつくられた。たとえば中国の獺祭魚は日本で土脈潤起,萍始生は葭始生,王瓜生は竹笋生,反舌無声は梅子黄などである。

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改訂新版 世界大百科事典 「七十二候」の意味・わかりやすい解説

七十二候 (しちじゅうにこう)
Qī shí èr hòu

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百科事典マイペディア 「七十二候」の意味・わかりやすい解説

七十二候【しちじゅうにこう】

二十四節気

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世界大百科事典(旧版)内の七十二候の言及

【二十四節気】より

…現在でも通用している二十四節気はこの黄道を24等分して決められた特定の黄経の度に太陽が移動してきた時点によって日付が決定されている。 元来は置閏法によって季節を調節しても,年によっては最大1ヵ月に近い差異が生じたため,暦に二十四節気を書き込んで正確な季節を知る目印にしたわけであるが,すでに《漢書》律暦志の本文に説明されているように,前3世紀末ころに節気の間をさらに3等分して1候を決め,約5日ごとに初候,次候,末候として1年を七十二候とする方法も完備した。北魏の正光暦(520)以降の暦については正史の律暦志などに七十二候の名称が記録されてきた。…

※「七十二候」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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