携帯電話(読み)ケイタイデンワ

デジタル大辞泉 「携帯電話」の意味・読み・例文・類語

けいたい‐でんわ【携帯電話】

無線を用いて長距離通信のできる小型の移動電話。音声通話以外に、電子メールの送受信、インターネット接続、デジタルカメラワンセグなど種々の機能をもつものは、特にスマートホンまたはフィーチャーホンと呼ばれる。ケータイ。セルラーホンモバイルホン

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精選版 日本国語大辞典 「携帯電話」の意味・読み・例文・類語

けいたい‐でんわ【携帯電話】

  1. 〘 名詞 〙 蓄電池などを電源とした持ち歩きができる小型の電話機。平成に入って急激に普及した。無線電話。移動電話。携帯。

携帯電話の補助注記

「朝野新聞‐明治一八年‐一〇月二七日」に「今度海軍省にて携帯電話機数十個を製造になる由にて」とあるが、当時の仕様については未詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「携帯電話」の意味・わかりやすい解説

携帯電話
けいたいでんわ

電波を伝送媒体として用い、持ち歩いて使用する小型の情報端末。おもな機能には音声や映像による通話機能、文字・画像による電子メールや、動画を含むウェブページなどを閲覧するデータ通信機能があり「移動通信」を実現している。通称「携帯」、記述するときは「ケータイ」とも表現される。なお、携帯電話として比較的高機能なスマートフォンでない端末をさす場合は、「フィーチャーフォン」という呼称でよばれることがある。また、日本独自の進化を遂げた高機能な携帯電話は、ガラパゴス諸島の生物(孤島であったがために独自の進化を遂げた)になぞらえて、「ガラパゴスケータイ」略して「ガラケー」という呼び名が用いられている。

[小林千寿]

沿革

携帯電話は通信方法により四つの世代に分けられる。

第1世代

第1世代はアナログ通信による音声通話が中心で、1946年にアメリカのセントルイス市で開始された自動車電話が世界最初の移動通信となる。日本では1979年(昭和54)に自動車電話サービスを開始。持ち運ぶことができる電話としては、1985年に重さ3キログラムの「ショルダーフォン」がNTT(日本電信電話株式会社)より発売された。そして1987年に携帯電話サービス(NTT大容量方式)、1989年(平成1)に日本移動通信(IDO、現KDDI)からTACS(タックス)(Total Access Communication System)方式のサービスが開始された。NTT大容量方式およびTACS方式は、FDMA方式(Frequency Division Multiple Access。周波数で利用者を分ける周波数分割多元接続方式)の技術を用いている。

[小林千寿]

第2世代

1990年代に入ると、通信方式がアナログからデジタルに移り変わり、これまでの音声通話に電子メール・テキスト情報閲覧機能が追加される。機器の小型化により個人へ向けた情報機器としての提供が始まるのが第2世代の大きな特徴である。国内では1993年にPDC(Personal Digital Cellular)方式のサービスが首都圏でスタートし、その一方で低価格なデータ通信を実現するPHS(personal handyphone system)サービスが1994年に開始された。海外ではヨーロッパを中心に100か国以上でGSM(Global System for Mobile communications)方式が採用された。PDCもGSMもTDMA方式(Time Division Multiple Access。時間をずらして利用者を分ける時分割多元接続方式)の技術を用いているが、互換性はない。携帯電話は個人が所有する時代になると同時にメール利用が普及。1999年に携帯向け情報配信「iモード」「EZweb」などがサービス開始されることで、一気に携帯向けのコンテンツ産業が拡大、通話よりもこちらが携帯電話の主要な機能となった。

[小林千寿]

第3世代

2000年にJ-フォン(のちボーダフォン、現ソフトバンクモバイル)よりカメラ付き携帯電話(写メール)が発売され、これまでのテキスト中心のコミュニケーションから、視覚的にもアプローチできる、だれでも楽しめるサービスとして普及した。2001年にNTTドコモがW-CDMA方式(Wide Band Code Division Multiple Access。広帯域CDMA方式)の「FOMA(フォーマ)」、2002年にはauがcdma2000方式を採用することにより、第3世代の幕開けとなる。第3世代携帯電話は通信速度の高速化により静止画だけでなく「ムービーメール」や「テレビ電話」のような動画の利用も可能となった。また2003年に定額制が導入され、通信料金を気にせず利用できるようになり、リッチコンテンツ(映像や音声のような表現力と情報量が大きいデジタル情報)の普及に大きく拍車をかけることになる。あわせて個人が日常的に利用する情報端末として、TV・ラジオ視聴、GPS(全地球測位システムGlobal Positioning System)、電子財布といった差別化された機能をもつものが多数登場し、データ通信と連携することで、より利便性を高めている。第3世代で用いられる通信方式はIMT-2000(International Mobile Telecommunication 2000、国際電気通信連合=ITUが国際標準化を進めている移動通信システム)を達成するための5種類が世界統一規格として勧告されており、国内で利用している携帯電話が海外でもそのまま使える国際ローミングに対応した機種も登場してきた。また、携帯電話でのデータ通信が普及すると同時に通信スピードの高速化が求められ、通信技術は第3世代を拡張した3.9世代のLTEが提供され最大75Mbpsでのデータ受信が可能となっている。LTEは各携帯通信事業者から4Gとしてサービスが提供されている。これは2010年12月にIMTによる声明として、第3.9世代に相当するLTEやWiMAX、あるいは第3.5世代に相当するHSPA+など、第3.5世代以上の技術に対しても4Gと呼称してよいとすることから来ているが、2013年8月時点で、本来の第4世代の通信方式で提供されているサービスは日本には存在しない。

[小林千寿]

第4世代

ITUが定めるIMT-Advanced規格に準拠する無線通信システムのことで、2012年1月にLTE-AdvancedとWirelessMAN-Advanced(WiMAX2)が承認されている。これにより高速移動時は100Mbps、低速移動時・停止時は最大1Gbpsの下り通信速度を目ざしている。日本の携帯通信事業社でもLTE-Advancedに向けた準備は進んでおり、2014年からLTE-Advancedの基地局などを整備、商用サービスは2015年にも始まる見通しで、当初は最大150Mbps前後と見込まれている。海外では、2013年7月から韓国のSKテレコムが最大で下り150Mbpsでの提供を開始している。また、アメリカのベライゾン・ワイヤレスVerizon Wireless、AT&T、スプリント・コーポレーションSprint CorporationがLTE-Advancedの導入を表明している。

[小林千寿]

システムと構造

携帯電話システムは、大きく基地局側と電話機側に分けられる。基地局側は、電波の届く範囲に存在する複数の携帯電話を収容する「無線基地局」、その無線基地局を収容する「移動通信制御局」、移動通信制御局どうしを結ぶ「中継線交換機」、携帯電話の加入者情報を収容する「ホームメモリ局」から構成される。一つの無線基地局から電波の届く範囲を「セル」とよぶが、携帯電話ではつねに端末の利用場所が移動するため、現在いるセルから、他のセルに移った場合でも継続して通信できるように、ホームメモリ局に携帯電話の加入者情報や位置情報を集約している。また着信時には、目的の携帯電話が存在する移動通信制御局まで回線を伸ばす追跡ルーチング機能や、携帯電話がセルをまたがる場所にいたときに複数のセルを同時に呼出しをかける一斉呼出し機能、通話中にセルをまたいで移動しても継続して通話ができるためのハンドオーバー機能など、携帯電話がシームレスに(切れ目なく)利用できるシステム構成がとられている。

 一方、電話機の構造は、大きく五つに分かれる。「アンテナ部」は無線基地局からの電波を効率よく送受信するためにあり、「送信受信部」では空気の振動である音声を電波である電気信号に変換を行う。「制御回路部」では発信や受信をスムーズに行う。これらに加えて「表示部」「電源部」で構成されている。携帯電話で通話以外のデータ通信の機能が向上するにつれ、制御回路で行う処理が高度化されると同時に、表示部の解像度や描写性能も著しく向上している。携帯電話は、電源として利用しているバッテリー容量に限りがあるため、高機能化と同時に消費電力を抑えるという制約のなかで小型化を実現しており、特許の塊といえる。1971年~1995年の間における特許・実用新案の出願件数は約1万8000件に上っている。

[小林千寿]

動向・課題・将来

2013年7月末時点での日本国内における携帯電話の契約数は1億3394万件、データ通信を行う携帯IP接続サービスも1億0699万件となっており、現代社会において個人どうしをつなぐ情報端末として重要な役割を果たしている。携帯電話の多くはデジタルカメラやオーディオ再生の機能を備え、日常的に写真を利用したコミュニケーションが行われるようになり、楽曲のダウンロード販売の一般化により音楽鑑賞形態も変化した。映像などの通信販売の窓口としても機能し、個人の生活スタイルをはじめ、これまでの産業構造そのものに大きな影響を与えている。同時に携帯電話自体も2008年にiPhoneが登場したことで、従来の通話を主体とした機器からインターネット情報端末へと大きく変化している。いままで日本で主流であった携帯事業社主体のコンテンツ課金が、App StoreやGoogle Playなどの端末事業社主体の課金モデルに変わったことで、企業や個人の携帯コンテンツ提供やアプリ提供に対するハードルが一気に低くなった。この変化こそが携帯ビジネス自体の構造改革となり、スマートフォンの普及に拍車がかかった一因といえる。スマートフォンの利用者数がフィーチャーフォンのそれを上回る一方で、多機能なスマートフォンを使いこなせていないと感じている人も多く、携帯電話におけるデジタルデバイド(デジタル格差)が起こっていることが顕在化してきている。

[小林千寿]

『青柳正著『第3世代携帯電話ビジネス日米欧の狙い――移動通信事業の発展と戦略』(2000・リックテレコム)』『喜多祥昭他著『最新移動体通信がわかる』(2000・技術評論社)』『山内雪路著『ディジタル移動通信方式――基本技術からIMT-2000まで』第2版(2000・東京電機大学出版局)』『江戸川・次世代通信研究会著『最新第3世代携帯電話がわかる』(2001・技術評論社)』『小林千寿著『早わかり次世代携帯電話IMT-2000』(2001・こう書房)』『立川敬二監修『W‐CDMA移動通信方式』(2001・丸善)』『杉沼浩司著『最新よくわかる移動体通信の基本と仕組み』(2001・秀和システム)』『ジェームズ・E・カッツ、マーク・A・オークス編、立川敬二監修、富田英典監訳『絶え間なき交信の時代――ケータイ文化の誕生』(2003・NTT出版)』『T・コポマー著、川浦康至・溝渕佐知・山田隆・森祐治訳『ケータイは世の中を変える――携帯電話先進国フィンランドのモバイル文化』(2004・北大路書房)』『神崎洋治・西井美鷹著『体系的に学ぶ携帯電話のしくみ』第2版(2008・日経BPソフトプレス)』『斎藤正男著『ケータイで人はどうなる――IT世代の行方』(2009・東京電機大学出版局)』『丸川知雄・安本雅典著『携帯電話産業の進化プロセス――日本はなぜ孤立したのか』(2010・有斐閣)』『モバイル・コンテンツ・フォーラム監修、インプレスR&Dインターネットメディア総合研究所編『ケータイ白書2011』(2010・インプレスジャパン)』『松野恭信著『携帯電話がつながらない本当の理由――携帯・スマホにかかせないデジタル通信の基礎知識』(2011・中経出版)』『中嶋信生・有田武美・樋口健一著『携帯電話はなぜつながるのか――知っておきたいモバイル音声&データ通信の基礎知識』第2版(2012・日経BP社)』『インプレスR&Dインターネットメディア総合研究所編『スマホ白書2012』(2012・インプレスジャパン)』『岡田朋之・松田美佐編『ケータイ社会論』(2012・有斐閣)』『NTTドコモモバイル社会研究所編『モバイル・コミュニケーション――ケータイ社会白書2012-13』(2012・中央経済社)』『松葉仁著『ケータイのなかの欲望』(文春新書)』

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百科事典マイペディア 「携帯電話」の意味・わかりやすい解説

携帯電話【けいたいでんわ】

1987年NTTが実用化した無線電話サービス。電話機からの電波は基地局を経由して,別の携帯電話あるいは一般電話とつながる。すでに実用化されていた自動車電話を携帯できるようにしたもの。当初はアナログ式(第1世代)だったが,デジタル式(第2世代)が主流になり,端末機器(いわゆる携帯電話,ケータイ)もIC化,液晶画面の採用,電池の軽量化などで小型化を実現し利用者が急増した。2000年代には第3世代携帯電話が登場し,多機能化が急速に進展した。日本では,1995年にはPHS(簡易型携帯電話)が,1999年にはネット接続サービス(iモード,EZウェブ,J-スカイ)が開始され,加入数は2000年3月に,PHS(577.5万台)と合わせて5672万台に達し,固定電話を超えた。世界的にも途上国で爆発的に普及,デジタルカメラやビデオ機能,電子マネー機能,指紋認証機能,地デジテレビ機能,テレビ電話などを備えた携帯電話端末が次々発売され,2007年に世界全体で普及率が5割を超えたといわれる。2007年にアップルコンピュータが発売したiPhoneは,高機能携帯に携帯音楽プレーヤーとインターネット端末が結合するモデルで世界的に話題となり,携帯電話の進化が,インターネットの展開とともに,従来の携帯端末や電子ブック,モバイルコンピュータを統合する方向にあることを示し,アップルは,2010年にiPadを発売した。 なお,架空請求や振込め詐欺プリペイド式携帯電話が悪用されることが多いため,2005年〈携帯電話不正利用防止法〉が成立した。2006年10月からは,利用者が契約している携帯電話会社を変更しても電話番号を変更する必要のない〈番号ポータビリティ〉制度が導入された。→移動通信PHS
→関連項目カーナビゲーション公衆電話双方向通信電話日本テレコム[株]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「携帯電話」の意味・わかりやすい解説

携帯電話
けいたいでんわ
mobile phone; cellular phone

携帯可能で移動しながら使える電話システム。携帯端末から無線通信で地上の基地局に接続,そこから有線通信網を通じてほかの電話につなぐ。基地局は一定の範囲(ゾーン)を受け持っており,端末が別のゾーンに移動すると,自動的に移動先へチャンネルを切り替えるハンドオーバー機能が備えられている。端末は常時現在位置を登録しており,これを使って有線通信網から端末を呼び出す。日本では 1979年日本電信電話公社がサービスを始めた自動車電話が最初で,アナログの周波数分割多元接続 FDMAを使い,1980年代に普及し始めた。この第1世代携帯電話(1G)は 2000年までに終了した。持ち運び可能な電話機は 1985年に登場,重さが 3kgあり,肩にかけて持ち運ぶことからショルダーホンと呼ばれた。1987年になると,片手で持てる重さ 900gの電話機が発売された。これが日本における最初の携帯電話といわれる。1Gは周波数帯域の利用効率が悪く,ノイズに弱いなど多くの欠点があったため,1990年代後半,デジタルの時分割多元接続 TDMAを使った第2世代(2G)の普及が始まった。ヨーロッパを中心に GSMと呼ばれる方式が使われたが,日本は独自の PDCという方式を採用した。1998年,符号分割多元接続 CDMAを用いた 2.5世代(2.5G)が登場,1999年には国際電気通信連合 ITUによる携帯電話規格 IMT-2000が勧告され,第3世代(3G)の時代が始まった。3Gは W-CDMA,CDMA2000の 2方式が世界的に併用され,国際ローミングが促進された。次世代の携帯電話規格としてデータ通信の速度を高めた LTEがあり,標準化が進められた。1999年2月NTTドコモが携帯電話から直接インターネットに接続できる iモードのサービスを開始,若年層を中心に爆発的に普及した。2007年にアップルから iPhoneが発売されて以降はスマートフォンが普及し,モバイルコンピューティングにも使われるようになった。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「携帯電話」の解説

携帯電話

無線通信を使った、携帯可能な小型電話機のこと。基地局を無線で中継しながら通信を行うしくみ。日本では、使用する周波数を800MHz、または1.5GHz帯と定めている。第1世代のFDMA方式は、主に自動車電話として用いられた。次いで開発された第2世代のTDMA方式では、携帯端末の小型軽量化が促進され、通話料の低価格化と相まって加速度的に普及した。2001年にNTTドコモがサービスを開始した第3世代のCDMA方式では、データ通信やインターネット接続、電子商取引が行えるなど、電話以外のサービスが提供されている。2004年7月にNTTドコモから、iモードFeliCa機能を搭載した携帯電話で直接買い物ができる「おサイフケータイ」サービスが開始された。

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IT用語がわかる辞典 「携帯電話」の解説

けいたいでんわ【携帯電話】

無線で通信を行うことのできる、片手で持てる大きさの電話機。無線であるため、移動しながら音声通話など各種のサービスを利用することができる。電話機が無線で通信する中継点を基地局といい、基地局間は有線ネットワークで結ばれている。基地局と電話機の間の通信方式によって、携帯電話の世代が分けられている。◇「携帯」と略されることが多い。また「ケータイ」と表記されることも多い。

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