O157(読み)オーいちごなな

共同通信ニュース用語解説 「O157」の解説

O157

腸管出血性大腸菌の一種で、少量でも食中毒の原因となる。発熱や下痢、血便を引き起こし、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を併発して死亡することもある。抵抗力が弱い乳幼児や高齢者は重症化しやすい。生または加熱が不十分な肉、野菜など幅広い食品で感染例がある。75度で1分以上加熱するか塩素で殺菌する。1996年には堺市集団食中毒が発生し9千人以上が感染、小学生3人が死亡した。

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百科事典マイペディア 「O157」の意味・わかりやすい解説

O-157【オーいちごなな】

病原性大腸菌のうち腸管出血性大腸菌の一つ。腸管出血性大腸菌は菌の細胞表面からの分子構造属性によって,現在O-1からO-173までが知られている。O-157と呼ばれるタイプは,感染すると菌の産生するベロ毒素によって血の混じった下痢便がみられ,重症化すると溶血性尿毒症候群により生命にかかわることがある。1982年,米国でファーストフード店のハンバーガーなどの食中毒で初めて報告され,以後,カナダ,英国,スウェーデンなど先進国で蔓延(まんえん)。日本では1984年初の感染が報告され,1990年10月浦和市の幼稚園井戸水による感染で死者2人を出した。1996年には5月岡山県で集団食中毒が起こり,7月に大阪府堺市で学校給食によるとみられる感染を中心に5000人以上の患者が出るなど,大きな社会問題となった。1996年12月末までに罹患者数9372人,死者12人を数える。なお,厚生省は1996年8月,O-157を含む腸管出血性大腸菌感染症指定伝染病とし,伝染病予防法の一部を初めて限定的に適用,文部省学校伝染病とし衛生管理の総点検を指示した。
→関連項目外傷後ストレス障害カテキン感染症予防法抗菌グッズ世界食糧サミットHACCP法定伝染病溶血性尿毒症症候群

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「O157」の意味・わかりやすい解説

O157
おーいちごなな

赤痢菌に似た強い毒素(ベロ毒素=シガトキシン)をだす「腸管出血性大腸菌」の一種。腸管出血性大腸菌に感染すると、はげしい腹痛、下痢、血便をおこし、抵抗力の少ない高齢者や小児など1割ほどの患者は重い腎臓・脳障害を伴う「溶血性尿毒症症候群」になり、ときに死亡する。1996年(平成8)春、O157により岡山県の小学校給食で死者2人がでるなどの後、同年7月、大阪府堺市の学校給食で患者9523人(1997年8月に確定、うち死者3人)という世界最大規模の食中毒がおき、その名が全国に広がった。厚生省(現厚生労働省)は同年8月、腸管出血性大腸菌感染症を指定伝染病に格上げした。その後、1999年に施行された感染症予防・医療法(感染症法)で3類感染症に分類された。1982年、アメリカでハンバーガーの食中毒から菌がみつかったのが最初で、以後、世界各地でみつかっている。日本では1990年、埼玉県浦和市(現さいたま市)の幼稚園の井戸水から約300人が感染、2人が亡くなったが、軽視されていた。O157はもともとウシなどの腸におり、解体処理時に肉、さらに接触した食品から広がるが、潜伏期間が数日と長く、原因食品の特定はむずかしい。O157は高温には弱く、75℃で1分以上の加熱で死滅するので、肉などもよく火を通せば心配はない。他の食中毒防止策同様、手洗いや衛生的な食品の取り扱いが重要である。

[田辺 功]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「O157」の意味・わかりやすい解説

O-157
オーいちごなな

病原性大腸菌のうち,毒性の強いベロ毒素を産出する腸管出血性大腸菌。ウシなどの腸内に生息し,強い感染力をもつうえ潜伏期間が長く,重症になって溶血性尿毒症症候群などを引起すと抗生物質がきかなくなるといわれ,抵抗力の弱い幼児や老人が感染しやすい。 1996年5月に岡山県で約 400人が発症,児童2人が死亡したのを発端に,またたく間に全国に広まった。そのほとんどが学校給食による集団発生で,7月には大阪府堺市で約 6500人の患者が発生,全国で 11人が死亡,患者は 9000人をこえた。感染源の特定が遅れたこともあり,生鮮食品の売上げが落ちたり,プールが閉鎖されたりなどの事態にもなった。同年8月,当時の厚生省はO-157による感染症 (腸管出血性大腸菌感染症) を指定伝染病に指定,現在,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で3類感染症と定義される。

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