唐津焼(読み)カラツヤキ

デジタル大辞泉 「唐津焼」の意味・読み・例文・類語

からつ‐やき【唐津焼】

唐津市を中心に産する焼き物の総称。文禄慶長の役後、朝鮮半島からの渡来陶工によって素朴な味わいの日用雑器が焼かれたのが、本格的な生産の始まりとされる。遺品には茶器に用いたものも多い。→古唐津

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精選版 日本国語大辞典 「唐津焼」の意味・読み・例文・類語

からつ‐やき【唐津焼】

  1. 〘 名詞 〙 佐賀県唐津市を中心に作られた陶器。室町時代に始まったとされるが、文祿・慶長の役後に渡来した朝鮮陶工が多くの窯を築き盛んになった。雑器が主だが、茶器として用いられるものも多い。絵唐津(えからつ)、斑(まだら)唐津、朝鮮唐津などがある。唐津物。→こからつ
    1. [初出の実例]「唐津やき茶碗に道具を入て」(出典:宗湛日記(茶道古典全集所収)‐慶長一〇年(1605)五月二五日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唐津焼」の意味・わかりやすい解説

唐津焼
からつやき

九州の佐賀県西部から長崎県にかけて広く広がる窯(かま)で焼かれた近世の代表的な焼物。その始原には諸説があるが、従来の主説をなしていた豊臣(とよとみ)秀吉の文禄(ぶんろく)・慶長(けいちょう)の役を契機にして開窯したとする説は改訂されつつあり、それ以前に築かれていたことは壱岐(いき)聖母神社蔵の天正(てんしょう)20年(1592)銘四耳壺(しじこ)が証明している。しかし、開始にあたっては、文禄・慶長の役を機に朝鮮半島から陶技が伝播(でんぱ)したとする考えは旧説どおりであり、現存する最初期の窯と推定されている佐賀県唐津市北波多(きたはた)地区の飯胴甕(はんどうがめ)下窯はいわゆる割竹式の連房式登窯(のぼりがま)につくってあり、それまでの日本の窯式とは異なった、おそらく朝鮮半島からもたらされた新形式と考えられる。この形式の窯は大量生産が可能であり、一挙に窯業として大成功して隆盛し、窯は、東松浦郡、唐津市、伊万里(いまり)市、武雄(たけお)市、多久(たく)市、鹿島(かしま)市、嬉野(うれしの)市、藤津(ふじつ)郡、杵島(きしま)郡、西松浦郡から、長崎県の佐世保(させぼ)市、諫早(いさはや)市、松浦市、東彼杵(ひがしそのぎ)郡、平戸(ひらど)市と、まことに広範囲に築かれた。なお、唐津市、武雄市、多久市に残る唐津焼生産にかかわる遺跡として「肥前陶器窯跡(ひぜんとうきかまあと)」が国指定史跡となっている。釉技は藁灰(わらばい)を使った白濁釉、長石を主体とする透明釉、鉄を呈色剤に使った黒褐釉を基本にして、鉄絵、象眼(ぞうがん)、銅緑彩、白化粧などを加飾して斑(まだら)唐津、黒唐津、朝鮮唐津、奥高麗(こうらい)、三島(みしま)唐津、瀬戸唐津、銅彩唐津(二彩唐津)などを焼造した。江戸中期になると染付も行っているが、有田磁器が始まってからは、これに押されてしだいに衰微した。

[矢部良明]

『林屋晴三編『日本の陶磁5 唐津』(1974・中央公論社)』『佐藤雅彦編『日本陶磁全集17 唐津』(1976・中央公論社)』『中里逢庵著『唐津焼の研究』(2004・河出書房新社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「唐津焼」の意味・わかりやすい解説

唐津焼 (からつやき)

佐賀県西部から長崎県北部一帯にひろがる西日本最大の陶窯。製品が主として唐津港に集積されたので〈唐津焼〉の名がおこった。開窯は桃山時代にはじまるとみるのが通説であるが,室町時代説もある。唐津製と見られる天正20年(1592)銘の茶壺が長崎県壱岐島の聖母(しようも)神社に所蔵されており,豊臣秀吉の文禄・慶長の役以前にすでに活動期に入っていたらしい。しかしこの役に参加した西国の諸将は競って朝鮮の陶工を招致して,一挙に窯は増加することになった。桃山から江戸初期にかかる初期の唐津の窯は100基を超え,唐津藩鍋島藩平戸藩大村藩とひろがって,一大産業地を形成する。その特色は朝鮮系の陶芸であることで,作風から絵唐津,朝鮮唐津,奥高麗,斑(まだら)唐津,黄唐津,青唐津,瀬戸唐津,三島唐津などに分類されている。窯址の調査によると,初期には雑器が量産されたと思われるが,見るべきものはやはり水指,茶碗,花生,茶入,向付,火入などの茶具である。これら〈古唐津〉と呼ばれる作品がいつごろまで焼造されたかは判然としないが,およそ17世紀前半までこの作種はまもられたらしい。それ以後,有田磁器の発達におされて後退するが,江戸中・後期の唐津焼で特色ある製品は,白化粧の刷毛目地に鉄絵と緑釉を加えた二彩唐津である。また1703年(元禄16)から1871年(明治4)まで伊万里市の椎の峯窯,唐津城下の御茶碗窯で献上唐津が焼かれ,茶具や染付の食器もつくられた。
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百科事典マイペディア 「唐津焼」の意味・わかりやすい解説

唐津焼【からつやき】

九州北西部でつくられる陶磁器で,唐津から積み出されたのでこの名がついた。瀬戸焼と並んで日本の陶芸史上重要な焼物。文禄・慶長の役後,渡来人によって始められたといわれる。岸岳(きしだけ)窯はじめ200以上の窯跡が発見されている。素朴で手ごわい作ゆきが喜ばれ,絵唐津,斑(まだら)唐津,朝鮮唐津などの種類があり,奥高麗(おくごうらい)の茶碗が名高い。
→関連項目北大路魯山人鉄絵

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唐津焼」の意味・わかりやすい解説

唐津焼
からつやき

安土桃山時代以降,佐賀県西部の諸窯で産する陶器の総称。唐津市岸岳山麓で天正年間 (1573~92) に焼きはじめ,文禄・慶長の役 (92,97) によって朝鮮から多くの陶工が渡来したことにより発展し,肥前の諸地方で焼かれるようになった。製品は唐津の港から近畿以西の各地に積出され,そのため近畿地方以西では焼物のことを一般に「唐津物」と俗称する。陶土は砂目で鉄分を含み,釉 (うわぐすり) は灰釉を主として用いる。模様のない無地物,鉄黒で模様を描いた絵唐津,白い長石釉をかけた朝鮮唐津,へらで文様を彫り込んだ彫唐津などがある。日常雑器のほか茶碗,茶入れ,水差しなど茶器が多く作られた。江戸時代中期まで各地の焼物に影響を与えた。江戸中期以降は有田磁器に押されて衰微したが,唐津市および武雄市周辺に現代まで数窯残り,民窯としてみるべき作品が多い。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「唐津焼」の解説

唐津焼[陶磁]
からつやき

九州・沖縄地方、佐賀県の地域ブランド。
伝統的工芸品に指定された成形方法により制作された佐賀県唐津市及びその周辺地産の陶器製鍋類・食器類・ようじ入れ・はし置・花瓶及び水盤・香炉・置物、茶道用陶器製茶わん・水指・建水・火入・香合・蓋置・水注・茶入。唐津地方で焼かれる唐津焼は、楽焼・萩焼と並ぶ日本三大茶器の一つ。昔から茶人に愛されてきた茶陶である。陶工たちは、山から掘り出してきた土にほとんど手を加えず、手づくりにこだわり続けている。現在でも飾らないシンプルな絵付けと温かみのある手触りが人気。1988(昭和63)年6月、通商産業大臣(現・経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品に指定。2008(平成20)年7月、特許庁の地域団体商標に登録された。商標登録番号は第5152697号。地域団体商標の権利者は、唐津焼協同組合。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「唐津焼」の解説

唐津焼
からつやき

佐賀県西部から長崎県にまたがる一大窯業地帯を形成した陶器窯とその製品。最近の研究で天正年間に開窯したことが判明。文禄・慶長の役で渡来した朝鮮陶工が窯を拡大。窯は唐津に居住した陶工と,佐賀藩祖鍋島直茂が招致し伊万里に居住した陶工の2系統があったらしい。割竹式登窯(のぼりがま)・連房式登窯という大量生産型の大型窯を築き,はじめ朝鮮系の製品を焼いたが,日本の茶陶も併焼。作風により奥高麗・朝鮮唐津・絵唐津・斑(まだら)唐津・無地唐津・三島唐津などにわける。江戸時代には茶陶生産は少なくなり,染付の茶陶が焼かれたが,大半は日常雑器であった。現代は桃山茶陶を再生して活気をおびている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「唐津焼」の解説

唐津焼
からつやき

佐賀県唐津市周辺で産する陶器
東の瀬戸物に対し,唐津物は西を代表。朝鮮に近く,戦国末期から高麗系の陶工の渡来があったといわれるが,豊臣秀吉の朝鮮出兵後,朝鮮の陶工が渡来,盛況をみた。寺沢広高ら歴代藩主の保護をうけた。

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事典・日本の観光資源 「唐津焼」の解説

唐津焼

(佐賀県唐津市)
さが天下逸品 佐賀百選」指定の観光名所。

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